1970年代から郊外にキャンパスを移した大学が、2000年代になって、都心に戻り始めている。

 今年は実践女子大が東京郊外の日野キャンパスから渋谷キャンパスに移転する。文学部と人間社会学部、今年名称変更する実践女子大短期大学部の全学年など、4300人のうち2600人規模の大移動となる。

 安達勉常務理事は、「渋谷が持つダイナミズムを教育に生かしたい」と抱負を語る。たとえば渋谷周辺には根津美術館などの美術館や博物館も数多くあり、文学系学部では作品に触れながら芸術や文化を学ぶことが容易になる。社会系学部では企業と連携することで、実践的な学習を取り入れていく予定だ。

 渋谷の17階建ての新校舎は、中央が9階までの吹き抜け、廊下はガラス張りという開放的な空間。キャンパス移転の効果で、昨年に比べて志願者が、文学部をはじめとして複数の学部で30%以上増えた。

 このほか、立正大の法学部が埼玉県谷市から品川区に移転。東洋学園大は、今までは1・2年次は千葉県の流山キャンパスで学んでいたが、今春からグローバル・コミュニケーション学部、現代経営学部の学生は4年間、文京区の本郷キャンパスで学べる。

 交通アクセスが良く、文化、遊興施設が整っている都心部は、学生にとって魅力的だ。アルバイトや就職活動に便利な面もある。

「多様な入試や新設学部・学科が志願者増につながるのはある程度のレベル以上の大学ですが、都心へのキャンパス移転は確実に志願者が増えます」(駿台予備学校情報センターセンター長の石原賢一氏)

 都心回帰の動きは首都圏に限らない。愛知学院大も今年、本部のある日進キャンパス(愛知県日進市)から、一部を名古屋市の中心部に移転する。名古屋城のある名城公園に隣接しており、近くには市役所などが立地する一等地だ。移転するのは、商学部と経営学部、13年に新設した経済学部のビジネス系3学部で、2年生以上が専門教育を受ける。

「都心部に移転することで、企業とタイアップしやすくなる。移転をきっかけに企業とコラボし、アクティブラーニングを進めていきたい」(広報担当者)

 

 最近の都心回帰の例では、昨年、青山学院大が、人文・社会科学系7学部の1、2年生が学んでいた相模原キャンパスを、青山キャンパスに集約した。

 また、明治大と帝京平成大が、JR中野駅前にあった警察大学校の跡地にキャンパスを新設。明治大は東京都杉並区の和泉キャンパスから国際日本学部を移転し、新設した総合数理学部とともに設置。帝京平成大は薬学部などを千葉などのキャンパスから移した。

 今後も15年には、拓殖大の商・政経学部が東京の文京キャンパスに移転予定。今までは1・2年次は東京・八王子キャンパスで学んでいたが、4年間都心で学べるようになる。

 16年には杏林大が八王子キャンパスからより都心に近い三鷹市に新設する井の頭キャンパスに移転。従来の三鷹キャンパスには医学部と保健学部看護学科があり、この移転で全学部が三鷹市内に集約される。

 キャンパスの都心回帰の流れは今後も続きそうだ。

週刊朝日  2014年2月14日号