
【参院選・激戦区ルポ】立花孝志氏が泉房穂氏を落とそうと“追っかけ”宣言 「逃げて 逃げて 逃げ回る」混乱の兵庫
安倍元首相の殺害現場で黙祷する立花孝志氏
安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件から3年目の7月8日、現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅前には献花台が設けられ、猛暑の中、朝から献花する人が絶えなかった。そこへ突然現れたのが、参院選兵庫選挙区(改選数3)で立候補しているNHK党の立花孝志党首だった。
「安倍晋三元首相の追悼のために来ました」
と述べた立花氏は、黙祷し、時折涙声になりながら弔意を示した。
この参院選で立花氏は、安倍元首相とつながりが深かったとされる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)からNHK党が支援を受けることを記者会見で認め、
「支援の申し出があった」
と語っている。立花氏の訪問は、安倍氏への追悼だけでなく、教団への配慮も感じさせた。
泉氏の演説後に「私が演説する」
昨年11月の兵庫県知事選で、立花氏は自らの当選ではなく、県議会から不信任決議を受けて知事を失職した斎藤元彦氏に投票を呼びかけるために立候補した。斎藤氏が演説を終えると、その後にすぐさま立花氏が同じ場所でマイクを握り、「斎藤さんは県議にはめられた」などと斎藤氏を援護射撃。SNSも駆使して応援を繰り広げ、斎藤氏は再選。“2馬力選挙”だと問題視された。
今回の参院選兵庫選挙区で立花氏が繰り広げているのは、これとは逆だ。自らの当選とともに、無所属(立憲民主党県連推薦)で立候補している前明石市長の泉房穂氏への批判を展開し、落選させようと攻撃している。泉氏が明石市長を辞職した原因となった市職員へのパワハラを、自身のXなどで何度もとりあげている。
振り返れば、昨年の兵庫県知事選でも立花氏は、ポスターに次のように書いて、斎藤氏を支援するとともに、泉氏を批判していた。
〈前明石市長のパワハラを思い出せ! 本当に前知事は悪人だったのでしょうか?〉
今回の参院選前、立花氏は泉氏と同じ場所で演説をすることをXで宣言した。
〈選挙運動期間に入ったら泉房穂候補の選挙演説の後に私が、選挙演説をしていく予定です!〉
漁船の上から声を上げる泉房穂氏
泉氏の選挙カー写真を掲げ「情報求む」
だが、泉氏は選挙戦初日こそSNSで選挙活動の告知やライブ発信もしていたが、以後は立花氏の動きを察知したのか、街頭演説の日程をオープンにしていない。これにしびれを切らした立花氏は泉氏の選挙カーの写真をXに掲載して、
〈この車の発見情報求む〉
〈逃げて 逃げて 逃げ回る 参議院選挙に立候補している! 泉房穂ちゃん! 泉房穂ちゃんの選挙カー見つけたら、連絡下さい!〉
などと何度もポストしているのだ。
泉氏の陣営では困惑の表情だ。
「昨年の知事選のポスターのこともありますが、泉氏の演説場所に立花氏がやってくると、不測の事態にもなりかねない」
7月5日、神戸市の商店街にある泉氏の選挙事務所から、泉氏は告知なしでいきなり飛び出した。道行く人から、握手や写真を求められ、すさまじい人気ぶりだ。こんな状況では、泉氏と立花氏が鉢合わせしたら、大混乱になる可能性もあるだろう。
「私の悪名はもう広がっている」
泉氏に立花氏について聞くと、
「他の候補者のことは気にしていない。私の選挙戦に影響? (立花氏のことは)知らないし、しゃべったことがないので関係がない。(立花氏のSNSでの批判は)当初から予想されていたことでもある。想定内。SNSはいろんな使い方がある。猛暑が続くので、日程を出すのがいいのかなという思いもある」
と答え、最後にこう語った。
「私の悪名はもう広がっているので、名前を知ってもらうというより、本気度、それを理解してもらう活動をしていきたい」
泉氏と立花氏が激突する時はくるのだろうか。
(AERA編集部・今西憲之)
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兵庫選挙区ではほかに、自民党の加田裕之氏、公明党の高橋光男氏、日本維新の会の吉平敏孝氏、国民民主党の多田ひとみ氏、共産党の金田峰生氏、れいわ新選組の米村明美氏、参政党の藤原誠也氏、社民党の来住文男氏、諸派の浦木健吾氏、諸派の高橋秀彰氏、諸派の前田実咲氏が立候補している。