秋葉原にあるAKB48カフェ&ショップ (c)朝日新聞社 @@写禁
秋葉原にあるAKB48カフェ&ショップ (c)朝日新聞社 @@写禁

 AKB48の握手会イベントでメンバーたちが切りつけられた事件では、警備の不備が指摘された。だが、「ハイタッチ会」や「写メ会」などファンたちとの「接触イベント」を「売り」にするアイドルたちにとって、警備強化は自分たちの首を絞めることにもなりかねない。

 AKB48グループよりも、「地下アイドル」「地方(ご当地)アイドル」と呼ばれるマイナーアイドルたちのほうが、むしろ事件によってダメージを受けるという指摘もある。アイドルライターが解説する。

「メジャーデビュー前のガールズユニットは全国に山ほどあります。彼女たちは知名度がないので、手っ取り早く稼げる接触イベントが何より大事。グッズを3千円以上購入したら握手券がもらえるとか、CDを10枚以上買ったらツーショット写真が撮れるとかいろんな特典を付けている。ファンを奪い合うため、パンチラしたり、衣装をはだけたりする過激なユニットもある。それを期待して会場に足を運ぶファンもいるので、AKB48よりも格段にリスクが高いのです」

 もちろんほとんどのファンは紳士的だが、アイドルの「敷居」が低い分、ファンが暴走するケースも少なくないという。

「ポケットに穴を開けて、ライブ中に自慰行為をして、そのままの手で握手しようとしたり、カバンにビデオ機器を入れてローアングルから盗撮しようとしたり、事前になめたであろう封の開いたプリンをメンバーに差し入れようとしたり。でも、メンバーはそういうファンでもむげにできず、笑って耐えなければならないんです」(同)

 問題行動を起こすファンは入場規制したり、荷物検査をしたりすればいいのだが、マイナーアイドルでは警備態勢を敷く金銭的な余裕がないのが現状だ。

 福井県坂井市のご当地アイドル「ami~gas(アミ~ガス)」のマネジャーが言う。

「予算的に警備員を配置することはできないので、メンバーをできるだけ一人にしない、怪しい人がいたらマークするということくらいしかできません。ご当地アイドルは、お客さんとの距離が非常に近い。地元は狭いので、その気になれば自宅も調べられます。近県のご当地アイドルでは、家までついてこられたとか、待ち伏せされたといった話を聞いたことがあります」

 マイナーなアイドルグループにとって、安全対策を講じることがいかに難しいかがわかる。

「今は、アイドル戦国時代なんです。握手会はやめられない。物販のときにお客さんと握手をしたり、チェキでの撮影会というのは必須です。お客さんは触れあえることを目的に会場までやってくるわけですから。事件が起きても、警備態勢は今までどおり、というグループも多いはずです」(アイドルジャーナル社・楠山幸英編集長)

 アイドルたちの危うい状況は、終わりそうもない。

週刊朝日 2014年6月13日号より抜粋