「大人のチキンライスという雰囲気でしょうかね。昔の人は、よく食べてよく飲まれましたから、“シメ”に注文されることもありました」

 と、木田さん。

『食卓の情景』の中で、チキンライスは旅先で食べるのが好きで、東京ではあまり食べないと書いている。木田さんは言う。

「池波先生がよく召し上がられていたのは、やはりカツレツやカキフライ、ハヤシライスあたりでしたが、チキンライスも時々ご注文されていましたね」

 煉瓦亭での現在の人気メニューは、ハヤシライスやオムライス。チキンライスは「ぽつぽつ」で、目立たない存在ではある。

「変わらないのが特徴とでも言うんでしょうか。派手じゃないけど、なくならない。私は、日本人に合う料理だと思います」

 100年愛されたチキンライス、である。

(太田サトル)

週刊朝日  2015年8月14日号