羽田国際化で、日本人の海外旅行はたしかに便利になる。しかし、アジアの空港間競争では、成田と羽田がバラバラに便や就航先を食い合い、仁川などの海外空港がアジアのハブ空港になる好機を与えている。

 その兆候はすでに出ている。大韓航空は毎日、羽田─仁川便を出す。日系航空会社の担当者が解説する。

「大韓便で朝6時25分に羽田を出発すれば、午前9時半以降に仁川を出発する便に乗り継げる。成田から直行便のない天津や煙台など中国の地方都市やカトマンズなどへ、手軽に行くことができます」

 さらに、ウラジオストクへの成田便は夕方着だが、仁川経由便なら昼間のうちに到着できる。

 これまでも仁川は日本の二十数カ所の空港から日本人客を集めてきたが、羽田の国際化がその競争力をさらに高める皮肉な結果となりつつあるのだ。

 こうした事態に、成田空港はどう対抗するのか。

「来夏にも格安航空会社を誘致したい」

 成田国際空港会社の森中小三郎社長は力説する。

 

 羽田国際化を受け、成田は14年度にも空港容量を現在の約1・5倍に拡張して迎え撃とうとしている。しかし、かつて46カ国が乗り入れを待っていた状況はすでにない。格安航空会社の誘致だけで仁川に対抗するのは無理がある。

「格安航空会社を呼んでも既存の路線とダブるだけ。早く未就航のロシア東部や南米、アフリカに路線を開くべき」(前出の杉浦氏)

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