<若い新人たちに会うと、びっくりすることが多いんです。自分の絵を描かせるとのびのびしているのに、他人の絵をマネさせようとすると、まるで描けない。適応力がないんですね。(中略)一因が、テレビを小さいときから見続けた影響じゃないかと思うんですね。子どもたちには、泥を食べたらまずかった、木にぶら下がったら、落っこった、という実体験が必要で、視聴覚しか使わないテレビばかり見ていると、五感がバランスよく発達しないのではないでしょうか>

 子どもが「となりのトトロ」をビデオで繰り返し見ているという趣旨の手紙が届くといい、<嬉(うれ)しいけれど、同時にドングリを拾ってほしい、縁の下も見て欲しいんです。だから、そんなに何回も見ないほうがいいと思っちゃうんです。本当は自分の作品はビデオにしたくない。ジレンマです>と語っている。

 バブル崩壊後の93年ごろから「就職氷河期」と言われた。その真っただ中に団塊ジュニア世代がいた。ポケベルやPHSが普及し、若者のコミュニケーションに変化が出てくるのも90年代の特徴だ。95年にはマイクロソフトが「ウィンドウズ95」を売り出し、ネット社会が到来する。

 この95年は激動の年だった。阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、沖縄米兵少女暴行事件……。本誌は6月、オウム真理教から息子を取り戻すために偽装入信した母親のインタビューを載せた。

 この母は夫の猛反対にあらがい、教団総本部へ。10日間続いた7時間修行、1時間睡眠、ヘッドホンから大音量で流れる教祖の声、ヘッドギア(レンタル代100万円!)……。教団内部の実態が次々に明らかにされていく。

<三畳ぐらいのウレタン敷きの個室に六人ずつ入れられ、点滴されました。板壁に点滴の袋を釣るフックが付いていて、そこに点滴液をぶら下げて、容器が空になるまでうずくまっていました。狭いから横になるスペースもないんです。ふつうは一回に十本打つそうですが、いやだったので、「高血圧だから」といって、七本にまけてもらいました>

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