しかも、航空会社の誘致には、政府間の航空交渉が必要だ。国交省の幹部はこう打ち明ける。
「政府は、日航や全日空の就航要請がない国との航空交渉に消極的だが、日航は更生中で、全日空も路線拡大に慎重。その余波で成田は路線を広げられず、外国人観光客の誘致も進まない悪循環に陥る恐れがある」
杉浦氏も指摘する。
「課題は羽田との競争ではなく、相乗効果のはず。そのためには両空港のすみ分けを明確にして、それぞれの強みを伸ばすべきです」
しかし、馬淵澄夫国交相は今のところ「成田と羽田を一体運用する」と言うだけで具体策は示さない。
「日本は羽田をさらに増強して成田に代わる国際ハブ空港にするのか、しないのか。ここをあいまいにしておくと共倒れになる」
海外の航空会社の担当者からもそんな指摘が相次ぐ。
経済失政が続く菅政権は、羽田国際化を最大限に演出している。しかし、重要なのはそうしたパフォーマンスではなく、日本全体の競争力が落ちないように、成田の補強を含めた国家戦略を打ち出すことだ。
本誌・三嶋伸一