仁川が急成長したのは、着陸料などの空港使用料が成田の半分以下で、航空会社を誘致しやすいからだ。しかも乗り継ぎが便利で、欧米からの旅客をアジア各地へつなぐ国際ハブ空港としても注目を集めている。

「仁川での出入国審査の列は数人です。モニターで監視し、列が伸びるとすぐにゲートを増やす。国の姿勢の違いを感じます」(杉浦氏)

 路線別で見ると仁川の肉薄はさらに鮮明だ。1週間当たりの出発便数は、中国・台湾や東南アジア線では成田より多く、欧州・中東線も成田に迫る。成田が優位なのは北米線ぐらいで、ここでも抜かれれば、東アジアのハブ空港の地位は仁川に奪われてしまう。

 問題は、成田にとって生命線のこの北米線を、国際化した羽田が次々と受け入れていることだ。デルタ航空やアメリカン航空、全日空、日本航空などが1日計9便を羽田から出す。日航は成田発のサンフランシスコ便をやめて羽田へ移す。

 では、羽田が成田に代わってアジアのハブ空港になれるかといえば、前述のとおり課題山積だ。

 羽田の国際線便数は今後最大に増えても成田の3分の1ほどしか割り当てられない。全日空は羽田の豊富な国内線を使って、地方客を羽田発の国際線へ集める「内際ハブ」を目指すが、韓国の航空会社は、

「地方空港には仁川からの直行便が入っている。羽田経由便より安く飛ばせる」

 と余裕しゃくしゃくだ。

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