血液が逆流し、静脈が拡張した状態になる下肢静脈瘤。治療の選択肢は複数あるが、最適な治療法をどう見極めればいいか。日本静脈学会の委員の一人として2010年に「下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドライン」をまとめた福島県立医科大学心臓血管外科学講座准教授の佐戸川弘之医師に聞いた。
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 下肢静脈瘤は、症状に応じて適した治療法とそうでない治療法がありますから、注意が必要です。
 まず、代表的な根治術である血管内レーザー焼灼術と悪くなった静脈を引き抜くストリッピング術は、大伏在静脈や小伏在静脈にできる伏在静脈瘤がおもな対象で、より細かい静脈に生じる網目状静脈瘤やクモの巣静脈瘤は基本的にその対象になりません。  これらの治療は硬化療法やレーザー体外照射が一般的です。
 また、からだへの負担が小さく、人気が高い血管内レーザー焼灼術に関しては、静脈の径が平均10ミリを超すような太いものや蛇行・屈曲の激しい伏在静脈の治療には適しておらず、この場合はストリッピング術が適応となります。
 レーザーやストリッピングにより逆流を止めると見た目もかなり改善されますが、膝下の瘤は手術時に同時に摘出するのが一般的です。レーザーやストリッピングによって問題の静脈を閉塞させたり、除去するだけでは瘤が残ることもあることを知っておいてほしいと思います。

※週刊朝日 2012年5月18日号