アップル、グーグル、ヤフー、インテル―――世界の最先端企業が集う米シリコンバレーで活躍する日本人がいる。全米トップ10に入るベンチャーキャピタル「DCM」のパートナー(共同経営者)、伊佐山元(いさやまげん)だ。
 まだ海の物とも山の物ともつかない事業の将来性を見極め、投資する。リスクも大きいが、当たったときのリターンは莫大だ。頼りは自分の"目"だけ。シリコンバレーの主要なベンチャーキャピタルで経営に携わる日本人は、伊佐山が最初にして、唯一である。
 DCMのオフィスの近くには、昨年亡くなったアップルの創業者、スティーブ・ジョブズが行きつけだった寿司店があり、そこで面識もあったという。そのことを振り返りながら、「経営者に必要なこと」について次のように話した。
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 ジョブズは変人かもしれないけれど、寿司屋で会えば、きさくに声をかけてくるし、近寄りがたい雰囲気はまったくなかった。有能な経営者というと、「頭が切れて冷徹」というイメージかもしれませんが、そういうタイプの人は結局、周りに信頼されません。どこか抜けていて、愛されるキャラクターのほうが、いろいろと困らされても、なんだか許してしまう。そういう人が世界を変えるイノベーションを起こすんです。
 あと経営者に必要なのは、周りに批判されても自分の信念や理念を決して曲げず、ブレないことです。誰かに追い抜かれるんじゃないかと危機感を持って、夜中に起きちゃうような人も、成功する経営者には多いですね。

※週刊朝日

 2012年4月20日号