自宅わからず高速逆走 認知症「徘徊ドライブ」レポ (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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自宅わからず高速逆走 認知症「徘徊ドライブ」レポ

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アクセルやブレーキのタイミングをみる検査を受ける高齢運転者たち(本文とは関係ありません) (c)朝日新聞社 

アクセルやブレーキのタイミングをみる検査を受ける高齢運転者たち(本文とは関係ありません) (c)朝日新聞社 

 75歳以上の高齢者が起こした交通死亡事故のうち認知機能の低下が原因とみられるものが約4割あることが警察庁の調べで分かった。認知症予備軍の軽度認知障害(MCI)で認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」筆者の山本朋史記者は、九州の叔父のケースをレポートする。

*  *  *
 九州の叔父が死んだ。享年81。認知症を発症して1年半前から地元の老人福祉施設に入居していた。体調を崩し何度か施設と病院間の往復を繰り返した。3月21日早朝に急に容体が悪化、救急車で病院に運ばれたが、すでに心肺停止状態だったという。はっきりとした死因は分かっていない。

 ボタ山の町に生まれ育った血の気の多い筑豊人だった。若い時に土木会社を起こし、仕事を広げた。一時はその地域の名士に挙げられるほどの羽振りだったが、バブル崩壊後の不景気で受注は減った。会社の規模を縮小、十数年前に次男に会社を任せて引退していた。

 畑仕事や仲の良かった実弟との食事を楽しみにしていたという穏やかな老後の日々が暗転する。叔父の様子が2年前に突然おかしくなったのだ。それまでも、しばしば人の名前を忘れたり、自宅前の坂道で転んでけがをしたこともありはしたものの、日常生活には支障はなかった。次男は何か起きるたびに心配して病院で調べるように勧めたが、短気な叔父は「やかましか!」と言下にはねつけた。

 ところが、その年の春、朝、自宅を車で出たあと所在不明になった。いつもは戻る夕方になっても何の連絡もない。携帯電話は持っていなかった。

 今まではなかったことだけに、次男は不安に駆られて親戚や知人宅に、と心当たりの立ち回り先に電話をかけまくった。手がかりは掴めなかった。交通事故を起こしたのではないかと警察署に駆け込んだが、情報は一件もない。

 警察署から写真を持ってくるように言われて自宅に車で戻る途中である。偶然にも父親が乗る車とすれ違ったのだ。

「親父だ」

 運転席から手を振って声をあげた。しかし、気づかない。絶対に父の車だし、ドライバーの顔はよく見えなかったけれど、服装は気に入っていたもの。紛れようもない。彼は自分の車を急停止させて路地に入ってUターン。車を追った。


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