「最初に逃げた車には先生1人と子ども3人、次の車に先生1人だけ、3台目の車に所長を含む先生3人と子ども1人が乗っていて、この3台は水に濡れることもなく逃げ切った。後を追って逃げることになった6台が津波にのまれ、それぞれ押し流された先々で3カ所の建物の2階に這い上がったものの、6歳の男児と女児、それに2歳の男児の計3人が逃げられずに命を落とした。その3人が乗っていた車には、先生1人と計6人の子どもが乗り合わせたそうで、なぜ所長らが子どもたちより先に逃げたのかと、遺族は首をひねっているそうです」

 町役場は遺族への説明会を開いたものの、説明の場を求めた保護者会には対応せず、県への報告も怠ってきた。その結果が読売の記事に表れたわけだ。

 町役場を訪ねてみると、

「(保育所の管理下で亡くなった児童に支払われる)特別弔慰金の手続きもあるので、すでに県には報告してありますよ」

 と話す担当課長が、目の前に担当職員を呼びつけた。

「報告はしたんだよな?」

 と確かめる課長に、職員は小さな声で力なく答えた。

「し、してないです......」

 しばしの説教ののち、課長が詫びてくる。

「報告が遅れてしまって、申し訳なく思います」

 担当職員の弁明はこうだ。

「県から書類は届いていたが、当初は忙しくて返せなかった。読売の記事が出たあと、県に電話で概要を伝えたが、津波に遭ったのが敷地を出たとこの駐車場だったので、保育中(管理下)と言えないかもしれないとの議論があって、最終的に保育中と判断するまで時間がかかった。今は書類を出そうと準備をしていたところで、決して隠そうとしたわけではありません」

 保育中の子どもがなぜ命を奪われたのか。その検証にはまだまだ時間がかかりそうだ。

(本誌・藤田知也)


週刊朝日