天皇陛下がご高齢で働かされてお気の毒」「早く退位の制度を整えてお休みになって」

 天皇の「生前退位」報道が出ると、感傷的な声がテレビ画面や新聞の紙面を覆った。だが、皇室制度の根幹をかきまわすような事態は避けるべきであろう。

 1987年から87歳で崩御するまでの1年4カ月間、昭和天皇は病に倒れていたが、摂政は置かれなかった。いまの天皇陛下と、皇太子さまが国事行為を昭和天皇に代わり臨時代行した。摂政は、天皇が精神的・身体的に機能していないことが前提だ。あるジャーナリストはこう解説する。

「それは、周囲が天皇陛下は、たとえ何もできないとしても、在位してくださるだけでいい、それこそが国民の敬愛にかなうのだ、と昭和天皇へ伝え続けたためです。ところが今回は、天皇陛下が、『高齢で象徴天皇として十分に仕事ができない』という話が漏れ聞こえたとたん、『お疲れ様』の大合唱が始まった。まるで『蛍の光』を大音量で流して、舞台から強制退場させているふうにすら感じる。それはご本人の思いとはすれ違うような気もする」

 天皇公務のさらなる軽減や、皇太子ご夫妻への大幅な仕事の引き継ぎなど、可能な範囲で対応できないのだろうか。平成の天皇が、魂を注ぎ込むように築き上げた象徴天皇と、二人三脚で歩んできた皇后の姿を、国民はもう少し見ていたいと感じているのではないだろうか。

週刊朝日 2016年7月29日号より抜粋