地球の旅人東苑泰子の東遊西撮記

第9回 フィンランド 数えきれない湖と終わりのない森と時を越えた教会と
第9回 フィンランド 数えきれない湖と終わりのない森と時を越えた教会と

昨夏、ロシアやバルト三国を周遊中にフィンランドを訪れた。19年前、ロシアのサンクトペテルブルクへ行く途中、首都のヘルシンキに立ち寄ったことがあった。当時、まだ日本には紹介されていなかった北欧デザインで、建物だけでなくベンチやカートに至るまですっきりと統一された空港や駅のモダンさに感銘を受けた。そして電車でサンクトペテルブルクに向かう途中、ロシア国境を越えたとたんに、駅や土地が荒れてみすぼらしくなったのを目の当たりにして驚いた。地続きの大地で、よくある国境の大河や峠を越えたわけでもなく、土地の性質が変わったとはとうてい思えなかった。5分前まではきれいに整備された畑や庭が車窓に連なってきたのに、これは一体どういうことか? まるで匠の手によって大変身した家から、逆に様々な問題を抱えた昔の家に戻ったようだった。人の手入れ具合でこれほどまで土地や住環境が変わるのだということを、まざまざと見せつけられた。

第8回 リトアニア 美しい町並と大量虐殺の記憶
第8回 リトアニア 美しい町並と大量虐殺の記憶
昨夏、ロシア、ウクライナ、バルト三国を周遊中にリトアニアに立ち寄った。ここは、第二次世界大戦中、杉原千畝という日本人外交官が、当時ヨーロッパで迫害されていたユダヤ人などに人道的見地からビザを発行して、避難するのを助けた国だ。ガイドブックを読むと、首都ヴィリニュスには、他のバルト三国の首都と同じように世界遺産に指定された美しい旧市街が残されている一方、ユダヤ人の国立ユダヤ博物館ホロコースト展示館や旧KGBの建物を利用したリトアニア人大量虐殺犠牲者博物館などがあるという。日本で普通に暮らしている限りは到底思い至らない残忍な歴史の展示で、ガイドブックを読んだだけでも恐ろしさにどきどきしてしまった。しかし、そのような集団による暴力について知っておく必要があると思い、ヴィリニュスの町を散策するときに、それらの博物館も訪れることにした。
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第7回 ウクライナ 蜂蜜祭りと飢饉犠牲者記念館
第7回 ウクライナ 蜂蜜祭りと飢饉犠牲者記念館
昨年8月、ロシアやバルト三国とともに、ウクライナの首都キエフを訪れた。4年前、東欧を旅行中にウクライナ西部を回ったが、キエフまでは行かなかった。西南部はオーストリア帝国に支配されていたことがあり、ヨーロッパの影響を受けた町があるが、キエフから東は文化が異なるとガイドブックに書いてあったからだ。それに、その頃はまだ特急電車もなく移動に時間がかかったため、キエフへは別の機会に行ってみようと思っていた。昨年、その時の旅で出会った日本アニメ好きの現地の女の子が、一家でキエフに引っ越したと連絡してきたので、彼女との再会も兼ねて立ち寄ることにした。
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第6回 ロシア 流暢な英語で自虐ネタ飛ばす好青年たち
第6回 ロシア 流暢な英語で自虐ネタ飛ばす好青年たち
昨年7月、ロシアを一か月ほど旅して、モスクワ、ノブゴロド、サンクトペテルブルクといった西部の都市を訪れた。以前、1995年にモスクワとサンクトペテルブルクを観光したことがある。ちょうど、第二次世界大戦中にドイツに分捕られた近代絵画がロシアに返還され、それらを憧れのエルミタージュ美術館で特別展示すると知り、その展覧会を見に行ったのだ。その頃は、航空券・ビザ・ホテルの手配をすべて所定の旅行代理店を通して事前に行わなければならず、時間がかかる上に外国人用ホテルは大変高かった。最近はそれらをすべて自分で手配でき、安くて清潔で安全なホステルが町ごとにたくさんできた。そこで、夏休みに、隣国のラトビアで5年に一度開催される民族の歌と踊りの祭典を見に行ったその足で訪れてみた。
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第5回 インパール 食べきれないごちそうと、兵士のかなしみと
第5回 インパール 食べきれないごちそうと、兵士のかなしみと
年初から、インド東北部の、ナガランドとマニプル州を旅している。この地域は、ミャンマーと国境を接する険しい山岳地帯だ。ここには、いわゆるインド人とは異なり、モンゴロイド系で日本人に顔つきが似たナガという部族が暮らしている。つい百年ほど前まで、山間のジャングルに裸同然で生活しており、その頃やってきたアメリカ人宣教師によってキリスト教化されるまで、部族同士で首狩りを行ってもいたそうだ。またここは、第二次世界大戦中にインパール作戦で日本軍が壊滅した地でもある。戦後はインドからの独立闘争が続き治安が悪く、入境が制限されていた。しかし、数年前に情勢が落ち着いて域内の個人旅行が可能になったところで、昨年末にナガランドの隣の州に住むガロ族の友人の結婚式に招かれたので、訪ねてみた。
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第4回 ペルー 北のマチュピチュに響く雲上のフォルクローレ
第4回 ペルー 北のマチュピチュに響く雲上のフォルクローレ
昨年の10月、エクアドルから敢えて海沿いの幹線道路ではなく山あいの細道に沿って行き、国境の小さな川にかかる橋を徒歩で渡って、ペルー北部に入った。この辺りは首都リマから離れ、山道も険しい。しかし、インカ以前から独自の文化が栄え、高山に建設された要塞が遺跡として静かに座し、その周辺の断崖絶壁にはモアイ像に似た人型の棺が安置されていて、大変神秘的だ。また、最後のインカ皇帝も愛用していた温泉が、今でも使われているという。それらの古代遺跡を訪ねてみようと思い、急峻な山間を地元の人たちと一緒におんぼろバスに揺られて移動し、途中の村に滞在した。
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第3回 ボリビア 「負の遺産」ポトシの劣悪すぎる銀山のツアー
第3回 ボリビア 「負の遺産」ポトシの劣悪すぎる銀山のツアー
昨年、中南米縦断の旅をしていた私が、ちょうど今頃の季節に訪れたのがボリビアだ。いつものようにガイドブックを調べていて、ふとポトシの銀山ツアーが目にとまった。かつて、ポトシを筆頭とするボリビアの鉱山は、おびただしい銀を産出してスペイン帝国の繁栄を支えた。それらの鉱山が枯渇した今でも、錫や亜鉛や天然ガスなどの資源が豊富だという。それを読んで、以前、オーストラリアで参加した金山ツアーを思い出した。坑夫と同じ装備をつけて地下深くもぐり、引退した坑夫のガイドの説明を聞きながら坑道を歩き、電動ドリルで穴を開ける体験までできる、大変面白いツアーだった。今回もぜひ鉱山見学をと思い、「ここからマドリッドまで銀の橋がかけられる」と謳われるほどの埋蔵量を誇ったセロ・リコ銀山のあるポトシを訪ねることにした。
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第2回 色の洪水 南米の春祭り「黒い母」
第2回 色の洪水 南米の春祭り「黒い母」
昨年、半年かけて中南米を縦断した。メキシコ・シティーまで飛行機で飛び、そこから一路南へ下った。メキシコ、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、パラグアイ、そして南米最南端のアルゼンチンのウシュアイアまで、ローカル・バスを町から町へと乗り継いだ。一昨年までに訪れた国が93カ国に達していたので、以前から憧れていた中南米で100カ国を達成したいと考えた。地図を広げてみると、アメリカ大陸を南北に貫く竜骨のような山脈の雄大さに打たれた。是非この土地を体感したいと、縦断を決意した。
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第1回 シリア 親切な人々― 人懐っこい笑顔と警戒心
第1回 シリア 親切な人々― 人懐っこい笑顔と警戒心
今年の6月からdot.フォトギャラリーで3回連載した「旅する主婦 東苑泰子のコンデジ世界紀行」は、好評につき、今月からコラム「地球の旅人 東苑泰子の東遊西撮記」として装いも新たに再スタートすることになりました。写真は引き続きフォトギャラリーに掲載します。地球は広い!これからも私と一緒に世界を見に行きましょう!
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更年期をチャンスに

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女性は、月経や妊娠出産の不調、婦人系がん、不妊治療、更年期など特有の健康課題を抱えています。仕事のパフォーマンスが落ちてしまい、休職や離職を選ぶ人も少なくありません。その経済損失は年間3.4兆円ともいわれます。10月7日号のAERAでは、女性ホルモンに左右されない人生を送るには、本人や周囲はどうしたらいいのかを考えました。男性もぜひ読んでいただきたい特集です!

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学校現場の大問題

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クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

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働く価値観格差

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職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

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