多くの遭難者を診てきた国際山岳医の千島康稔氏はそう語る。

 千島氏は2013年に長野県駒ケ根市の中央アルプスで起きた遭難事故を例に挙げる。

「雨と風の中を歩いて、数名が低体温症で亡くなっているんです。雨で体が濡れると、熱伝導を起こして体温が奪われるし、風に吹かれると余計に熱を奪われます。夏で気温がそれほど低くなくても、それが生存条件をすごく悪くします」

 大和君は駐屯地内の小屋にあったマットレスに挟まって寒さをしのいだといい、千島氏は「マットレスは周囲の冷気から遮断される役割を果たし、適切な行動だったと言える」と説明する。

 多くの医療関係者は、親と離れ、6日間孤独に過ごした影響が今後出ないように、精神的なケアや専門家を含めた議論の必要性を訴える。

週刊朝日   2016年6月17日号