内科と外科の双方から、治療法確立に向けた取り組みが進む肥満症。その治療の置かれた現状と課題について、日本肥満学会評議員で大阪府吹田市にあるみどり健康管理センター所長の徳永勝人医師に話を聞いた。

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 現在、日本における肥満症治療は、99%以上が内科的治療で、手術のウエートは小さい。手術をするにしても、最初は内科的な取り組みを行い、それでも期待する効果が得られず、「肥満外科治療ガイドライン2013」に適合する場合に初めて手術も考える――というのがセオリーです。

 今のところ内科治療で使われる薬は食欲抑制剤のマジンドールのみですが、2013年秋には小腸での脂質吸収を抑える作用がある「セチリスタット」というリパーゼ阻害剤が厚生労働省の製造承認を得ました。しかし、中央社会保険医療協議会での薬価収載は見送られ、健康保険で使える見通しは立っていません。つまり、以前から行われている「低エネルギー食やフォーミュラ食を使った食事療法と運動」を軸に、地道に取り組んでいくことが、内科での肥満症治療の柱なのです。

 肥満症の治療目標は、「3%の減量」に設定するといいでしょう。この数字を見ると、意外に小さいと感じる人は多いかもしれません。しかし、内臓脂肪型肥満の人が体重を3%減らせば、代謝は劇的に改善し、各臓器の負担は大幅に減ります。数字では見えにくい効果があるということを知るだけでも、治療への積極さが増してきます。

 一方の手術については、欧米はもとより同じ東洋でも、シンガポールやタイなどと比べて日本の症例数は伸びていません。一定の内科的取り組みで効果が見られないとき、特に糖尿病を併せ持っている高度な肥満患者には、手術という選択肢を入れて治療計画を立てていくべきであり、そのためにも外科と内科の連携が重要になってきます。

 日本でも、外科内科の別なく肥満治療のレベルアップへの取り組みが進んでいます。その一環として日本肥満学会では、肥満症治療の専門外来を設置するなど専門性の高い診療を行う認定施設の設備に力を入れています(日本肥満学会ホームページを参照=http://www.jasso.or.jp/)。病院選びの参考にしてください。

週刊朝日  2014年1月3・10日号