プロゴルファーの丸山茂樹氏が全英オープンを総括。見事6位でホールアウトした松山英樹選手にさらなる活躍を期待する。

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 最高峰の戦いは盛り上がるねぇ~。今季海外メジャー第3戦の全英オープン(7月18~21日)も、見どころたっぷりの4日間でした。最終日に5打差をひっくり返して優勝したフィル・ミケルソン(43、米国)は立派のひとこと! 勝たなきゃいけない選手だけに、背負ってるものがそこらのプロゴルファーとは違いますからね。それを跳ね返してのメジャー5勝目。もう立派、立派。

 僕は、ミケルソンが全英で勝てるとしたら、このミュアフィールドが会場のときだと思ってました。ティーショットで意外とバンカーが少ない。彼はそういうトラップにハマってることが多かったですから、気楽に回れるだろうな、と。これで全米オープンに勝てば、海外4大メジャーをすべて制する「生涯グランドスラム(GS)」です。可能性は十分にあると思いますけど、年齢的なものも考えて、来年からの3年が勝負でしょうね。

 そして6位に入った松山英樹(21)。全米の10位に続くメジャー2大会連続のトップ10入り! これは日本選手で初めての快挙です。

 全米で世界のトッププレーヤーに向けて名刺を配り、全英では配った名刺を、ちゃんと名刺入れに入れてもらえる存在になった。「マツヤマは立派な選手だ」という印象を強く与えられた試合だったと思います。

 彼のキャディーの進藤大典から連絡があって、「英樹が『丸山さんのおかげで頑張れた』と言ってました」と。そういう可愛らしいところもある男なんです。7月上旬の試合で一緒になったとき、英樹と練習ラウンドを回って、全英に向けてのアドバイスをしました。僕の言ったことが頭に残って役立ったのなら、本当にうれしいことです。

 ショットの精度を示すパーオン率が76%で全体の2位! いいスピンコントロールができてました。そこまで風も強くなかったから、彼の持ち味である高い弾道の球も生きました。まだ今季は3試合しかPGAツアーの試合に出ていませんが、平均ストローク数68.659は、PGAメンバーのランキングに当てはめると、トップ。なかなか海外にポンと出ていって、68なんて出ない。今回の全英でも、他の日本選手の多くは果てしなく崩れて予選落ちでした。英樹がとんでもなく質の高いゴルフをしている証拠です。

 ただ全英で英樹が大いに反省しなきゃならないことがある。第3ラウンドの17番で科されたスロープレーによるペナルティーです。あの1打罰がなければ3位でした。警告を受けた時点で、競技委員に「俺は迅速にやろうとしてるぞ」というアピールをするぐらいでないといけないんです。

 17番の第1打は日本人のお客さんに当たって深いブッシュに入った。英樹はお客さんに謝り、手袋にサインして手渡したそうですが、そんな不運があったにせよ、ペナルティーを科されない努力はできたはず。ゴルフのマナーの中で、スロープレーをしないってのは「基本のき」ですから。

 英樹はすぐにカナダに渡り、4週にわたって来季のPGAツアーのシード権獲得(同ツアーの賞金ランキング125位以内など)を目指す戦いに入りました。ぜひアメリカでプレーする道を勝ちとってほしいですよね。そしたらまた、僕の経験を余すところなく伝えたいと思います。

週刊朝日 2013年8月9日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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