セ・リーグでも今季からパ・リーグ同様に"予告先発"が導入されるかもしれない―――こんな報道があったのは2月4日のこと。その舞台裏をベテランの野球記者に尋ねると、「落合博満さんが中日の監督を辞めたから、こんな話が出てくるんでしょう」という。

「評論家として所属する日刊スポーツで落合さん自身が書いていましたが、『戦う前の心理戦、情報戦は野球の醍醐味』という"野球原理主義者"だから、監督として現場にいたら予告先発という"ショーアップ"には強硬に反対したと思うんです」

 8年間でリーグ優勝4回という実績を残し、球界の名将の仲間入りを果たした落合氏。その好成績と反比例するかのように本拠地・ナゴヤドームの観客動員数が落ち込んだ。

「試合開始時間など、彼がテレビ局側の意向に従わなかったがために、日本シリーズの中継がなくなったこともありました。それでも落合監督は勝つからセ・リーグの中でも存在感が大きくなっていた。その重しが取れ、経営が苦しい球団の背に腹は代えられない現状が露出したのが今回の予告先発の検討です」(スポーツ紙デスク)

 かつてのセ・リーグは1試合1億円と言われた巨人戦の放映権料を頼みに、不人気に悩むパ・リーグが打ち出す予告先発やDH制を冷ややかに見ていた。

 しかし、時は流れ、野茂英雄、イチロー、松坂大輔にダルビッシュと、メジャーに移籍するビッグネームのほとんどがパ・リーグ出身選手に。予告先発が検討されるほど、セ・リーグの球団経営が苦しくなっているのだ。

※週刊朝日 2012年2月24日号