それでもマイナスイメージの拡散を恐れる企業や組織は過剰に反応する。NHKは3月、開設を予定していた「徴収」をもじった「受信料長州力」なる特設サイトを、「バカにしている」などと非難され、予告からわずか4日で中止。不動産会社の「センチュリー21」は1月、加盟店の社員が有名人の来店をツイートして炎上したことで謝罪したものの、「公式謝罪は、(来店が)本当だと証明したようなもの」と指摘され、さらに事態は火だるまに。

 リアルな社会でも、暴言は後を絶たない。

 おおさか維新の会の足立康史議員(50)は7日の衆院総務委員会で、民進党の安全保障関連法の対応をめぐり、「こんな政党は国会の恥だ。あほ、ばか、どうしようもない政党」などと連発。滋賀県の吉田清一県議(68・自民会派)が甲子園に出場する滋賀学園の選手らに対し、学校の送迎バスの止め方を非難して、「おまえらなんか1回戦負けしろ!」と罵ったのも、記憶に新しい。

 こうした状況について、メディアコンサルタントの境治さんは、「バランス感覚のない人が増えている。一つの組織内にとどまって、閉鎖的なコミュニティーの中で過ごしている人ほど、そうした感覚が弱くなる」と分析する。「相手の気持ちを想像して意見を発するという大前提を忘れてしまうのでしょう」

 なぜここまで、ネットもリアルも、イライラを募らせ、相手を容赦なく追いつめる空気が蔓延するのか。福島瑞穂参院議員と『「意地悪」化する日本』を著した思想家の内田樹さんは、「他人が何かを失うことが自分の得点にカウントされるという発想が、意地悪化の根底にある」と話す。

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