「社会が豊かであるほど、意地悪な人が指導力を発揮し、優劣を競う構造になる。炎上させたがる“ネトウヨ”も9割以上が“満たされないオッサン”では。“昔はこうじゃなかった”と嘆くのは、そのころの日本が貧しかったからですよ」

 高度経済成長とともに、成果主義が加速し、優劣や格付けが偏重されていった。

「こうなると、互いの知的向上を妨害し合い、やる気をなくし合う方向に向かっていくほかない」(内田さん)

 そして経済成長が止まり、豊かさの幻想は消え、産業の国際競争力が低下する「後退局面」を迎えた。

「日本は、かつてない危機的状況にあると思います。だからこそ、先行きが見えない若者を中心に、“良い人化”が進んでいる。若者の田園回帰が見られるのも、その傾向の一つでは」と内田さんは行く末を見る。

「貧しくなると互いに助け合う相互支援的な関係が必要であるため、良い人化せざるを得ない。貧しさに起因することなので、必ずしも良いことだとは言えませんが、そうした局面にきていることは明らかです」

“意地悪ニッポン”はどこへ向かうのか。

「時代の空気を逆手に取り、激動期を生きる楽しさも見いだせるはずです」と内田さんは話す。発言しづらいからこそ、覚悟を決めて発した一言の価値は上がり、発信力は高まる。

 取り下げが決まった日清のCMで、ビートたけしはこう“放言”する。

「“おりこうさん”じゃ、時代なんか変えられねぇよ。諸君たち、“バカ”やろう!」

 正義を“伝家の宝刀”のごとく振りかざし、舞台から引きずり下ろそうとするのは、1.1%たちだ。その比にならない数の人が共感したはずだと信じたい。

週刊朝日 2016年4月22日号