「そうなんだ。ポール(監督)と僕が共作した『ラスト・リベンジ』は、不幸な終わり方をしたんだ。僕の役はすごく良い役だったし、脚本も東洋と西洋が出会うような内容で、素晴らしかった。ところがポールは完成させる機会を失った。最終的には他の誰かが編集して公開したんだ。だからポールが自分の映画だと言えるような内容ではなかったんだ。ズタズタな終わり方をしたんだよ。だから『ドッグ・イート・ドッグ』の脚本を持ってきて、出演を依頼されたときは実に嬉しかったよ。ポールと一緒にやり直せる機会だと思ったから」

──マッド・ドッグ役を演じたウィレム・デフォーとの相性は?

「ポールからウィル(デフォー)にも出演を依頼すると聞いたとき、ウィルのことは俳優として尊敬しているから、この映画は凄くなるって思ったんだ。ポールはおかしい映画だと僕に説明したが、僕は脚本を読んでみておかしさが伝わってこなかった。ということは、映画には何か隠された意図があるんじゃないか、と想像したんだよ。トリックがあって、それをマジシャンが袖からウサギを出すように、明かしてくれるのではないかと期待したんだよ」

──最初はデフォーが演じたマッド・ドッグ役を依頼されたけど、あなたの希望でトニー役に代わったそうですね。どういう理由なんですか?

「そうなんだ。僕はオファーを受けたとき、モロッコで『Army of One』という映画の撮影を終えたばかりだったんだ。その映画で僕が演じたのは実在の人物で、役作りのためにその人物に取材したんだが、質問したら最後、話が止まらないような、ちょっとマニアックな男なんだよ。その瞬間“この役は根気のいる、すごく大変な役だ”って感じたね。『ドッグ・イート・ドッグ』の出演依頼が来たとき、僕はまだ、その映画のためにモロッコにいた。それで2度も続けてマニアックな男は演じられないって感じたんだよ。だからマッド・ドッグ役は断ったが、トニーだったら引き受けられるかなと思ったんだ。幸運にも、その役をウィルがそれは見事に演じてくれたので、僕はトニーに専念することができた。この役には僕の映画狂としての感情を注入したんだ。(ハンフリー・)ボガートからの影響を反映させたりしてね……」

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