「これほど高い確率で遺伝子が発症リスクを上げている生活習慣病はほかにほとんどありません」(松尾医師)

 松尾医師らは病気の発症にかかわる要因の影響度「人口寄与危険度割合」を調べた。すると、ABCG2の変異遺伝子を持っている人は29.2%と、肥満やヘビードリンカーよりも高かった。BMI25以上の肥満の高尿酸血症発症への影響力は18.7%、1週間のアルコール摂取量が196グラム(日本酒換算で約9合)以上の男性ヘビードリンカーは15.4%だった。

「痛風発症を考えるとき、遺伝子との関係は外せません。斉藤さんの遺伝子解析の結果、ABCG2遺伝子変異があり、尿酸排泄機能は50%、痛風発症リスクは5倍。薬物治療の前に、徹底した生活習慣の改善を指導しました」(同)

 遺伝子変異が痛風発症のリスクを最も上げるが、遺伝子は変えられない。しかし、肥満と多量飲酒は変えられる。斉藤さんは肥満がネックだったので、食事制限と適度な運動で、十分な時間をかけて、体重68キロ、BMI23まで落とした。

「斉藤さんは尿酸値が6mg/dl台まで下がり、その後も生活習慣の改善を継続することで、薬物治療を受けないで済んでいます。遺伝子変異があり、痛風発作を起こしやすい体質を自覚したことで、自然と予防に努められるようになったそうです」(同)

 ABCG2遺伝子多型解析は、まだ健康保険適用ではないが、全国の医療機関で検査オーダーできるようになっている。ただし、遺伝子変異がないという結果になっても、暴飲暴食など尿酸値を上げる食生活を続けていれば痛風の発症リスクを高めることを忘れてはいけない。

週刊朝日  2015年9月25日号より抜粋