欧米では、ヘルスリテラシー向上の教育プログラムを持つ国もある。多くの先進国は国立医学図書館を持ち、市民向けの情報提供もしている。日本はこうした図書館を持たず、「雨降り保健」との言葉のように、学校でも体や健康について十分に学ばない環境でした。

 リテラシーを高めるには、情報をうのみにせず、「い・な・か・も・ち」の意識で接することが大切です。いつ、何のために、書いた人は誰で、元ネタ(根拠)は何で、違う情報と比べたか。都合のよい声ばかりを伝えたり、実は宣伝目的だったりと、検証が必要な医療情報は数多くあります。

 専門家とつながりを求めることも有効です。自治体や健康保険組合の健康相談などを利用すると、自分の判断について専門家の意見を聴ける。図書館は専門情報の入り口になります。

 ヘルスリテラシーは「健康を決める力」と言えます。家族、学校、職場、地域などで、高める工夫を重ねるべきだと考えています。
     
【中山和弘】
聖路加国際大教授(保健医療社会学・看護情報学)。1992年東大大学院保健学専攻修了、2004年から現職。ヘルスリテラシーの解説サイト「健康を決める力」を運営する。

週刊朝日  2016年10月14日号