融資は回収できず、大手銀行でもつぶれるところが出てくる。「貸し出し競争をやっていたのに、今度は貸しはがし競争になった。自分の銀行がつぶれるぐらいなら、お客さんをつぶしていいという感じだった」。金融機関のこうした体質は、現在にもつながっているという。「融資でもうけられないから、顧客に不利な保険や投資信託を売って手数料を稼いでいる。企業を育てるという本来の役割を、一から若い銀行員に教えていかないといけない」

 証券会社や銀行の監督官庁である大蔵省と業界との癒着も問題になった。98年2月には「省内では禁句だったノーパンしゃぶしゃぶ」との見出しで、常識外れの接待の実態を報じている。

 大手都市銀行や証券会社の大蔵省担当者「MOF担」は、接待を繰り返して検査情報などを聞き出そうとしていた。その舞台の一つが、東京・歌舞伎町にあった会員制の店だ。コースの料金は2時間で税込み1万9980円。フォアグラ、タイの刺し身、松阪牛……。女性従業員のこんな証言が生々しい。

<接待する側は見飽きていて冷めた人も多いけど、接待を受ける側の人には、しゃぶしゃぶも食べず、お酒もそこそこに、一心不乱に見ている人もいるんです>

 大蔵省以外の官僚も来店していたといい、過剰な接待は霞が関全体に広がっていた。今、文部科学省に端を発した天下り問題が広がりを見せている。評論家の佐高信が同年1月30日号でこう指摘した。

<企業を監督したり検査する立場の人間が、その企業から接待を受けて、当然のように思ってるんだから、なにをかいわんや>

 佐高は、あのころ一時的に官僚や金融機関への批判が盛り上がったが、「膿は出し切れていなかった」と感じている。

「文科省の組織ぐるみの天下りあっせんが発覚したように、官僚の特権は今も残っている。大手銀行も、お金を返せなくなった中小企業はつぶしてしまうのに、原発で経営難に陥った東電や東芝は守る。官僚や経営者の身勝手な感覚はさほど変わっていない」

(文中一部敬称略)

週刊朝日 2017年3月10日号