ネットや電子書籍の普及により紙媒体が売れなくなったといわれているなか、読者に選ばれ続ける女性誌があるという。作家でコラムニストの亀和田武氏はこう語る。

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 ファッション誌を、ついつい手にとってしまう。あ、女性誌ね。ここ最近よく買うのは「GINZA」(マガジンハウス)だが、同誌6月号の特集はズバリ<ファッション雑誌を読みましょう>だ。

 雑誌が売れない時代に、なぜ女性誌だけは元気なのか。「GINZA」編集部は書いている。「ファッション雑誌は夢を売る商売です」「ネットやSNSの情報では得られないような、作り手の経験と情熱が詰まっていると思います」

 どう、この雑誌って素敵でしょ? そんな自信が、私みたいなチャン爺にまで、ビシビシ伝わってくる。

 モデルが颯爽と、ときにアンニュイな表情でオシャレな服を着ている写真のほうが、男性誌のヘアヌード写真よりもセクシーに映るんだよ。なんだろう、ヘアにもAKBにも食傷したのかな、俺たち。

 オリーブ伝説に多くの頁が割かれる。82年に「ポパイ」のガールフレンド誌として創刊し、03年に休刊した。私も、よく読んだよ。パリの少女=リセエンヌのファッション、文化、日常を伝える誌面に男女の別なく夢中になった。

 オリーブのおかげで、いまのアタシがある。「GINZA」の特集は同じ版元から出ていた伝説の少女誌へのオマージュが核になっている。モデルや編集者だけじゃなく、裏方さんだったスタイリストも輝いていた時代だ。

 ファッション週刊紙「WWDジャパン」も5月26日号で雑誌特集を組んでいる。いま一番エッジの利いたコラムニスト、能町みね子は、雑誌の魅力をこう語る。「まず判型が大きくて写真が大きいところ。めくる行為が好きです」。指が雑誌の頁に触れたときの感覚。あの官能性が、いま再発見されているようだ。

週刊朝日  2014年6月13日号