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 医学部受験のトレンドが変わりつつある。卒業後、一定期間、地域医療に従事することで授業料免除などのメリットを受けられる「地域枠入試」が、いま人気だ。一般入試よりも入りやすいことが多く、医師への近道でもある地域枠の実態を探った。

 1997年度に札幌医科大と兵庫医科大で始まった「地域枠」は、地域医療に従事する意志がある地元出身者のために導入された。文部科学省医学教育課が実施した「地域医療に関する調査」によると、当初は2大学でわずか11人の募集人員だったが、2014年度には68大学で1452人と飛躍的に増えた。14年度の医学部の総定員は9069人なので、地域医療に従事する意志がある新入生が約16%を占めたことになる。

 なぜ、これほどまで地域枠が激増したのか。

 要因の一つは、04年に始まった「新医師臨床研修制度」だ。この制度で、研修先を自由に選べるようになったため、地元出身者ではない場合、大学病院に残らないケースが増え、地域医療を担う医師が不足し始めたのだ。このため政府は、06年に「新医師確保総合対策」を示し、10年度から最大10年間、入学定員の増員を進めている。

 全体の定員が360人増えた10年度に、地域枠の募集人員も417人増えて急増。07年度と14年度を比較すると定員は1444人も増え、地域枠の募集人員も1269人増えて約8倍になった。

 では、地域枠は受験生にどのようなメリットがあるのか。駿台予備学校進学情報センターの石原賢一センター長は、札幌医科大の例をあげ、こう説明する。

「札幌医科大は一般入試の募集人員75人のうち55人が北海道医療枠です。しかも、北海道医療枠の合格者が上限に達した場合、一般枠から北海道医療枠の合格者を出すことができる。また、一般入試は全国から出願できますが、面接結果は地元出身者が高得点のことが多く、北海道の生徒が有利になることが多い」

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