「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」は、たばこの煙などの有害物質による慢性的な肺や気管支の炎症によって引き起こされる病気だ。順天堂大学医学部で実施された大規模な疫学調査研究によると、患者数は約530万人と推定され、高齢者に多くみられる。

 COPDになると、空気をためるぶどうの房のような肺胞という組織が壊れ、空気の通り道となる気管支が細くなる。呼吸がうまくできなくなり、息苦しくなる。

 そこでCOPD治療法の一つとして呼吸リハビリテーションが有効となる。楽にできる呼吸法や適切な運動のやり方を身につけることで、QOL(生活の質)を改善、健康を増進させる。江東病院に非常勤で勤める順天堂大学大学院医療看護学研究科臨床呼吸病態学分野教授の植木純医師(順天堂大学順天堂医院などでCOPD外来を担当)は、その必要性をこう話す。

「この病気はからだを動かして呼吸が速くなると、息を吐いている途中に気管支の閉塞が起こるため、吸った空気を上手に吐き出せなくなります。残った空気が肺を膨らませて息苦しくなってしまうのです」

 問題は、からだを動かしたときの息苦しさへの不安から外出を控え、家でもほとんど動かなくなり、日常の活動量が下がってしまうことだ。

「活動量の低下は持久力や筋力、胸の筋肉などの柔軟性の低下につながり、息苦しさの悪化を招きます。この悪循環を断つことが、呼吸リハの大きな役割となります」(植木医師)

週刊朝日 2012年12月28日号