dot.[ドット]

第54回 『うたのしくみ』教えてよ!

文・谷川賢作

プロフィール   バックナンバー   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

唐突ですが『やっぱり猫が好き』って覚えてますか? フフフ みんな「やっぱり歌も好き」 (撮影/谷川賢作)

唐突ですが『やっぱり猫が好き』って覚えてますか? フフフ みんな「やっぱり歌も好き」 (撮影/谷川賢作)

詩を作るワークショップ。御大の元にどしどし作りたての詩が届きます (撮影/谷川賢作)

詩を作るワークショップ。御大の元にどしどし作りたての詩が届きます (撮影/谷川賢作)

うたのしくみ

細馬宏通著
定価:1,490円(税込)

978-4835618760

amazonamazon.co.jp

 “腰痛君”? はい。なんとか仲良くやっています。彼の友達の“もったいないお化け君”もどこかに出張中です。“静養君”もようやく私のお見舞いに来てくれるようになりました。

 さて、『うたのしくみ』(細間宏通・著/ぴあ刊)肩肘張っていない意欲作です。いつも“私が惚れこんだ1曲、恋におちたこの歌”の魅力を、なんとかしてまだ聴いていない人に、ことばで伝えたい人にとって、この細間さんのユニークな視点と飄々とした語り口は、目から鱗ものです。一見冷静に見えて、その実“一途な歌愛&歌分析癖”に溢れた筆致はアナタを虜にしてやまないでしょう。むさぼり読みなさい!(ってまたもやその決め台詞)

 そしてなにより、いつもどこでも、歌にできることばの連なり「詞」を探し続けている私は「君、最近ちょっと探し方が硬直してないかい? ここらでいったん頭柔らかくしないとだめだぜ」と彼に言われているようで、穴があったら入りたい。

 話は変わって、先日、山形の東北文教大の企画で、オヤジと南山形小6年生の16人の子たちと「詩をつくってみよう!」というワークショップをやってきました。前半は「や」「ま」「が」「た」の4文字からはじまる短い詩を書いてみよう、ということでオヤジも小学生も、会場の見学の人たちをもみんな巻きこんで、いっぱい「やまがた短詩」を作っていたのですが(やんちゃな ママは がっつりもりもり たべるから だんだんデブりん おなかポン 「やまがただお」となりましたが、老若男女で作るのでこんなんでOK。「詩」というと高尚なものと勘違いしてみんな構えてしまいますが、ハードルはいつも低めに)後半はアドリブ小僧(おっさん? ジジイですってば!)の私の独壇場。できた詩にどんどん次々に「ちぎっては投げちぎっては投げ」で、即興でメロディーをつけていくのですが、たくさん数をこなさなければいけないこともあり、知らず知らずにメロディーが定型化してしまう。たとえば「やまがた」という語を歌うと、会場の目の前にも雄大な山があるせいかもしれませんが、つい「♪や~ま~がた~」(♪ドーミーレソーでも♪ミーラーソドーでも)というように大きくなりがちなのです。

 そこで「細間視点」で揺さぶりをかけると、これは「やまがた」のダイナミズムとは逆な例ですが、たとえばP20。ユーミンの名曲『やさしさに包まれたなら』の冒頭「♪ちー、いっさーい ころーはー」(表記は細間式)音名で言うと♪ドード(オクターブ上)シソーミラーレー。そう。ユーミンの魔法のメロディで「ちいさい」がこんなにダイナミックになったりするのです! 「ちいさい」に、ささっとメロディをつけようとすると、どうしてもあの世代を越えて伝わる童謡『ちいさい秋みつけた』の中間部「♪ちーさいあーき、ちーさいあーき、ちーさいあーき、みーつけた」のように「ちいさい」という語にひそむ「ひそやかな感じをささやくように歌うとせつなさ直結」というような硬直したイメージに囚われてしまいがちなのですが、まったく違うアプローチもできるのです。うむうむ。きっと「やまがた」も雄大にせずに小さくせつなく作曲もできるのです。

 なにか一人で興奮して盛り上がっていますが、『うたのしくみ』どの章も「細間の発見、皆に惜しみなく」ということで楽しく創作のヒントをいただけます。ありがたや。
 あっ。この本を読むとき(も)YOU TUBE必須です。たとえばP40「おーまーえーはーアーホーかー」by横山ホットブラザーズ。これです。(「横山ホットブラザーズ お前はアホか~」で検索してください)

『うたのしくみ』とYOU TUBEを辞書代わりに、どんどん音楽の裾野を広げてください。一途もいいけど雑食もいいよ! [次回9/26(月)更新予定]

(更新 2016.9.12 )


バックナンバー   コラム一覧   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

谷川賢作

谷川 賢作(たにかわ・けんさく)作/編曲家 ピアニスト

1960年東京生まれ。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者続木力とのユニット「パリャーソ」に所属。また父である詩人の谷川俊太郎と、朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばより作・編曲の仕事をはじめ、映画「四十七人の刺客」「竜馬の妻とその夫と愛人」、NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等を手がける。88、95、97年に日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。2014年度船橋市文化芸術ホール芸術アドバイザー。音楽を担当した最新映画は「カミハテ商店」「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」。最新刊『げんきにでてこい』(カワイ出版)、最新CD『うたがうまれる』 谷川賢作オフィシャルサイトhttp://tanikawakensaku.com/