「土地の区画整理が進み、住宅の新築ラッシュが続く大高駅や南大高駅(ともにJR東海道本線)周辺も要注意エリアです。県民性か、名古屋では家や収入は平均的でも長年コツコツ預金を続けて資産形成する人も多く、トータルすると相続税の対象になってしまうケースも」(木下氏)

 大阪市の税理士法人プラスの寺西雅行税理士は対策を考える際、まずは相続する子に住む意思があるか確認するのが重要とアドバイスする。

「親はきょうだいで家を取り合うことを心配するが、実際は押し付け合うことも多い。古くて駅から遠い家より現金が欲しいというのが子の本音です。親が元気で判断力もあるうちに自分で売却し、駅近のマンションや老人ホームへの住み替えを検討するケースも増えてきています」

 売却したお金を老後の生活資金に充てられるほか、駅近マンションは戸建てに比べて売却や賃貸がしやすく相続時の現金化も容易だ。また、居住中の家を売却することで、売却時にかかる所得税を軽減できる特例も受けられるという。

 スタイルアクトのコンサルタント、堂坂朋代氏もこうアドバイスする。

「特に団塊世代が多く住むような住宅地では、相続の時期も重なって宅地の放出が一斉に始まる可能性も。売ろうとしても買い手がつかないおそれがあるので早めの対策が必要です」

 相続税の納税には、10カ月という期限がある。「そのときに考えよう」では十分な話し合いができなかったり、売却が間に合わないことも。残り少ない夏休み、家族で話し合う機会を設けてはいかがだろうか。

週刊朝日 2015年8月28日号より抜粋