Chet Is Back!
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CHET BAKER/Chetty's Lullaby-So Che Ti Perdero (RCA VICTOR PM45 3068)

 高価な7インチを買ってしまった。エンニオ・モリコーネ楽団をバックに全盛期の美声が朗々に棲む62'年録音。2曲入りのEPですが謎が多過ぎて久しぶりにPCで情報を検索してしまった。エンニオ・モリコーネといえばイタリアを代表する映画音楽家なので何かのサントラからのシングルカットなのかと思ったし、後述するエンニオのボックスセットにも収録されているくらいだから当然映画音楽だと思うじゃないですか。しかしそういった記述が見つからない。手がかりはジャケット裏のライナーなんだけれどもイタリア語というわけで…。おそらくイタリアで麻薬渦に巻き込まれた後若干立ち直りつつ、といった時期かと思います。 「Chetty's Lullaby」は全盛期のチェットを彷彿させる甘い歌声にオーケストラ・シンガーズとの掛け合いの妙、イタリアの哀愁ポップスとして成立させてしまうかのような普遍の魅力を持った曲。ジャズ・ソングというやつでしょうか。この時期のイタリア音楽で女性ボーカルといえばエッダという歌手が有名で数多くのセッションや録音が残されていますがそういったタレントとのデュオではなくあくまで”シンガーズ”との競演が新鮮に聴こえます。目当ての「So Che Ti Perdero'」も同様ながらそのシンガーズのバース後に’パパパー’とおもむろに飛び出すtpのソロがたまらなく好き。演奏の尺の関係で簡素で物足りなく感じますがその刹那及びメロディラインのほんの数十秒が宝物のように感じます。藍色から一瞬にしてシネマスコープで音像まで飛び出してくるような爽快感もあります。この『妙』は勉強してどうなるものでもなく、生き方とか品格とかの世界ですね。ちなみに http://en.wikipedia.org/wiki/Chet_Is_Back! (WIKIPEDIA)「CHET BAKER SEXTET/Chet is Back!」(日本盤LR- RCA / BMG / BVJJ 2820) にも収録されていますが、この編集は当時のセッションの中に紛れて収録されているようなアルバムとしては雑な印象もあるので、時間と根気、それと貯金があったらぜひこの7インチを探して聴いて欲しい。イメージが全然違います。音楽はパッケージを含めた総合芸術です。そういった意味でも好事家のみなさまにはこの7インチをお勧めしたい。この時期の欧州RCA VICTORからのリリース作品のジャケットには小さなフォントで「serie europa」と記載されていますがそんな部分も含めて愛おしいです。ちなみに輸入盤CDは今でも購入可能だそうです。別のCDだとTHE ENNIO MORRICONE CHRONICLES(エンニオ・モリコーネ・クロニクル)にも収録されています。こちらは2000年にBMGファンハウスから(RCA/BMG BVCM37063~72)10 CDs + EP + Booklet] という仕様でリリースされています(現在廃盤)10枚組…。