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 作家でコラムニストの亀和田武氏が、劇的に変わろうとしている競馬の世界について熱く語る。

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 競馬の世界が、いま劇的に変わろうとしている。JRAの騎手試験に挑戦して合格、外国人騎手として初めて免許を取得したM・デムーロとC・ルメールが、3月1日から日本で1年通して騎乗する。
 
JRAの騎手で、昨年100勝以上したのは6人。この2人の実力なら、軽くクリアできる数字だ。私見では、2人あわせて250勝は軽い。パイは限られているから、皺寄せは日本人騎手に及ぶ。

 年に1ケタ勝利の騎手60人余には死活問題だ。30勝台の中堅騎手も影響は必至だろう。大相撲のモンゴル人横綱の姿が重なる。「競馬最強の法則」(KKベストセラーズ)3月号で清水成駿と柏木集保がこの問題を論じている。

 柏木が「2次試験は日本語で行なわれるんでしょ。これは嫌がらせだよね」と指摘する。通訳なしって、大リーグではありえない話だ。「ただ、時代背景もあって、M・デムーロ騎手が13年に1次試験すら通らなかったときは批判を受けた。流れは“合格”に向かっているだろうね」(対談は合否発表の前)

 清水は「俺が懸念するのは、このふたりが受験する背景だよな」と深層を衝く。

「現状、馬産は社台グループ抜きには考えられない」。社台SSが繋養する種馬の仔が6割を占める。「そこに人の面でも支配しようという意図が見て取れる。ふたりもバックアップは社台グループだろ?」。さすが“最後の馬券師”。鋭い見立てだ。

 社台グループが、外国人ジョッキー誕生にも深く関わっていたとは。確かにGIレースの出走馬すら、社台の思惑で決まる。デムーロ、ルメールの好騎乗は観たい。しかし社台の一人勝ちがさらに強まるなら、ファンも浮かれてはいられない。

週刊朝日 2015年3月13日号