まったく違うバンドが「黒夢」を名乗ることもあり得る? (※写真はイメージ)
まったく違うバンドが「黒夢」を名乗ることもあり得る? (※写真はイメージ)

 ロックバンド「黒夢」の商標権が9月に官公庁オークションに出品され、このほど落札された。入札が締め切られたのは26日。出品されたのは、「黒夢」2件と「KUROYUME」「kuroyume」の計4件。東京国税局による出品で、所属事務所の税金滞納が理由とみられる。

 落札者は4件いずれも同じで、最高額が「黒夢」の68万1千円、他の商標は20万円台。現在、メンバーはソロを中心に活動、バンドとしての活動は休止中ではあるが、多くのヒット曲を生み出したかつての人気から考えれば「あれ、意外に安い?」という印象だ。

「実は、ほとんどの場合、商標権そのものにはそれほど価値はないんです」

 商標の問題に詳しい大裕司弁護士が説明する。

「商標権の取得の目的は、“禁止”が多い。『使ってはいけない』と、その名前を使って利益を得ようとする第三者への禁止権です。商標そのものが財産的な価値を有するケースは少ないので、今回、公売の対象になったのは非常に珍しいケースだと思います」

 メンバーが「黒夢」を名乗ることはこれからもできる。しかし、「黒夢」として再始動しようとしたときに、商標権の所有者がダメと言えば、「黒夢」という名前は名乗れなくなってしまうことになるという。

「商標を取得した人が『黒夢』という名前で活動する場合、元のメンバーがそれを使うなと言うことができなくなる。著作権は別で、印税の配分などはこれまでと変わりません。ただ、黒夢のCDを再発するときなど、取得者が『それは商標的な使用だから侵害にあたる』と主張し、許諾が得られなければ発売を自粛せざるを得ない場合もあります」

 商標取得者が何者なのかはわかっていないが、「黒夢」の商標を保有していたかつての所属事務所は「現在、弁護士に一任して対応を進めております」としている。ボーカルだった清春の担当マネジャーはスポーツ紙の直撃に「商標権を買い戻したい」と答えていたが、大熊弁護士は言う。

「まずは落札した人を把握する。任意の交渉で使ってもいいという使用許諾を受ける、あるいは買い取って自分の権利に戻すというのが一番有益な方法です」

 見知らぬバンドが、「今日からはオレたちが『黒夢』だぜ!」となることのないよう祈りたい。

週刊朝日 2016年10月14日号