丸尾さんに自覚症状はなく、自分が水虫になっているとは思いもよらなかった。

「爪白癬はもちろん、実は足の水虫にもかゆいという症状はほとんどありません。そのため足の水虫にも気づいていないことが多いですが、よく見ると足裏の皮がむけているなどの形跡があります」(同)

 爪白癬の治療に使われるのは主に飲み薬だ。「テルビナフィン」と「イトラコナゾール」という薬があり、どちらもすでにジェネリック医薬品がある。

 飲み薬は効果の高さから最初に考えられる治療法だが、併用してはいけない薬もあり、常用している薬を確認する必要がある。また、肝機能に問題がある人は使えない。血球の数や肝機能などを調べる血液検査を定期的に受ける必要もある。

 一方、2014年9月、初の爪白癬用塗り薬として登場したのが、「エフィナコナゾール」(商品名クレナフィン)だ。副作用が少なく、併用薬の制限はないが、やはりこちらにも短所はある。

「エフィナコナゾールは、爪の濁りがごく先端にとどまり、あまり分厚くなっていない比較的軽症なケースに使います。塗るだけの簡単な作業でも、自宅で毎日きちんと継続していくのはなかなか難しく、費用も飲み薬の約2~3倍になることもあります。しかし、肝機能が低下している方はもちろん、飲み薬を増やしたくない、飲みたくないという強い希望がある方には、時間はかかりますが、エフィナコナゾールで治療します」(同)

 常深医師が飲み薬での治療を優先している理由はほかにもある。

「飲み薬は、治療目的の爪以外の爪まで行き渡ります。つまり、ごく初期の爪白癬や、足裏の水虫までも全て治せます」(同)

 一本の指の爪だけが治癒しても、足の裏の水虫や、他の指の爪白癬が治っていなければ、うつってまた再発してしまう。爪だけでなく同時に足の水虫も治さなければならないのだ。治療期間は飲み薬の場合半年から1年間。小さい爪や、根元まで濁っていない場合はやや早めに治る。

週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋