自分で酒の飲み方をコントロールできなくなるアルコール依存症。治療で大きな問題点としてあげられるのが、推計80万人の患者のうち、治療を受けている人数が4万数千人と極端に少ないことだ。肥前精神医療センター院長の杠(ゆずりは)岳文医師は、その理由をこう説明する。

「依存症の治療は主に精神科で行っているため、一般の人にはハードルがまだ高いことが大きな原因です」

 アルコールの問題については、うつ病など他の精神科の病気に比べて、病気としての認知がされていないため、周囲の人たちの理解も得にくい。そのため、本人が自発的に病院を訪れることはほとんどない。消化器内科からの紹介や、家族にむりやり連れてこられて、病院を受診したときには、重症のアルコール依存症になっていることが多い。

 アルコール依存症の診断基準として、WHOによる診断ガイドライン(ICD-10)を編集部で改変し、まとめた。次のうち3つ以上当てはまれば、アルコール依存症の恐れがありそうだ。

・お酒を飲めない状況でも強い飲酒欲求を感じた
・自分の意思に反してお酒を飲みはじめ、予定より長時間または多量に飲み続けた
・お酒を飲む量を減らしたり、やめたときに、手が震える、汗をかく、眠れないなどの症状が出た
・飲酒を続けることで、お酒に強くなった
・飲酒のために仕事やつきあいなど大切なことをあきらめた
・お酒の飲み過ぎによる体や心の病気がありながら、お酒を飲み続けた

週刊朝日 2014年1月31日号