東京都足立区に住む夫婦(夫30歳、妻27歳)が、死亡した次男を約1年前に河口湖に捨てたと供述し逮捕された。2012年3月に一家が転入してきたとき、子どもは計6人。同2年秋、3歳になった次男は区の3歳児健診を受けている。だが、13年に入ってから、何らかの理由で死亡。6月になって児童相談所が警察官と連携して、強制的に自宅に立ち入る「臨検・捜索」に踏み切り発覚した。

 次男がいないことが確認されると、警視庁は、夫婦を別件の横領容疑などで逮捕し、本格的な捜査に着手した。調べに対し、夫婦はそろって河口湖に捨てたことを認めているが、次男はまだ見つかっていない。

 子だくさんの若い夫婦が夜の河口湖畔で、次男の遺体を一家全員で「埋葬」する──。こんな異様な光景から連想するのは、映画「誰も知らない」(04年公開、是枝裕和監督)の印象的な一シーンだ。

 映画は、1988年に東京・西巣鴨で起きた育児放棄(ネグレクト)事件がモチーフで、柳楽優弥演じる少年が、亡くなった幼い妹をピンク色のスーツケースに入れて、丁寧に空き地に埋める。母親は男と暮らすため出ていったきり。学校にも行かず、教育も受けていない少年なりの、妹への愛情表現にもみえる。

 00年に愛知県で起きた女児餓死事件を著作『ネグレクト』にまとめたルポライターの杉山春さんは、足立区のケースについて、

「非常に若くして親になった父と母と、幼い子どもたちだけでカプセル化し、孤立した家族だったと思います。河口湖に子連れで行くという行動もその表れかもしれません。貧困の下、子育ての知識はもちろん社会常識も不十分。次男は、そんな環境の犠牲となったのではないでしょうか」

 次男が死亡した経緯や虐待されていたのかどうかは、まだわかっていない。

本誌・古田真梨子

週刊朝日  2014年7月4日号より抜粋