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【参院選・激戦区ルポ】立花孝志氏が泉房穂氏を落とそうと“追っかけ”宣言 「逃げて 逃げて 逃げ回る」混乱の兵庫
【参院選・激戦区ルポ】立花孝志氏が泉房穂氏を落とそうと“追っかけ”宣言 「逃げて 逃げて 逃げ回る」混乱の兵庫 安倍元首相の殺害現場で黙祷する立花孝志氏  安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件から3年目の7月8日、現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅前には献花台が設けられ、猛暑の中、朝から献花する人が絶えなかった。そこへ突然現れたのが、参院選兵庫選挙区(改選数3)で立候補しているNHK党の立花孝志党首だった。 「安倍晋三元首相の追悼のために来ました」  と述べた立花氏は、黙祷し、時折涙声になりながら弔意を示した。  この参院選で立花氏は、安倍元首相とつながりが深かったとされる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)からNHK党が支援を受けることを記者会見で認め、 「支援の申し出があった」  と語っている。立花氏の訪問は、安倍氏への追悼だけでなく、教団への配慮も感じさせた。 泉氏の演説後に「私が演説する」  昨年11月の兵庫県知事選で、立花氏は自らの当選ではなく、県議会から不信任決議を受けて知事を失職した斎藤元彦氏に投票を呼びかけるために立候補した。斎藤氏が演説を終えると、その後にすぐさま立花氏が同じ場所でマイクを握り、「斎藤さんは県議にはめられた」などと斎藤氏を援護射撃。SNSも駆使して応援を繰り広げ、斎藤氏は再選。“2馬力選挙”だと問題視された。  今回の参院選兵庫選挙区で立花氏が繰り広げているのは、これとは逆だ。自らの当選とともに、無所属(立憲民主党県連推薦)で立候補している前明石市長の泉房穂氏への批判を展開し、落選させようと攻撃している。泉氏が明石市長を辞職した原因となった市職員へのパワハラを、自身のXなどで何度もとりあげている。  振り返れば、昨年の兵庫県知事選でも立花氏は、ポスターに次のように書いて、斎藤氏を支援するとともに、泉氏を批判していた。 〈前明石市長のパワハラを思い出せ! 本当に前知事は悪人だったのでしょうか?〉  今回の参院選前、立花氏は泉氏と同じ場所で演説をすることをXで宣言した。 〈選挙運動期間に入ったら泉房穂候補の選挙演説の後に私が、選挙演説をしていく予定です!〉 漁船の上から声を上げる泉房穂氏 泉氏の選挙カー写真を掲げ「情報求む」  だが、泉氏は選挙戦初日こそSNSで選挙活動の告知やライブ発信もしていたが、以後は立花氏の動きを察知したのか、街頭演説の日程をオープンにしていない。これにしびれを切らした立花氏は泉氏の選挙カーの写真をXに掲載して、 〈この車の発見情報求む〉 〈逃げて 逃げて 逃げ回る 参議院選挙に立候補している! 泉房穂ちゃん! 泉房穂ちゃんの選挙カー見つけたら、連絡下さい!〉  などと何度もポストしているのだ。  泉氏の陣営では困惑の表情だ。 「昨年の知事選のポスターのこともありますが、泉氏の演説場所に立花氏がやってくると、不測の事態にもなりかねない」  7月5日、神戸市の商店街にある泉氏の選挙事務所から、泉氏は告知なしでいきなり飛び出した。道行く人から、握手や写真を求められ、すさまじい人気ぶりだ。こんな状況では、泉氏と立花氏が鉢合わせしたら、大混乱になる可能性もあるだろう。 「私の悪名はもう広がっている」  泉氏に立花氏について聞くと、 「他の候補者のことは気にしていない。私の選挙戦に影響? (立花氏のことは)知らないし、しゃべったことがないので関係がない。(立花氏のSNSでの批判は)当初から予想されていたことでもある。想定内。SNSはいろんな使い方がある。猛暑が続くので、日程を出すのがいいのかなという思いもある」  と答え、最後にこう語った。 「私の悪名はもう広がっているので、名前を知ってもらうというより、本気度、それを理解してもらう活動をしていきたい」  泉氏と立花氏が激突する時はくるのだろうか。 (AERA編集部・今西憲之) *  *  *  兵庫選挙区ではほかに、自民党の加田裕之氏、公明党の高橋光男氏、日本維新の会の吉平敏孝氏、国民民主党の多田ひとみ氏、共産党の金田峰生氏、れいわ新選組の米村明美氏、参政党の藤原誠也氏、社民党の来住文男氏、諸派の浦木健吾氏、諸派の高橋秀彰氏、諸派の前田実咲氏が立候補している。
【参院選・激戦区ルポ】自公がつぶし合う大激戦の兵庫 知名度抜群の泉房穂氏の人気に他陣営は「改選数3だが2議席の奪い合い」
【参院選・激戦区ルポ】自公がつぶし合う大激戦の兵庫 知名度抜群の泉房穂氏の人気に他陣営は「改選数3だが2議席の奪い合い」 第一声を神戸市で挙げた石破首相  参院選が7月3日、スタートした。石破茂首相が第一声を上げたのは、東京でも大阪でもなく、兵庫県神戸市の東遊園地。厳重な警備態勢の中でマイクを握り、 「困った方々に重点的にお払いをする、それが給付金。決してバラマキでもなんでもありません」  と給付金を強調した。  兵庫選挙区は改選数3のところに自民党、公明党、日本維新の会、共産党、国民民主党、れいわ新選組、参政党、社民党、NHK党などの候補が出馬し、3年前の参院選と同じ過去最多となる13人が争う大激戦区だ。  石破首相が第一声の地に兵庫県を選んだことについて、自民幹部はこう話す。 「表向きは阪神大震災、防災を訴えたいという格好です。しかし、あまりに激戦で、改選数3なのに自民が議席をとれないなんてことは絶対にダメ。公明もきつい状況で、自公ともに議席を落としかねない。そこで石破首相がマイクを握った」  公明の斉藤鉄夫代表も神戸市西区で第一声を上げた。兵庫選挙区で現職議員がいる自公両党にとって、議席を失いかねない厳しい選挙戦となっているのだ。 「とんでもない大量得票の可能性」  公明県議は、改選数3だが「2議席を各党で奪い合う構図だ」と言い、こう話す。 「春に参院選出馬を表明した泉さんは、兵庫県内をくまなくまわって十分に態勢を整えて選挙に臨んでいる。抜群の知名度でトップ当選は堅い。80万票とか90万票とか、とんでもない大量得票になるかもしれない」  無所属(立憲民主党県連推薦)で立候補した前明石市長の泉房穂氏が圧倒的だというのだ。  テレビのコメンテーターもしていた泉氏の知名度は高く、確かに泉氏が繁華街に繰り出すと、すさまじい人波にのみ込まれそうになるほどの人気ぶりだ。  そこで泉氏を直撃すると、 「圧勝だ、トップ当選だと言ってくださる方はいますが、まだ始まったばかり。選挙は何が起こるかわかりません」  と慎重な口ぶりだった。  兵庫選挙区は改選数3になった2016年以降、自民、公明、維新が議席を分け合ってきた。16年は自民候補がトップ当選で約64万票、19年は維新候補がトップで約57万票、前回22年は維新候補がトップで約65万票を獲得している。知名度の高い泉氏は、それを上回る大量得票をするのでは、という見立てが多く聞かれる。 知名度は抜群の泉房穂氏 6年前は安倍氏が自公を“はしご応援”  今回改選となる19年に当選した現職の候補は、自民の加田裕之氏、公明の高橋光男氏の2人。6年前は維新の勢いが強く、維新候補の当選は確実視され、実質的に加田氏、高橋氏と立憲民主の女性候補の3人が2議席をめぐって激しく争った。安倍晋三首相(当時)が三宮の繁華街で加田氏を応援した後、100メートルほど離れて待機していた高橋氏のためにもマイクを握るという異例の応援を繰り広げ、高橋氏が約50万票で2位、加田氏が約47万票で3位となり、立憲民主候補の猛追をかわして当選している。  前出の公明県議がこう話す。 「兵庫県内で公明の基礎票は30万票に届かない程度でしょう。兵庫選挙区が改選数3になり、うちが立てるようになってからは、自民からも票が回ってきていた。その段取りをしてくれたのが、元自民幹事長の二階俊博氏。その采配で、高橋氏のために二階氏とその親族が骨を折って業界を集めて講演会を開催してくれ、その票があったから当選できていた。しかし、二階氏は政界引退し、公明党が頼りにしていた二階氏の親族もお亡くなりなった。今回は自民も苦しく、公明独自でやらねばならない。うちにとってある意味、自民党がライバルで、与党同士のつぶしあいという展開にもなりかねない」  では、自民はどうかというと、自民県議がこんな話をする。 「加田氏は裏金で名前が出た旧安倍派議員。昨年の衆院選では裏金で名前が出た大物議員が続々と落選したものの、そろそろ影響は少なくなったかと思っていたが、都議選でも『裏金議員』に対して厳しい結果が出た。活動していても、自民や裏金に対しての有権者の目はまだ非常に冷たいものが感じられる。正直、公明の支援をする余裕はありません」  19年の選挙でトップ当選したのは維新の清水貴之氏。清水氏は昨年11月の兵庫知事選に出馬したため失職し、その後、今回の参院選に出馬の意向を示したが、結局辞退。急きょ新人の吉平敏孝氏が擁立された。維新の県議は、険しい表情で話す。 「現場で活動していると、維新のこれまでのトレンドが、国民民主や参政に変わってしまったように感じます。維新のおひざ元の大阪でも苦戦のようで、兵庫県でもなかなか流れに乗れていない。苦戦です」 参院選にも影響を与えそうな兵庫県の斎藤知事 斎藤知事は「どの候補の応援もしない」  昨年の衆院選から勢いづいた国民民主は新人の多田ひとみ氏を擁立。党勢には陰りも見られるが、労働組合の支援が強固だ。  参政は都議選で議席ゼロから3議席を獲得と急伸し、メディアの世論調査でも支持率を急上昇させている。兵庫では新人の藤原誠也氏を擁立。6月15日の兵庫県尼崎市議選では女性候補がトップ当選を果たし、兵庫県でも波に乗っている。  昨年の兵庫県知事選で斎藤元彦氏(現知事)を応援するために知事選に出馬し、「2馬力選挙」だと問題視されたNHK党の立花孝志氏も立候補した。  いまだに、斎藤知事の一連の問題が大きな影響を及ぼし、県政の混乱が続く兵庫県。 「公務優先で、参院選挙はどの候補者にも応援などはしない」  と、斎藤知事自身は「静観」するという。 *  *  *  兵庫選挙区ではこのほか、共産新人の金田峰生氏、れいわ新人の米村明美氏、社民新人の来住文男氏、諸派新人の浦木健吾氏、諸派新人の高橋秀彰氏、諸派新人の前田実咲氏が立候補している。 (AERA編集部・今西憲之)
維新は吉村代表の進退もささやかれ… 参院選直前なのに「万博と兵庫県知事問題の二重苦」で止まらぬ低迷
維新は吉村代表の進退もささやかれ… 参院選直前なのに「万博と兵庫県知事問題の二重苦」で止まらぬ低迷 維新代表の吉村洋文・大阪府知事  7月3日の参院選公示日を直前にして、日本維新の会の低迷が止まらない。  6月22日投開票の東京都議選では、現職1人を含む6人が立候補し、全員が落選。4年前の都議選で初めて1議席を得た勢いはすでにない。 「昨年の衆院選では東京の比例の得票が50万票を超えて2議席をとり、都議選は期待が大きかった。それがゼロだなんて、奈落の底に突き落とされたようだ」  こう話すのは維新の国会議員A氏。そして、 「維新の支持が上がらない理由は、万博と斎藤知事だ」  とぼやいた。問題が噴出する大阪・関西万博と、維新が支えてきた兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑が、維新の足を引っ張っているというのだ。  維新の代表である大阪府の吉村洋文知事は、都議選さなかに東京で候補者の応援のためマイクを握った。しかし、地元の大阪から離れているせいか、足を止める人はごくわずか。維新陣営のスタッフが、 「吉村知事が演説です」  とチラシをまいて呼びかけるが、反応は乏しく、受け取る人は少ない。  吉村知事が演説を始めても、 「スキャンダルはどうなった?」  と所属議員のスキャンダルが絶えない状況にヤジが飛ぶ。  吉村氏もあまり力が入らないのか、最後は、 「お時間があれば、絶対に損はさせませんので、大阪に来ていただきたい。万博にお越しください」  と選挙応援の場なのに、万博のPRに余念がない様子だった。 「吉村知事は万博のことを都議選でもいろいろ宣伝していた。しかし、東京で万博に興味を持つ人は多くはない。聴衆の中には『何を言ってんだろう』と不思議そうにする人もいました」(A氏) 「大阪の失敗をなぜかぶるんだという不信感」  大阪・関西万博は維新が発案し、誘致から開催まで維新が力を込めてきた。だが、維新と同様に“スキャンダル”が続いている。  海外パビリオンでは工事代金の未払いが次々と発覚。すでに施工主を相手取って、民事訴訟を起こした工事業者もある。6月4日には万博の“ウリ”のひとつ水上ショーが開催されているウォータープラザで指針以上のレジオネラ属菌が検出され、水上ショーは休止に追い込まれた。  都議選で維新陣営のスタッフとして活動していたB氏は、こう話す。 「万博が赤字になれば、税金から国民負担の可能性もある。東京では、大阪の失敗をどうして国民が税金でかぶるんだという不信感が根っこにあると感じます」 藤井寺市議会で謝罪する生田市議 市議会サボって万博で自社製品をPR  そして、万博の場での維新議員の“スキャンダル”まで明るみに出た。大阪府藤井寺市の生田達也市議(大阪維新)が6月6日の市議会を体調不良という理由で欠席したが、その日の万博のイベントに参加している様子を生田氏がSNSに投稿していると、市民から議会に連絡があったのだ。  藤井寺市の幹部はこう説明する。 「最初、生田氏は『午前中は体調がよくなかった』『病院に行った』が、『午後には回復したから万博へ行った』と説明していた。そこで『病院に行った領収書や薬の処方をした証明はあるか』と聞いたところ、行っていないと嘘だったことがばれてしまった」  生田氏が万博に行った日は、藤井寺市の特産品をPRするイベントが開催されていた。市議会で生田氏は、 「その手伝いがしたかったのでウソをついた。正当化するためにウソを重ねた」  などと釈明した。だが、生田氏がPRを手伝った藤井寺市の特産品の中には、食品会社C社のウナギ料理が含まれていた。生田氏はC社の役員に名を連ねている。つまり、自分の会社の製品のPRのために仮病を使って、市議会を欠席していたのだ。  生田氏はこれまでも自社のウナギのPRをしてきた。5月2日のSNSの投稿を見ると、「美陵鰻(みささぎうなぎ)」のポスターとともに吉村知事や岡田一樹藤井寺市長が並ぶ写真を掲載し、 〈なんと!!大阪・藤井寺市を代表する特産品の美陵鰻が吉村大阪府知事の元へ!!中谷大阪府議会議長、岡田藤井寺市長にご同行いただき吉村知事へ表敬訪問させていただきました。吉村知事も「これは美味い!天然の鰻に近い味!!」と絶賛下さいました〉  とC社のウナギを吉村知事に「献上」して、賞味してもらったことを記している。  藤井寺市議会は6月18日、全会一致で生田氏の辞職勧告決議案を可決した。  吉村知事は、 「市議会に虚偽の申告をしたのは許されない」  と語り、大阪維新は17日付で生田市議を除名処分にした。 2021年の兵庫知事選で初当選を目指す斎藤氏(左)を応援する吉村氏 維新のイメージが強い斎藤知事  そして兵庫県の斎藤知事の問題。県の第三者調査委員会が認定したパワハラのほかにも、昨年11月の知事選での公職選挙法違反疑惑、内部告発した元県民局長の個人情報を漏洩させた疑惑など、斎藤知事を巡ってはさまざまな疑惑が噴き出ている。前出の維新陣営スタッフのB氏は、こう話す。 「斎藤知事が初当選の時には維新が応援し、吉村知事が何度も横並びで演説していた。内部告発で斎藤知事の問題が発覚したときも、維新だけは斎藤知事を擁護しているような雰囲気だった。今も維新から処分を受けて離党した県議が斎藤知事をサポートしていて、どうしても斎藤知事は維新のイメージが強い。都議選でも『なぜ斎藤知事の味方をするのか』と街頭で聞かれたこともある」  メディア各社の世論調査で維新の支持率は低調だ。前回22年の参院選で維新は、比例区で自民党に次ぐ8議席を獲得したが、今回の参院選では3から4議席に落ち込むという見方が出ている。また、16年以降の3回の参院選で、維新は地元・大阪選挙区で改選数4のうち2議席を獲得してきた。だが、維新の大阪市議はこう危機感を募らせる。 「活動をしていても維新人気がかなり落ちている。万博や斎藤知事について追及されて、答えに窮することもある。このままでは2人の候補者のうち1人しか当選できないと、先日も幹部からハッパをかけられた。参院選で大負けしたら吉村代表はどうなるのかと、進退の話まで出始めている」  万博、斎藤知事問題の“二重苦”にあえぐ吉村維新。参院選でどのような審判が下るのか。 (編集部・今西憲之)
「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」
「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介)  昨年の衆院選で、当時日本維新の会の政調会長だったにもかかわらず落選した音喜多駿氏(41)が、リベンジを果たすべく7月の参院選に挑む。衆院選は参院からの鞍替え出馬だったこともあり、“出戻り”ではないかと批判が渦巻く中、「筋は通っている」と東京選挙区からの立候補を決めた音喜多氏。維新の支持率が低迷する今、厳しい選挙戦をどうやって勝つつもりなのか。本人への直撃インタビューをお届けする。 *  *  * ――参院選出馬を決めたきっかけはなんですか。  昨年の衆院選で落選してからは、生活費を稼ぐためにシンクタンクで働きながら、草の根で政治活動を続けてきました。「社会保険料引き下げを実現する会」という団体を立ち上げて、勉強会を開いたり、街頭でチラシを配ったり。  知り合いの政治家に政策提言もしてきましたが、外野の立場だと情報が入ってこないし、国会の委員会での質問や議員立法の提出もできない。衆院で自民・公明過半数割れという最大のチャンスに、なかなか物事を進められないフラストレーションがありました。  でも参院選への出馬は悩みましたね。維新内部から、「参院から衆院に鞍替え出馬して落選したのに、議席を取り戻しにくるのか」「今の厳しい党勢は前執行部の音喜多に責任がある。ノコノコ戻ってくるのか」というご意見があったことは事実ですし。  私も当時、「主戦場は衆院だ」「総理を目指す」なんて調子のいいことを言っていたわけで、批判されるのは当然です。ただ、支持率が低迷している今の維新から立候補するのは火中の栗を拾うようなもので、この状況なら私の出馬には筋が通るんじゃないか。そう思い、5月に決断しました。 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介) 吉村代表の行動が、出馬へと腹をくくるきっかけに ――維新の吉村洋文代表からは、どのような言葉をかけられましたか。  これは嘘でもなんでもなく、「戻ってきてほしい」と。社会保障制度改革は吉村さんの肝煎り政策で、二人三脚で実現を目指してきたからだと思います。  5月に東京で開催した「社会保険料引き下げを実現する会」のイベントは、当初、吉村さんに登壇してもらうために大阪で行おうと考えていました。でも吉村さんが、「音喜多さんには参院選を東京で戦ってほしい。そのためにプラスになるなら」と、わざわざ東京に来てくれることになったんです。すごく意気に感じて、出馬へと腹をくくるきっかけになりました。  参院選東京選挙区には自民現職の武見敬三前厚生労働相も出馬することになり、社会保障制度改革が象徴的なテーマになるでしょう。そういう意味でも、私が先頭に立って、政策を主張することが望ましいはずです。 ――衆院選では社会保障制度改革を訴えた結果、落選しました。今回の選挙戦略は。  衆院選は各選挙区から1人しか当選しないので、有権者の大多数から支持を得る必要がありました。一方の参院選は、東京選挙区で今回争う議席数が7ですから、8~9%くらいの得票率で当選します。10人に1人に賛同してもらえばよいので、引き続き「高齢者の方には医療費の窓口負担を3割お願いします」と正直に訴えていきます。  選挙では、人口が多く投票率も高い高齢者を敵に回したら勝てないというのがセオリーで、エッジの利いた訴えだとは思います。演説中に白い目で見られることもあります。でも、「立派なこと言ってるな」と応援してくれた70代くらいのおじいちゃんもいます。高齢者の1割くらいは、若い世代のためならと理解してくださるのではないかと思います。 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介) 政治とカネの問題で、自民の補完勢力だと思われた ――選挙戦の手応えはどうですか。  街頭はともかくネット上では潮目が変わりはじめています。  昨年をターニングポイントに、選挙でのネット戦略の重要性が決定的になりました。社会保険料のテーマはXではかなり盛り上がっていて、次にアピールすべきは、もっとボリュームが大きい動画メディアのユーザーです。減税や財務省陰謀論の動画はバズっているので、社会保険料や厚労省の問題も深刻だと伝えていかなければいけません。 ――維新の歩みを振り返って、現在の低支持率を招いた最大の要因は何だと思いますか。  反対の声もある大阪・関西万博の推進や、斎藤元彦兵庫県知事をめぐる一連の問題への対応など、いろいろとありますが、一番は政治とカネの問題ですよ。政治資金規正法の改正案で、維新は最終的に野党と自民の折衷案のような方向に走り、自民の補完勢力だと思われてしまった。  政治改革大綱を取りまとめたのは、政治改革実行本部の事務局長だった私です。馬場伸幸代表や藤田文武幹事長(いずれも当時)は、政策活動費は残すべきだという意見で、私は彼らが決断したことをサポートするのが役割。自分の仕事に後悔はありません。ただ結果論で言えば、政治資金パーティーも企業・団体献金も、なんなら旧文通費も全部禁止にするくらい踏み込むべきだったと思いますね。 今の維新は「小さくまとまろうとしている印象」 ――最近の維新は離党議員が相次ぎ、党内の求心力も低下しているように見えます。  支持率が物足りないからこそ、議員たちの不満が噴出してまとまりを失っているのでしょう。維新のパーパスは、コメ輸入自由化やライドシェアのような、ある種の極論を打ち出して現状に風穴を開けることだったはず。でも今の維新は、選挙で負けるかもしれない政策を訴えることに慎重な意見が増えて、小さくまとまろうとしている印象です。 2017年7月、北区選挙区で当選が確実の見通しとなり、支援者と万歳する都民ファ-スト現職の音喜多駿氏  維新は元々、目的を達成するためなら議員の職を投げ出してもいいという捨て身の集団でした。母体となる大阪維新の会は、大阪市の財政を立て直すため、70歳以上の市民が市営地下鉄やバスに無料で乗れる「敬老パス」を有料化しました。当時は大バッシングを受けましたが、これこそTHE維新スピリットだと思うんです。  次は国政で社会保障制度改革を進めることで、維新再生の狼煙(のろし)をあげたい。そのためには僕が先兵となって今回の厳しい参院選を勝ち抜いて、党の士気を上げなければいけません。そして再び維新の中枢に入って、立て直しに尽力したいと思います。もし負けたら? それはもう切腹ですね(笑)。 音喜多駿氏(撮影:大野洋介) ――夢は総理大臣でした。あきらめていないのでしょうか。  はい。自分が日本のためだと信じる道を進むためには、頂点を目指すべきだと思っているので。ただ、以前は「49歳までに総理になる」って大見得を切っていたんですけど、衆院選に落ちて今41歳なので、55歳までに下方修正します(笑)。  総理になるためには、戦略の練り直しが必要ですね。現時点では、政権交代が起きても維新が主役になれるビジョンは見えません。とはいえ、改革政党である以上、自公と連立を組んで、大臣の椅子を1個もらって……っていう姿は個人的には違うと思います。参院選で結果を出したら、次は衆院選で野党第1党になったうえで、政権交代を目指すのが維新にふさわしいあり方なんじゃないかな。  (聞き手・構成/AERA編集部・大谷百合絵)   【特集:どうなる?参院選】 ■全選挙区当落予測 【参院選「全選挙区当落予測」つき】東北地方は立憲の圧勝! 東京は「国民」元NHK女性アナウンサーの動向がカギ 【参院選「全選挙区当落予測」つき】京都は舌禍事件あっても「自民・西田氏」が濃厚 和歌山「二階氏の三男」は評価分かれる ■注目候補インタビュー 「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 蓮舫氏「嘘つきという批判にはごめんなさいと言うしかない」 参院選出馬“世間からの猛批判”に何を思うのか 【参院選・新人候補】元関西テレビアナ・新実彰平氏(維新)が目指す政治家は「橋下徹」と「小川淳也」のハイブリッド 【参院選・新人候補】「一人で戦っていない」 タイガーマスク運動の先駆け・河村正剛さんが保守王国・群馬に殴り込み 【参院選・新人候補】オリラジ中田の弟「中田フィッシュ」が「自民党」から出馬するワケ 「僕を選ばなくていいんですか?」と自信 ■各党の選挙戦略 都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 都議選で全員落選「日本維新の会」の厳しい現実…参院選の目標議席は本当に「6」でいいのか? 岩谷良平幹事長に聞いた
“炎上”してもトップ当選? 参院選出馬表明の泉房穂氏 国民民主の玉木代表を怒らせても余裕なワケ
“炎上”してもトップ当選? 参院選出馬表明の泉房穂氏 国民民主の玉木代表を怒らせても余裕なワケ 参院選出馬を表明した泉房穂氏  兵庫県の明石市長を暴言やパワハラなどで退任した泉房穂氏が、退任の際に宣言していた政治家引退を撤回し、今夏の参議院選で兵庫選挙区(改選数3)から立候補することを表明した。もっとも暴言癖は直っていないようで、立候補表明会見やSNSの投稿で国民民主党の玉木雄一郎代表を怒らせ“炎上”。当初、ウラで話がついていたとされる同党や立憲民主党の支援は暗礁に乗り上げた。  泉氏は3月24日に神戸市内で記者会見し、無所属で立候補することを表明。 「国民が苦しい苦しいと言っているにもかかわらず、さらに首を締めてくるような政治は終わらす必要がある。今の永田町に一体どれぐらい本気で国民のことを考えている政治家がいるのか」  などと激しく訴えた。 「魅力的な政党がない」発言に玉木氏がキレた  泉氏の立候補にあたっては、立憲民主党と国民民主党が推薦する形になるとみられていた。実際に記者も、事前に国民民主党の関係者から、 「泉氏が無所属で出馬するが、立民と国民が共同で推薦することが決まっている」  との情報を得ていたし、立憲幹部からも、 「泉さんは勝てる候補。国民と共同で推す」  と聞いていた。  だが、泉氏は無所属で出馬する理由について会見でこう語った。 「魅力的な政党がないからです」  この発言が国民民主党を刺激した。同党の玉木雄一郎代表は28日、Xにこう投稿した。 〈先日の出馬会見を拝見し、あまりにも公党に対する敬意を欠いたものだったため、泉氏への兵庫県連における推薦の検討をとりやめ、国民民主党独自候補擁立の方向で動いています〉  泉氏はSNSで、2023年に玉木氏と会談して、国民民主党の共同代表と衆院近畿ブロック1位での出馬の要請を受け、仮に国民民主が自公と連立政権に入った場合に「少子化担当大臣ポスト」を打診された、などと記載していた。これについても玉木氏は、 〈大臣云々の話は、岸田内閣が泉さんを担当大臣として抜擢したらいいのにという趣旨で申し上げました〉  などと否定。 〈(泉氏の)一連の発信は、日頃、国民民主党を内外から支えてくださっている方々を困惑させかねない非常に失礼なものであり、大変残念に思います〉  と不快感をあらわにした。  泉氏はSNSで玉木氏に向けて、 〈誠に申し訳ありませんでした。私の配慮の欠けた対応により、多大なるご迷惑をおかけしたことにつき、心からお詫び申し上げます〉  と全面降伏し、SNS投稿も撤回。AERAの取材にも、 「いや、あれは反省。言い過ぎた」  と後悔する様子だった。 市職員への暴言で謝罪する市長時代の泉氏(2019年1月) すでに街頭演説は「泉劇場」  泉氏の暴言・放言は今に始まったことではない。明石市長時代の19年、用地買収の遅れをめぐり、市職員に「(建物に)火つけてこい」などと暴言を吐いて辞職に追い込まれた。出直し市長選で圧勝して返り咲いたが、22年10月には市長への問責決議案に賛成する会派の市議2人に、「問責なんて出しやがって。選挙で落としてやる」「問責に賛成したら許せない」などと脅す発言をして問題になり、次の市長選には出ずに政界引退すると宣言した。  市長退任後は大手芸能プロダクションに所属し、コメンテーターなどとしてテレビのレギュラー番組も持つようになっただけに、その人気は揺るがない。街頭演説に行く先では、大きな告知をしなくても50人から100人を超す人が集まってくる。 「魅力ある政党がないと言ってすぐ撤回したけど、許してもらえなくて推薦なくなってしまった。自業自得のことやが、政治家は嘘つきが多い、ほんまのことや」  などと“泉節”をさく裂させると大きな拍手が沸き上がり、「泉劇場」の様相。すでに下馬評ではトップ当選間違いなしといわれる。 維新の元議員に国民民主が打診?  兵庫選挙区は2016年に選挙ごとの改選数が3(定数6)になって以降、自民党と公明党、日本維新の会が、指定席のように議席を獲得してきた。旧民主党系は2013年以降負け続けている。  前出の立憲幹部はこうぼやく。 「選挙までまだ3カ月ほどあります。泉氏は政党の支援を失っても、すぐに挽回するでしょう。逆に、推薦を辞めたうちと国民民主党のほうが、候補者探しで大変です。泉氏ほど強力な候補は見当たらないので、うちはもう新たな候補は探していない」  一方、維新は、昨年11月の兵庫県知事選挙に参院議員を辞職して立候補し、斎藤元彦知事に敗れた清水貴之氏を擁立する見込みだ。しかし、維新の兵庫県連幹部はこんな内情を打ち明ける。 「知事選の時に清水氏が自民党の一部の支援を受けたこともあって、参院選出馬の方針は決まっているが、ずっとくすぶっている状況。最近になって、清水氏が出馬を固辞しはじめたようなことも幹部は言っていました。『政党支持率が高い国民民主党から打診を受けている』という情報が党を駆け巡っています。旧民主党から議席を奪い、守ってきた兵庫選挙区だけに、清水氏にはぜひ維新に残ってほしい。大阪以外で選挙区の議席があるのは兵庫県だけ。負けたら日本維新の会の看板をおろして大阪維新の会になりかねない」 泉氏の推薦をとりやめた国民民主党の玉木代表 自公で1議席を争う「最悪の展開」にも  対する与党。自民党は加田裕之氏、公明党は高橋光男氏と、いずれも現職が立候補を予定している。だが、自民・公明ともに、政党支持率は低落。6年前の19年の参院選でもトップ当選は維新の清水氏で、次が高橋氏。加田氏は立憲の候補に追い詰められ、なんとか振り切った。  この19年の参院選では、兵庫は全国でも屈指の激戦区として注目され、当時の安倍晋三首相が神戸の繁華街で加田氏の応援に入ってなんとか勝利した。自民党県連幹部はこうぼやく。 「昨年の知事選で斎藤知事が圧勝したとき、自民党は、斎藤知事はダメだと反対にまわってコケました。泉氏がぼろ勝ちするのはもうわかっている。なんでもいいからうちが議席をとらないと、石破首相をはじめ国政に影響大なので必死です」  別の自民党幹部はさらに沈痛な表情だ。 「泉氏が出馬したことで、6年前以上に全国的にも注目を集め、マスコミがわんさか入る選挙になるでしょう。ここで自民党が落とせば凋落のシンボルのように報じられる。6年前は安倍元首相の人気で最後は辛くも勝ったが、石破首相にはそのパワーは期待できない。泉氏に無党派層の大半は流れるはずですし、維新は大阪の隣の兵庫なのでなんとか勝ち切るでしょう。残り1議席を連立与党の自民と公明で争うという最悪の展開になりそうです。泉氏が勝てば自民党に対抗する新党作りなどに動いて、さらに追い込まれる」  兵庫選挙区ではこのほか、参政党の新顔、藤原誠也氏も立候補を予定している。 「泉効果で参院も与党過半数割れの可能性」  自民党の政務調査役を長く務めた政治評論家の田村重信氏はこう分析する。 「参院選では自民党と公明党は苦戦模様で、今からの挽回は難しい。人気がある泉氏が非自民のシンボル的に立候補したが、この泉氏効果が全国に波及し、野党が勝つと、参議院でも与党が過半数割れしかねない。そうなると、かつて細川護熙氏が首相になったような政権交代につながりかねない。与党にとって、かなり厳しい選挙となります」 (AERA編集部・今西憲之)
【2024年10月に読まれた記事①】【全選挙区当落予測つき】「二階王国」崩壊か 世耕弘成氏がくら替え当選したら自民党への復党もあり?
【2024年10月に読まれた記事①】【全選挙区当落予測つき】「二階王国」崩壊か 世耕弘成氏がくら替え当選したら自民党への復党もあり? 参院政倫審で質問に答える世耕弘成氏  暮れゆく2024年を、AERA dot.の記事で振り返ります。10月は「【全選挙区当落予測つき】『二階王国』崩壊か 世耕弘成氏がくら替え当選したら自民党への復党もあり?」の記事が特に読まれました(※年齢、肩書等は当時のものです)。 *  *  *  石破茂首相は9日に“裏金議員”12人を非公認にすると発表し、自民党内は大きな混乱に見舞われている。15日の公示を間近に控え、事実上の選挙戦がスタートした。東海・近畿の注目選挙区について、政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に聞いた。 10月11日時点で編集部が把握した、第50回衆議院議員選挙に立候補が予想される候補と、識者2人による当落予測。主要5政党以外から出馬し、当選可能性ありと判断された候補は「その他」の欄に記載した。太字・下線表記の候補は前職。【◎:有利、〇:やや有利、△:当落線上、▲:追い上げれば当選の可能性も】 【東海ブロック】  1日に名古屋市長の河村たかし氏が立候補を表明し、激震が走った愛知1区。河村氏は今回、作家の百田尚樹氏とともに代表を務める政治団体「日本保守党」から出馬する。  角谷氏は、「河村氏はもともと国会議員で、市長時代もたびたび『総理を狙う男』と公言してきた。いよいよ動き出したか」と河村氏は勢いそのままに国政に乗り込む未来を予想する。  河村氏といえば、表敬訪問を受けた五輪選手の金メダルを噛んだり、“愛知県知事リコール署名偽造事件”への関与が疑われたりと、たびたび物議をかもしてきた“お騒がせ市長”だ。それでも、野上氏によると、地元関係者からは「河村は侮れない」という声が聞こえてくるという。 「なんといっても話題性が抜群なんですよ。選挙では、その候補の名前がどれだけ浸透しているかが物を言う面がある。投票所の出口で有権者に取材すると、『良い悪いは分からないけれど馴染みのある名前を書いた』と話す人は少なからずいるものです」(角谷氏) 10月11日時点で編集部が把握した、第50回衆議院議員選挙に立候補が予想される候補と、識者2人による当落予測。主要5政党以外から出馬し、当選可能性ありと判断された候補は「その他」の欄に記載した。太字・下線表記の候補は前職。【◎:有利、〇:やや有利、△:当落線上、▲:追い上げれば当選の可能性も】 維新と公明の接戦となる区はどこ? 【近畿ブロック】  前回の衆院選では、日本維新の会は「大阪都構想」の住民投票実現に向けて協力しあった公明党候補のいる6選挙区(大阪3区・5区・6区・16区と、兵庫2区・8区)には候補者を立てなかった。しかし、今回は「維新vs.公明」の初対決が実現。その行方に熱視線が送られる中、野上氏は、かつて「常勝関西」とまで称された公明の大敗を予想する。 「公明は一時、全敗説までささやかれていた。昨年は池田大作氏が亡くなり、今年は代表の山口那津男氏が退任。ただでさえ学会員の高齢化が叫ばれる中、リーダー二人がいなくなったことは士気に影響します。学会員は選挙のたび、非会員の友人知人に公明党への投票を呼びかけますが、今回は自民党への逆風もあって“F(フレンド)票”は伸び悩むでしょう。とはいえ、公明党発祥の地である大阪には根強い支持者がいるし、維新はかつての勢いを失い、地方選挙で負けが続いている。公明も意地を見せて、全敗はなんとか阻止するのではないか」  角谷氏も「大阪はほぼ維新一色。自民はぺんぺん草も生えないような惨敗」と予想するが、一部の選挙区では公明候補にもチャンスがあるという。 「大阪3区、5区、6区では維新と公明の接戦が予想されます。また、斎藤元彦・元兵庫県知事のパワハラ疑惑の追及で、維新は対応が後手に回って評価を下げたため、兵庫の維新候補は大阪の候補ほど楽はできないはず。対する公明は底力を見せられるか」(角谷氏)   一方、“裏金議員”のいる選挙区として注目されるのが、兵庫9区。自民党派閥のパーティー収入不記載事件をめぐり1年間の党員資格停止処分を受けた、前経済産業相の西村康稔氏の地元だ。  安部派5人衆の実力者は、4月4日の処分直後から地元でのお詫び行脚をスタートした。6日に兵庫県立明石公園で配ったビラには「猛反省し、裸一貫で再出発する覚悟」などとつづられていた。 「徹底したどぶ板選挙が功を奏し、地元では『西村さんは鼻持ちならない印象だったけど、ちゃんと反省するんだね』などと受け入れられているようです。汚名返上で8期連続当選の可能性は十分にあります」  野上氏は当初こう話していたが、10月9日、西村氏が裏金問題への関与により自民党の公認を得られず、無所属で出馬すると報じられると、当落評価を〇から▲に変更した。 「地元からすれば、すっかり威信が地に落ちて先が見えている人に、わざわざ票を入れないでしょう。一部の熱心な自民党支持者は応援してくれても、ある程度の票が維新に流れるかもしれない」  さらに角谷氏は、「前明石市長の泉房穂氏が、立憲候補である橋本慧悟氏の応援に回れば、橋本氏が勝つ可能性は十分ある」と分析する。 世耕氏に「脱法的行為です」と憤る県連  和歌山2区は、保守分裂選挙の様相を呈している。“自民党のドン”こと二階俊博氏が絶対的な力を誇る“二階王国”では今回、二階氏の後継者として三男・伸康氏が自民党の公認を得て出馬する。その対抗馬として名乗りを上げたのが、自民党派閥の裏金事件をめぐる離党勧告処分を受け、党を去った前参院幹事長の世耕弘成氏だ。  無所属でのくら替え出馬という世耕氏の暴挙に、自民党和歌山県連の中村裕一幹事長は「当選したら復党するなどということは、党規をないがしろにする脱法的行為です」と厳しく批判する「談話」を発表。自民関係者の大反発を招いているが、野上氏によると、勝機があるのは世耕氏のほうだという。 「二階氏の体調不良が相次いで報じられ、地元での影響力は落ちてきている。二階離れが進む中、選挙区調整によって区割りも変わり、世耕氏は『今なら勝てる』と読んだのでしょう」  角谷氏も「二階氏は県連における実権を握ってはいるものの、息子の伸康氏のために選挙戦で動き回れるような状態ではない」と、世耕氏優勢の評価だ。  さらに世耕氏が伸康氏を下して当選したあかつきには、世耕氏は再び自民党に迎え入れられる可能性すらあるという。 「議席を少しでも上積みするため、世耕氏を自民党議員として公認する道を選ぶかもしれない。なんといっても、“最後は何でもあり”の自民党ですから」(角谷氏)   (AERA dot.編集部・上田耕司、大谷百合絵) 〉〉【注目選挙区当落予測!】萩生田光一氏、丸川珠代氏…自民の裏金議員は苦戦の東京 混戦の15区・Z世代の新星とは?
【2024年下半期ランキング 政治・社会編8位】折田楓氏より前に斎藤知事から「助けてください」と懇願された選挙コンサルタントの後悔 「こんなことなら私がやればよかった」
【2024年下半期ランキング 政治・社会編8位】折田楓氏より前に斎藤知事から「助けてください」と懇願された選挙コンサルタントの後悔 「こんなことなら私がやればよかった」 折田楓氏(noteより)    2024年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で下半期(7月1日~11月30日)に多く読まれた記事を振り返る。政治・社会編の8位は「折田楓氏より前に斎藤知事から「助けてください」と懇願された選挙コンサルタントの後悔 「こんなことなら私がやればよかった」」(11月29日配信)だった。(※肩書年齢等は配信時のまま) *   *   *  兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事(47)に降って湧いた「公職選挙法違反疑惑」は、いまだに収まる気配がない。発端はPR会社「merchu」代表の折田楓氏(33)が「note」にアップした記事だった。記事は、斎藤氏が同社に知事選での広報戦略全般を“仕事として”依頼したように読める内容だったが、騒動になると折田氏は記事の一部を書き換え、Facebookの投稿をすべて削除した。斎藤氏側も「ボランティアという認識だった」と弁明した。実は、斎藤氏は折田氏に接触する前、別の選挙コンサルタントに「助けてください」と依頼していた。なぜここまで騒動が大きくなってしまったのか。当該の選挙コンサルタントが今回の「問題点」を語った。 「私はひとりぼっちで街頭に立ちます。応援してくれませんか。助けてください」  今年9月末、斎藤氏から電話でこう懇願されたのは、選挙コンサルタントの藤川晋之助氏だ。藤川氏はSNS戦略を駆使して7月の東京都知事選で善戦した石丸伸二氏の選挙参謀を務めるなど、選挙のプロとして名が知られる人物だ。藤川氏はこう振り返る。 「最初に接触があったのは、斎藤さんが初めて街頭に立つ前でした。斎藤さんも頼る人がいなかったのでしょう。私の知り合いの大学教授を通じて、『斎藤さんが困っているので助けてあげてほしい。電話させていいですか』という相談があったんです。私が承諾すると、すぐに斎藤さん本人から電話がかかってきました」  当時の斎藤氏は、パワハラ疑惑などで県議会による不信任決議が可決されたことで失職、裸一貫で出直し選挙に臨もうとしている時だった。まだ世論も味方につけておらず、孤独な戦いを挑むことに不安も大きかったのだろう。 「ほそぼそとした声で、大丈夫かなと思いました。私は『しっかりしてください。あなたは全然悪くないから、大丈夫。同情するわけではないが、あなたのことをパワハラだと言うなら、私だってパワハラの10乗くらいになりますから』などと冗談を言って、私なりに元気づけようとしました」  しかし、この時期は兵庫県知事選に日本維新の会の前参院議員の清水貴之氏が出馬することが取り沙汰されており、藤川氏も“斎藤支援”を約束できる状況ではなかった。 「私も東京維新の会の事務局長を務めた経験がありますので、清水さんが出るとなれば浮世の義理があります。斎藤さんには『清水さんが出馬する場合は、表立って応援できないから』と答えました」 斎藤知事と写る折田楓氏(noteより)   まさかシロウト同然のPR会社に頼るとは…  結局、清水氏は出馬することになり、斎藤氏からの依頼は断ることにしたという。  このエピソードからもわかるように、斎藤氏は9月末の時点で、自分を助けてくれる選挙プランナーをいろいろと探していたようだ。そこで接触していたのが、PR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓社長だった。  斎藤氏の代理人が11月27日の記者会見で語ったところによると、折田氏夫妻と会い、同社事務所を訪れて打ち合わせをしたのは9月29日とのこと。藤川氏に電話があったのは、その前だった。 「私としては、まさか選挙のシロウト同然のPR会社のキラキラ社長に頼るとは思いもしませんでした。結局、こんなつまらないことで足を引っ張られるのであれば、私が(広報戦略を)やってあげれば良かったと思っています」(藤川氏)  折田氏が今回の騒動となる記事をnoteに投稿をしたのは11月20日のこと。「兵庫県知事選における戦略的広報」と題した記事で、「広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います」と書き記し、こうつづっている。 <兵庫県庁での複数の会議に広報PRの有識者として出席しているため、元々斎藤さんとは面識がありましたが、まさか本当に弊社オフィスに起こしくださるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです>(現在はnoteから削除)  そして、テーブルを囲む斎藤氏と折田氏、スタッフと思われる数人との写真を掲載していた。  また折田氏は「ご本人のSNSとは別に」4つのアカウントを立ち上げ、「私のキャパシティとしても期間中全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした」とも記している。  こうした折田氏の投稿は瞬く間に“炎上”。公職選挙法が禁じる「インターネットを利用した選挙運動の対価としての報酬支払い」に該当するのではないかと指摘され、SNSなどで批判が殺到した。  これに対して、斎藤氏の代理人は「(斎藤氏は)SNSの利用についての説明を受けた」が「広報全般を任せたというのは事実ではない」とし、「金銭はポスター、チラシ代など5項目についての71万5000円以外一切ありません」と会見で説明したが、折田氏の投稿とは食い違っている点が少なくない。 選挙コンサルタントの藤川晋之助氏(撮影/上田耕司)   選挙プランナーは「私が全部やった」なんて言わない  一連の投稿について、藤川氏はこう嘆く。 「選挙プランナーは、選挙後に『私が全部やりました』なんていう発言は絶対にしません。何か聞かれても『私はあまりお役に立てていません』と言うものです。それなのに、彼女(折田氏)は自己顕示欲が爆発し、承認欲求を満たそうとしてしまった。これが最大の失敗です。彼女は企業のPRには慣れているかもしれませんが、選挙に携わってきた人ではない。体質が違うんですよ。公職選挙法はとてもややこしくて複雑ですが、そういうことを知らないで発言していたのでしょう」  折田氏は斎藤氏の選挙カーに同乗したり、選挙期間中は斎藤氏にずっと帯同していたとされている。こうした折田氏の動きに関して、藤川氏はこう話す。 「会社の役員や取締役は特別職なので、ボランティアで選挙運動を手伝うのであれば大丈夫です。しかし、会社の従業員まで選挙運動をやって、それに対して社長が給料を払っていたら運動員の買収になってしまいます。仕事として請け負った場合、従業員がポスターを作ったり、チラシのデザインをしたりするのはOKですが、街頭演説の選挙カーの上に乗ったり、写真を撮ってSNSにアップしたりするのは選挙活動となり、グレーゾーンになってしまいます」  この点に関して、斎藤氏の代理人は会見でこう説明している。 「演説会場に社員さんがおられたことまでは確認しているが、その社員さんが何をしていたかは確認できていない。選挙運動には関わっていない」 「PR会社の社員さんが仮に選挙運動に関わっていたとして、PR会社が対価として給料を支払っていたら選挙違反にあたるかというと、それはそうだと思います」  一方、折田氏は県の重要会議のメンバーでもあり、「地域創世戦略会議」「兵庫県eスポーツ推進検討会」「次世代空モビリティひょうご会議」などで委員を務めていた。現職の県会議委員が知事選に関与し、報酬を得ていたことを問題視する声もある。  斎藤氏の代理人によると、「公職選挙法には違反していない。(折田氏は)現在も兵庫県の委員を務めていますが、県とは委託契約で、請負い契約ではありません。(報酬は)3年で約15万円」と説明するが、藤川氏はこう話す。 「彼女は行政にコネクションを持っているのでしょう。県関係の仕事に従事しながら、選挙で特定の候補を応援して報酬をもらうことは、かなりグレーだとは思います。この状況だと、誰かが告訴すれば受理せざるを得ないと思いますが、もし裁判になれば、新たな判例が出るかもしれません」 正々堂々と表に出てくればいい  折田氏はこれまで複数の自治体からPRを任された実績を公表しているが、今回のような騒動の後でも、変わらずにPR活動ができるものなのか。藤川氏はこう指摘する。 「内情について平気でしゃべられたら、クライアントはたまったものではありません。信用を回復するためにも、『私は悪くない』と思っているのであれば、正々堂々と表に出てきて説明すればいいんです。『選挙のことをよくわかっていませんでした。社長個人がボランティアでやっていたので大丈夫だと思っていました。世間をお騒がせして申し訳ありません』と言えばいい。それも言えないのだとしたら、やはり何かあるんじゃないかと疑われても仕方がありません」  そして、最後にこう続ける。 「私は斎藤さんは逸材だと思っているし、3年間ずっと改革を進めてきた。それが評価をされて選挙で民意を得たわけですから、こんなことでダメになるよりは、一日も早く疑惑を晴らして県政に邁進してほしいと思っています」  PR企業のトップとして、民意を得た県知事として、折田氏と斎藤氏の双方に自分の言葉で説明する責任がある。 (AERA dot.編集部・上田耕司)
維新の「最後の切り札」吉村洋文新代表が抱える内部の火種 党内から「前原誠司氏は苦労する」の声
維新の「最後の切り札」吉村洋文新代表が抱える内部の火種 党内から「前原誠司氏は苦労する」の声 維新の新代表に選ばれた吉村洋文氏    10月の衆院選で議席を減らし、馬場伸幸代表が辞任に追い込まれた日本維新の会。12月1日に大阪市内で開いた臨時党大会で代表選の投開票を行い、共同代表である吉村洋文・大阪府知事を新代表に選出した。もっとも、圧倒的な知名度の吉村氏が出馬を表明した時点で、「吉村氏で決まり」という声があがり、代表選は終始盛り上がりを欠いた。維新の議員や党員が投票権を持つが、投票率はわずか42%だった。  臨時党大会の冒頭、あいさつに立った馬場氏は、いきなり愚痴をこぼした。 「とにかくマスコミは、全然この代表選挙、盛り上がっていないとか、埋没してしまっているとか言っていた」  今回の代表選には、吉村氏のほかにも金村龍那衆院議員、空本誠喜衆院議員、松沢成文参院議員が立候補した。4人が代表選に臨むのは過去最多だった。  とはいえ、空本氏は出馬会見で、 「吉村知事が出れば代表選は決まったも同然。無投票は絶対に回避すべき」  と、無投票を避けるための出馬であって、勝ち目がないと認めるほど。  維新内では、立候補に必要な推薦人が集まらない国会議員の候補に推薦人を融通し、なんとか選挙戦の形を作った。  代表選初日は、斎藤元彦知事が失職して再選を目指したことで注目された兵庫県知事選の投開票日と同じ11月17日。吉村氏をはじめ4候補がそろって大阪市内の繫華街に立ったが、聴衆はまばら。  通り過ぎる人たちも、 「(衆院選は終わったのに)なんで今また選挙やってんの?」  と不思議そうだった。  維新の複数の国会議員からは、吉村氏が出馬表明した時点で、 「選挙はやらなくていい。吉村氏が勝つのはわかっている」  という趣旨の話を聞いた。  当の吉村氏は、代表選期間中の11月26日にフランス・パリで開催された博覧会国際事務局の総会に出席し、来年4月開幕の大阪・関西万博のPRのためにスピーチ。  代表選の演説会は大阪以外でも東京、横浜、広島などで行われたが、吉村氏はそんなときでも、 「万博へご来場を」  と大阪万博のPRをする余裕を見せていた。 代表選の街頭演説に繰り出した4候補 メディアは維新代表選より兵庫県知事問題  大阪のメディアも、維新の代表選をあまり大きくとりあげなかった。代表選の投開票日に党大会に来ていた在阪の民放テレビ局の関係者に聞くと、こう話した。 「コロナが大流行した2年ほど前は吉村氏なくして大阪の番組は成立しなかった。けど、今は維新の支持があまりに低調で、テレビに出てもらっても数字があがらない。代表選をやっていること自体が知られていなくて、盛り上がりがない。どうしてもネタが満載の斎藤知事中心の報道になる」  代表選当日には、投票が終わるとさっさと会場を後にする国会議員や地方議員が目立った。吉村氏が新代表に選ばれると、国会議員らから拍手が沸き上がったが、会場には空席が目立ち、しらけた表情の地方議員の姿もあった。 前原氏の「共同代表」に批判の声  結局、吉村氏は投票者の約8割の票を集め、代表に選出されたが、維新が吉村氏のもと一致団結するかというとそうとも言えない。  前代表の馬場氏は11月29日の退任記者会見で、 「私は維新がそんなにひどい状況になっているというふうには思っていません」  と不満を漏らし、辞任に追い込まれた状況に納得できない様子を見せた。  吉村氏は新代表に就任直後の会見で、馬場氏が掲げてきた「全国政党化」について、「現在の(党の)体力から考えても違う」などと方針の修正を表明。馬場氏ら前執行部との距離を感じさせた。  また、吉村氏は国会議員ではないため、国会議員団代表に前原誠司衆院議員を「指名」し、国会議員の両院議員総会で決定した。これにも批判的な声が出ている。  馬場氏に近い維新の国会議員は、こう危惧する。 「前原氏は旧民主党に国民民主党、教育無償化を実現する会などあちこちと党を変わっている。馬場氏など前の執行部とは明らかに距離がある。国会では他党だけでなく、党内でも『是々非々だ』という声がしきりなので、前原氏は苦労するだろう。吉村氏も以前ほどは党内から支持がない。いつ党が割れてしまうのかと思う」 関西広域連合委員会で顔を合わせ、握手を交わす吉村氏(左)と兵庫県の斎藤知事 兵庫県知事への態度豹変に反発の声  さらに、兵庫県の斎藤知事の疑惑をめぐる吉村氏の発言についても、批判の声がある。  吉村氏は、内部告発された疑惑によって斎藤氏に対する批判が噴き出ていたときには、斎藤氏の辞職を求める発言をしていた。だが、斎藤氏が失職後に臨んだ11月の知事選で再選を果たし、知事に返り咲くと、態度を一変。 「すごいですね。脱帽です」  という内容のお祝いメールを斎藤氏に送信したことを明らかにし、11月21日の関西広域連合で斎藤知事と顔を合わせると、駆け寄ってがっちり握手を交わした。  そして11月24日、地域組織の「兵庫維新の会」の会合で、吉村氏は、県議会全会一致の不信任決議で失職した斎藤氏が再選されたことについて、 「県民から見れば、これは議会に対する不信任と同じ。責任をとって自ら解散することは一つの選択肢だ」  という趣旨を伝え、県議会に自主解散も含めた対応を検討するよう求めたことを明らかにした。  この時点で、吉村氏は日本維新の会の代表ではなかったこともあり、兵庫維新の会の地方議員からは、こんな反発の声を聞いた。 「正直、大阪府知事の吉村氏がなぜ兵庫県議会にまで口出しするのか不思議でした。吉村氏自身も斎藤知事に『辞めるべき』と迫っていたのに、斎藤知事が当選したら、今度は県議会に不信任決議を出した責任があるという。大阪の知事には何の関係もない。支持が低迷するので話題作りなのか。ご都合主義だ」  結局、兵庫県の維新県議団は12月3日、吉村氏から提案された「自主解散」を県議会に提案せず、見送ることを決めた。  維新で、圧倒的な知名度と発信力がある吉村氏は「最後の切り札」といわれる。それゆえ方針に多少の不満はあっても、党勢にかげりが出るなか、代表として党をまとめられるのは吉村氏しかいない、というのが維新内部の多くの見方なのだ。 維新の共同代表として、国会で代表質問をする前原誠司氏 党内対立が激化する可能性  維新の国会議員の秘書を務めたこともある政治評論家の藤川晋之助氏はこう話す。 「馬場代表時代は、自公政権とも組む可能性、入閣もありうるような方向性だった。これに対して吉村代表が前原氏を国会議員団のトップに据えたのは、自民党と対峙し、野党共闘に重きを置く考えだろう。もともと馬場氏を中心とする執行部グループと、それに反発する国会グループの対立が今回の代表選の背景にあった。人気抜群の吉村氏が代表になったことで、2つのグループは当面、反旗を翻すことはできない。だが、前原氏らの新執行部がしっかりしたガバナンスをできなければ党内対立が激化する可能性もあり、予断を許さない」  吉村氏はこれから、大阪府知事、国政政党のトップという「一人二役」に加え、万博の主体「博覧会協会」の副理事長と、「一人三役」ともいえる重責を担うことになる。 「全力で走れるところまで走っていく」  と記者会見で語った吉村氏。内部に火種を抱えながら、維新の党勢回復を果たすことができるだろうか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
折田楓氏より前に斎藤知事から「助けてください」と懇願された選挙コンサルタントの後悔 「こんなことなら私がやればよかった」
折田楓氏より前に斎藤知事から「助けてください」と懇願された選挙コンサルタントの後悔 「こんなことなら私がやればよかった」 折田楓氏(noteより)    兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事(47)に降って湧いた「公職選挙法違反疑惑」は、いまだに収まる気配がない。発端はPR会社「merchu」代表の折田楓氏(33)が「note」にアップした記事だった。記事は、斎藤氏が同社に知事選での広報戦略全般を“仕事として”依頼したように読める内容だったが、騒動になると折田氏は記事の一部を書き換え、Facebookの投稿をすべて削除した。斎藤氏側も「ボランティアという認識だった」と弁明した。実は、斎藤氏は折田氏に接触する前、別の選挙コンサルタントに「助けてください」と依頼していた。なぜここまで騒動が大きくなってしまったのか。当該の選挙コンサルタントが今回の「問題点」を語った。 *  *  * 「私はひとりぼっちで街頭に立ちます。応援してくれませんか。助けてください」  今年9月末、斎藤氏から電話でこう懇願されたのは、選挙コンサルタントの藤川晋之助氏だ。藤川氏はSNS戦略を駆使して7月の東京都知事選で善戦した石丸伸二氏の選挙参謀を務めるなど、選挙のプロとして名が知られる人物だ。藤川氏はこう振り返る。 「最初に接触があったのは、斎藤さんが初めて街頭に立つ前でした。斎藤さんも頼る人がいなかったのでしょう。私の知り合いの大学教授を通じて、『斎藤さんが困っているので助けてあげてほしい。電話させていいですか』という相談があったんです。私が承諾すると、すぐに斎藤さん本人から電話がかかってきました」  当時の斎藤氏は、パワハラ疑惑などで県議会による不信任決議が可決されたことで失職、裸一貫で出直し選挙に臨もうとしている時だった。まだ世論も味方につけておらず、孤独な戦いを挑むことに不安も大きかったのだろう。 「ほそぼそとした声で、大丈夫かなと思いました。私は『しっかりしてください。あなたは全然悪くないから、大丈夫。同情するわけではないが、あなたのことをパワハラだと言うなら、私だってパワハラの10乗くらいになりますから』などと冗談を言って、私なりに元気づけようとしました」  しかし、この時期は兵庫県知事選に日本維新の会の前参院議員の清水貴之氏が出馬することが取り沙汰されており、藤川氏も“斎藤支援”を約束できる状況ではなかった。 「私も東京維新の会の事務局長を務めた経験がありますので、清水さんが出るとなれば浮世の義理があります。斎藤さんには『清水さんが出馬する場合は、表立って応援できないから』と答えました」 斎藤知事と写る折田楓氏(noteより)   まさかシロウト同然のPR会社に頼るとは…  結局、清水氏は出馬することになり、斎藤氏からの依頼は断ることにしたという。  このエピソードからもわかるように、斎藤氏は9月末の時点で、自分を助けてくれる選挙プランナーをいろいろと探していたようだ。そこで接触していたのが、PR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓社長だった。  斎藤氏の代理人が11月27日の記者会見で語ったところによると、折田氏夫妻と会い、同社事務所を訪れて打ち合わせをしたのは9月29日とのこと。藤川氏に電話があったのは、その前だった。 「私としては、まさか選挙のシロウト同然のPR会社のキラキラ社長に頼るとは思いもしませんでした。結局、こんなつまらないことで足を引っ張られるのであれば、私が(広報戦略を)やってあげれば良かったと思っています」(藤川氏)  折田氏が今回の騒動となる記事をnoteに投稿をしたのは11月20日のこと。「兵庫県知事選における戦略的広報」と題した記事で、「広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います」と書き記し、こうつづっている。 <兵庫県庁での複数の会議に広報PRの有識者として出席しているため、元々斎藤さんとは面識がありましたが、まさか本当に弊社オフィスに起こしくださるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです>(現在はnoteから削除)  そして、テーブルを囲む斎藤氏と折田氏、スタッフと思われる数人との写真を掲載していた。  また折田氏は「ご本人のSNSとは別に」4つのアカウントを立ち上げ、「私のキャパシティとしても期間中全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした」とも記している。  こうした折田氏の投稿は瞬く間に“炎上”。公職選挙法が禁じる「インターネットを利用した選挙運動の対価としての報酬支払い」に該当するのではないかと指摘され、SNSなどで批判が殺到した。  これに対して、斎藤氏の代理人は「(斎藤氏は)SNSの利用についての説明を受けた」が「広報全般を任せたというのは事実ではない」とし、「金銭はポスター、チラシ代など5項目についての71万5000円以外一切ありません」と会見で説明したが、折田氏の投稿とは食い違っている点が少なくない。 選挙コンサルタントの藤川晋之助氏(撮影/上田耕司)   選挙プランナーは「私が全部やった」なんて言わない  一連の投稿について、藤川氏はこう嘆く。 「選挙プランナーは、選挙後に『私が全部やりました』なんていう発言は絶対にしません。何か聞かれても『私はあまりお役に立てていません』と言うものです。それなのに、彼女(折田氏)は自己顕示欲が爆発し、承認欲求を満たそうとしてしまった。これが最大の失敗です。彼女は企業のPRには慣れているかもしれませんが、選挙に携わってきた人ではない。体質が違うんですよ。公職選挙法はとてもややこしくて複雑ですが、そういうことを知らないで発言していたのでしょう」  折田氏は斎藤氏の選挙カーに同乗したり、選挙期間中は斎藤氏にずっと帯同していたとされている。こうした折田氏の動きに関して、藤川氏はこう話す。 「会社の役員や取締役は特別職なので、ボランティアで選挙運動を手伝うのであれば大丈夫です。しかし、会社の従業員まで選挙運動をやって、それに対して社長が給料を払っていたら運動員の買収になってしまいます。仕事として請け負った場合、従業員がポスターを作ったり、チラシのデザインをしたりするのはOKですが、街頭演説の選挙カーの上に乗ったり、写真を撮ってSNSにアップしたりするのは選挙活動となり、グレーゾーンになってしまいます」  この点に関して、斎藤氏の代理人は会見でこう説明している。 「演説会場に社員さんがおられたことまでは確認しているが、その社員さんが何をしていたかは確認できていない。選挙運動には関わっていない」 「PR会社の社員さんが仮に選挙運動に関わっていたとして、PR会社が対価として給料を支払っていたら選挙違反にあたるかというと、それはそうだと思います」  一方、折田氏は県の重要会議のメンバーでもあり、「地域創世戦略会議」「兵庫県eスポーツ推進検討会」「次世代空モビリティひょうご会議」などで委員を務めていた。現職の県会議委員が知事選に関与し、報酬を得ていたことを問題視する声もある。  斎藤氏の代理人によると、「公職選挙法には違反していない。(折田氏は)現在も兵庫県の委員を務めていますが、県とは委託契約で、請負い契約ではありません。(報酬は)3年で約15万円」と説明するが、藤川氏はこう話す。 「彼女は行政にコネクションを持っているのでしょう。県関係の仕事に従事しながら、選挙で特定の候補を応援して報酬をもらうことは、かなりグレーだとは思います。この状況だと、誰かが告訴すれば受理せざるを得ないと思いますが、もし裁判になれば、新たな判例が出るかもしれません」 正々堂々と表に出てくればいい  折田氏はこれまで複数の自治体からPRを任された実績を公表しているが、今回のような騒動の後でも、変わらずにPR活動ができるものなのか。藤川氏はこう指摘する。 「内情について平気でしゃべられたら、クライアントはたまったものではありません。信用を回復するためにも、『私は悪くない』と思っているのであれば、正々堂々と表に出てきて説明すればいいんです。『選挙のことをよくわかっていませんでした。社長個人がボランティアでやっていたので大丈夫だと思っていました。世間をお騒がせして申し訳ありません』と言えばいい。それも言えないのだとしたら、やはり何かあるんじゃないかと疑われても仕方がありません」  そして、最後にこう続ける。 「私は斎藤さんは逸材だと思っているし、3年間ずっと改革を進めてきた。それが評価をされて選挙で民意を得たわけですから、こんなことでダメになるよりは、一日も早く疑惑を晴らして県政に邁進してほしいと思っています」  PR企業のトップとして、民意を得た県知事として、折田氏と斎藤氏の双方に自分の言葉で説明する責任がある。 (AERA dot.編集部・上田耕司)
斎藤元彦氏再選の裏に「勧善懲悪のストーリー」 「時代劇と同じ」谷口真由美氏が分析
斎藤元彦氏再選の裏に「勧善懲悪のストーリー」 「時代劇と同じ」谷口真由美氏が分析 谷口真由美さん(たにぐち・まゆみ)/1975年生まれ。専門は国際人権法。2023年大阪府知事選に出馬。著書に『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』ほか    兵庫県知事選挙で、前知事の斎藤元彦氏が再選を果たした。なぜ斎藤氏は勝利できたのか。谷口真由美・神戸学院大学客員教授に聞いた。AERA 2024年12月2日号より。 *  *  *  稲村(和美)さんの「斎藤候補と争ったというより何と向き合っているのか違和感があった」という言葉を、そうだろうなと思って聞いていました。 「エコーチェンバー」(意見を発信すると似た意見が返ってくる状況)とか「フィルターバブル」(自身の価値観の中に孤立する情報環境)と言われますが、入り口はわかりやすいストーリーだと思うんです。ストーリーテラーがいかに多くの人々に伝わりやすいストーリーを作り上げたか。時代劇と同じように勧善懲悪ものが受ける。「既得権益」という言葉を使って、どこかにすごく悪い奴がいて、そういう悪い奴らに陥れられたんだというストーリーをうまく作ったということはあるでしょう。そしてアディクション、熱狂の状態を作り出す。新しい手法のようで、実は古来からあるやり方です。  私も大阪府知事選で痛感しましたが、例えば赤信号で1、2分しか足を止めない人たちに、今の現職はこう言ったけどこれはやれていないなどというのは、非常に伝わりにくいんです。 市長の支持はマイナス  今回、兵庫県内の22市長が稲村さんを支持するという異例の表明を出しましたが、あれは大変なマイナスになったと思います。「既得権益」のど真ん中、つまり、悪い奴と簡単に位置づけられてしまう人の集合体が稲村さんを担いでいるように見えた。無所属という立場で出たにもかかわらず、「これだけの人が応援してるんだぞ」ではなくて、「これだけの人のしがらみの中でこの人はやらなきゃいけないんだ」というように見えてしまった。斎藤さんには興味がないけれども、そんな人たちに担がれているならろくでもないやろ、と。一度作られたわかりやすいストーリーは、打ち消す方が難しいんです。 「既得権益」という言葉で維新が大阪で特に批判したのは教員でした。嫌いな先生って誰でも一人は思い出せるから、それをうまく使ったんです。それから公務員。役所で待たされたとかたらい回しにされた経験は、誰もがしている。それ以外の人の溜飲を下げるために、人口の1割いない程度の公務員を叩く。公務員は叩かれても文句が言いづらいから叩きやすい。  非常にわかりやすい敵の作り方だけれど反論しにくい。なぜなら相手の抽象度が高すぎるから。こういうレッテル貼りは、うまくできた時にはものすごく機能するんです。人々は過去の事例や自分の経験則、ネットからの情報をいいあんばいで繋ぎ合わせて、それを真実だと考える。でも現実社会での敵とか味方って、そんなにはっきりしていないものです。  今回、立花孝志さんが斎藤さんを応援するという立場で立候補しました。まさかそんなことをする人はいない、という前提で進んでいた社会がガラガラと崩れているという状況に、法律が追いついていません。法改正も検討するべきだと思います。 (構成/ライター・濱野奈美子) ※AERA 2024年12月2日号  
#折田さん頑張れ! 「兵庫・齋藤元彦知事問題」のヤバさは現代社会を表象している 北原みのり
#折田さん頑張れ! 「兵庫・齋藤元彦知事問題」のヤバさは現代社会を表象している 北原みのり PR会社社長のインスタグラムから。      作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は兵庫県知事選挙と斎藤元彦知事とPR会社社長について。 *  *  *  つばさの党の人たちはまだ塀の中にいるという。  今年4月、東京15区で行われた衆議院議員の補欠選挙中、他陣営の選挙活動を妨害したとして、「つばさの党」の代表らが5月以降に逮捕・起訴され、半年間にわたって勾留されている。「選挙の自由妨害」を犯した公職選挙法違反の罪に問われている。彼らは、小池百合子都知事が現れたら「おい、嘘つき」と呼びかけ、維新の候補者には「大阪ぶっ壊しておいて今度は東京をぶっ壊すつもりか?」とがなり立て、乙武洋匡さんには「不倫はダメだぜヘイヘイヘイ」とふざけ、百田尚樹さんらの日本保守党には「日本を壊した安倍晋三を崇拝して、保守とか言っちゃってる。頭悪すぎ」と一蹴し、れいわの山本太郎さんに対しては「洗脳をするな!」と叫ぶ……傍から見たら乱暴だが、言っていることは「確かに」と思っちゃったりもしたのであった。でも、そういった「本音」を、思うだけではなく、マイクでがなり立て、大騒ぎし、候補者の演説が聞こえなくなるレベルだと逮捕されるのである。公職選挙法とは、かくも厳しい。民主主義の根幹である選挙を守るために、とてつもなく、厳しい。  先の兵庫県知事選挙で「(斎藤元彦陣営の選挙の)広報全般を任された」と公開したPR会社の社長の投稿が今、世間を賑わせている。県庁職員が自死した説明責任を問われるも何ら明らかにならず、日本全国から知事としての資質を問われ、失職して孤立無援状態であった斎藤さんが、有権者の心を次第に掴み、「斎藤さん、頑張れ!!!」の熱狂に包まれていく過程には、自身のPR戦略の成果であることが詳細に記されていた。  社長の投稿には、「SNSを活用して『斎藤知事を応援したい』『兵庫県をよくしたい』という想いをプラットフォーム化し、ムーブメントを起こす!!!  狙い:県民にメッセージを投げかけ、今回の選挙を自分ごと化、さらには応援してもらう」という提案の資料が紹介されている。今回の選挙ではSNSの影響力が大きかったことは、当選後のインタビューで斎藤知事も認めている。それまでメディアで批判される斎藤知事を「ここまでたたかれているのに、なぜ辞めないんだ?」と疑問に思っていた多くの人々が、SNSを通して「斎藤さんはメディアの被害者だったんだ!」と意識が変わっていき、選挙が自分ごとになり、斎藤さんを応援しなければ! と、積極的に演説に足を運び、選挙を盛り上げていくというムーブメントが生まれたのだ。それはそれは、PR会社としては最高の充足感を味わったことだろう。社長の投稿では「選挙は広報の総合格闘技」という名言が残されている。そこには勝者の酔いを感じる。   PR会社社長の投稿したnoteから    感心する。このPR会社の社長さん、優秀である。自分の仕事に忠実で、クライアントに誠実で、努力を惜しまず、アイデアを形にしていく。ネット戦略に長けたこういうPR会社の社長がいたからこそ、斎藤さんは、1カ月前までは誰も想像していなかった快挙を成し遂げたのであろう……などと、私など、素直に感心してしまいそうなのだが……危ない、危ない。SNSなどの広報をお金を払って依頼することは、そもそも公職選挙法に違反することなのであった。知っていましたか? たぶん、フツーの人は知らない。その証拠に多くの人が、このPR会社の社長のXやインスタなどに「お疲れ様でした!」といった好意的なメッセージをリプライしている。  とはいえ……今回のことで明らかになったのは、もしかしたら斎藤さん自身も、公職選挙法、読んでないのではないですか?という大いなる疑問である。読んでいたとしたらすごくヤバく、読まないでやっていたとしてもヤバい。いずれにしても、このような投稿が公開されてしまう超脇甘な背景には、斎藤陣営に、「選挙のルール」の無視/軽視/無知があったということは否めない。今、SNS上では、PR会社の社長が若い女性ということもあり、ミソジニーを交えた批判が飛び交っている。「無能な味方に後ろから刺された斎藤さん」という嘲笑も多く目にする。そして今のところ斎藤さんは、PR会社の社長について「彼女はボランティアの一人」と主張している。先週金曜日にこの件で代理人になった弁護士は、本人が記者会見で認めたように選挙中のことやPR会社社長の投稿を全て把握しているわけではないのに、「(PR会社の社長は)盛っている」と言い切った。SNS上では「籠池される」という言葉も生まれているが、斎藤さん側の言い分が正しいのなら、PR会社の社長は妄想と自己顕示欲が激しいおかしな人……となってしまう。気の毒である。  それにしても一体……2024年ももう少しで終わるというのに、この半年間、私たちはどれだけ兵庫県知事問題にひきずられているのだろう。そしてなぜ、こんなにも斎藤さんを巡る「物語」は、これほどまでに「現代社会」の上澄みをきれいにすくいとって表象してくれるのだろう。  テレビや新聞が斎藤さんをたたけばたたくほど、「斎藤さんが被害者になっていく」方程式。「何が真実かは本当にはわからない=報道は事実ではない」という社会的な空気。今回初めて政治に興味関心を持った(とご本人が記している)高学歴で優秀なPR会社の若い経営者が、政治的な信念ではなく、仕事として広報を引き受ける(とご本人が記している)ことへの軽々しさ。そして選挙のプロであるべき人たちが、ルールを知らずに闘っているらしいこと……そのくらいに、私たちの社会を動かしているのが「よくわからない空気」のようなものであること。  ここまで書いた段階で、斎藤さんの記者会見を見た。記者たちはかなり斎藤さんを追いつめる質問をしていたが、斎藤さんは全ての質問にAIのように「代理人弁護士に一任している」だけを繰り返した。「知事にしか、答えられない質問だから聞く、今、どう思うか?」とった質問にも明解に答えられず、「公職選挙法に違反していないと思う根拠はなにか」という質問にも歯切れがとても悪かった。つまりは、「自分が公職選挙法に違反している認識はないから違反していない」とつぶやき続けているような記者会見だった。  斎藤さんの目は、少しだけ、私には怖い。目がほとんど動かず、人と目をあわせている感じがなく、どんな質問にも同じ声のトーンで答える。何を考えているのかが全くつかめないのに、「高校生からやめないでという手紙が来た」という「感動話」を淡々と語る。今、どういう状況にご自身がいるのかわかっているのだろうか。  今、斎藤さんが語るべきは、「本当のこと」だ。「言えないこと」が積み重なり、「推測すること」が積み重なり、「何が事実かわからない」空気のなかで、政治家に求められるのは、嘘をつかず、責任を果たし、懐の深さを見せ、感情を出し、人々に本当の言葉を届ける人だ。斎藤さんの心のない、責任のない、意味のない記者会見を聞いて強くそう思う。そして全方向で叩かれているPR会社社長の折田楓さん、怖いかもしれないけれど、本当のことを堂々と言ってほしい。#折田さん頑張れ! である。
兵庫・斎藤知事の選挙カーでライブ配信 公選法違反疑惑を浮上させたPR会社・女性社長のSNS戦略の実態を目撃
兵庫・斎藤知事の選挙カーでライブ配信 公選法違反疑惑を浮上させたPR会社・女性社長のSNS戦略の実態を目撃 斎藤知事(右)と並ぶ折田楓氏(折田氏のnoteから) 「斎藤劇場」はまだ終わっていなかった。内部告発を受けての疑惑追及、県議会全会一致の不信任決議を受けての失職、出直し選挙での逆転再選と、劇的な展開の主役だった兵庫県の斎藤元彦知事だが、当選したばかりで、また新たなスキャンダルが浮上。「斎藤劇場第2幕」となりつつある。  発端は、斎藤氏の選挙戦の「勝因」とされているSNSだ。当初、斎藤氏は1人で街頭に立ち知事選に臨んだが、SNSを駆使して支援者が急拡大。選挙戦終盤になると斎藤氏の演説会に支援者たちがあふれ、斎藤コールを繰り返すまでのムーブメントを巻き起こした。そのSNS戦略を手掛けたという人物が“舞台裏”を公表したところ、公職選挙法違反の疑いがあると指摘される事態になっているのだ。 〈広報全般を任せていただいていた〉  斎藤氏のSNSなどを手掛けたことをnoteのブログで公表したのは、兵庫県西宮市のPR会社、merchu社長の折田楓氏だ。 〈兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に〉  というタイトルをつけ、 〈斎藤陣営で広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います〉  と、斎藤氏が当選するまでのSNSなどの広報戦略を細かく公開した。(以下、〈 〉内は折田氏のブログから)  斎藤氏は選挙中に「ひとりぼっち」というフレーズを繰り返していた。2021年の最初の知事選では、自民党と維新の資金と組織のバックアップがあった。しかし内部告発された疑惑追及の中で斎藤氏の対応が不信感を招き、自民、維新を含めた県議会全体から「不信任」とされた。このため、失職後、斎藤氏は組織の支援なく知事選に臨むことになった。そこで斎藤氏が頼ったのが、折田氏の会社だった。 〈とある日、株式会社merchuのオフィスに現れたのは、斎藤元彦さん。それが全ての始まりでした〉 〈お一人から始められた今回の知事選では、新たな広報戦略の策定、中でも、SNSなどのデジタルツールの戦略的活用が必須でした〉 〈ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました〉  斎藤氏の「コピー」戦略については、こう記される。 〈コピーは、以前の「躍動する兵庫」から「兵庫の躍動を止めない!」へ。カラーは、兵庫県旗の色を意識した「兵庫ブルー」をベースとした斎藤さんオリジナルの「さいとうブルー」に一新しました〉 折田氏(右端)の話を聞く斎藤氏(左から2人目)。ブログには「『#さいとう元知事がんばれ』大作戦を提案中」と説明がある(折田氏のnoteから) 斎藤氏のアカウントすべてを〈管理・監修〉  そして、折田氏はSNSで斎藤氏を応援する「公式」アカウントを立ち上げた。 〈斎藤さんへの世の中の見方を変えていく上で重要だったのが、ハッシュタグ「#さいとう元知事がんばれ」です。「#さいとう元彦がんばれ」ではなく、あえて「知事」を入れることで、「さいとうさん=知事」という視覚的な印象づけを狙いました。さらに、「元彦」さんと「元知事」を掛け合わせて、「前知事がんばれ」ではなく「元知事がんばれ」としたのも、こだわったポイントです〉  斎藤氏のSNSの運用としては、X本人アカウント、X公式アカウント、Instagram本人アカウント、YouTubeの4つがあったが、 〈私のキャパシティとしても期間中全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした〉  とすべてを折田氏が手がけていたと明かす。さらに、 〈私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました〉 〈私自身も現場に出て撮影やライブ配信を行うこともありました〉  と、折田氏は斎藤氏の当選のために八面六臂の活躍をしていた様子なのだ。 選挙カーに同乗してライブ配信していた折田氏  実際、記者は斎藤氏の選挙戦で、折田氏の姿を見ることがあった。  選挙戦最終日、神戸で一番の繫華街、三宮の駅前で斎藤氏の最後の演説があったが、青いロングジャケットを着た折田氏は、選挙カーの上で斎藤氏のすぐ横から、スマートフォンを手にSNSで動画をライブ配信していた。  演説を一区切りした斎藤氏は、いったん車を降りて集まった人々と握手を交わし、再度、選挙カーに上がって「アンコール」とばかりに手を振り、ガッツポーズ。折田氏はその瞬間もしっかりと動画で配信していた。選挙カーの上でスマートフォンを操る折田氏のカメラワークを見ていたが、まさにプロを思わせるものだった。 斎藤氏の演説を撮影する折田氏(左下) 「ガッツポーズなどの演出も折田さんの戦略」  斎藤知事を応援していた地方議員はこう話す。 「演説内容や、車を降りてからアンコールで再度、選挙カーに上がり、ガッツポーズするなどの演出も折田さんの戦略の一つと聞いている。斎藤知事はそれを忠実に実行した。従来の斎藤知事陣営の選挙事務所は数人の地方議員などでやっていましたが、ほとんど機能していない。折田さんのSNS運用こそが、斎藤知事の選挙の核でした」  こんな話がある。斎藤氏と縁がある元衆院議員のA氏は、選挙期間中に激励をしようと斎藤氏の選挙事務所に向かった。夕刻の6時過ぎだったが、選挙事務所にはだれもおらず、選対幹部に連絡しても要領を得ない答えだったという。 「午後6時に選挙事務所に誰もいない、戻るかどうかもわからないというのはどういうことなんでしょうね」  とA氏は呆れて引き上げたという。斎藤氏の「選挙事務所」の役割は、実質的には折田氏の会社が担っていたということだろうか。 「私の働きは400人分に見えていたんや!」  SNS戦略で斎藤氏の当選を演出したという折田氏は、誇らしげにこう記している。 〈選挙を終えてみての私の率直な感想は、「選挙は広報の総合格闘技」であるということです〉 〈今回、様々なメディアで「広報・SNS戦略」を誰が手がけているのかについて憶測が飛び交い、「大手広告代理店がやっている」やら「都内のPRコンサルタントが手掛けている」やら本当に都度事実無根の記事が拡散されている〉 〈(当選後に)「400人のSNS投稿スタッフがいた」という次なる「デマ」がさも事実かのように流されてしまい、驚きを隠せないと同時に、「私の働きは400人分に見えていたんや!」と少し誇らしくもなりました。そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです〉 選挙運動への報酬は公選法違反の疑いが  だが、折田氏のあけすけなブログが、スキャンダルの火種となった。  斎藤氏が折田氏の会社に「広報全般を任せて」いたとなると、斎藤氏は発注者として折田さんに金銭を支払っていたか、支払う約束をしていたことになる。  だが、公選法で、選挙中に金銭の支払いが認められているのは、登録された運動員などに限定され、金額の上限も決められている。選挙運動は無報酬のボランティアがするのが原則で、SNS運用などの選挙運動の対価として報酬を支払うと、公選法の買収罪が適用される可能性がある。 斎藤氏の選挙戦最後の演説には、1000人を超す人が集まった    元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、こう話す。 「折田さんのnoteを見ると、選挙コンサルタントのような位置づけで、選挙期間中も斎藤知事側から対価をもらってSNS戦略をやっていたように読めてしまう。それでなければここまで詳しい舞台裏は書けませんよ」  そして、公選法との関係について、こう話す。 「折田さんのブログからも斎藤知事の選挙戦はグレーに映る。金を出した斎藤知事側が買収、折田さんは被買収ともとられかねない」  この記事で引用した折田氏のブログは当初のものだが、折田氏はnoteのブログの内容がSNSなどで「違法では」と指摘され、炎上すると、ブログの書き換えや削除を繰り返し、今は表現が変わったり、読めなくなったりしているところが多い。それがまたSNSで「おかしい」と指摘され、炎上が続いている。  折田氏に話を聞こうと、会社のホームページにあった電話番号に連絡したが応答はなかった。 斎藤氏の弁明と食い違う折田氏のブログ  斎藤氏はこの問題について問われると、 「公職選挙法に反するようなことはない」  とコメント。 「(merchuへは)ポスターやチラシのデザイン料など、法で認められた対価として約70万円を支払った」 「SNS戦略の企画立案などについては依頼していない」  などと説明しているが、明らかに折田氏のブログの内容と食い違っている。  また、斎藤氏は、SNSなどの選挙運動を折田氏が手掛けたことについて、 「ボランティアとして代表が個人で参加した」  とも弁明したが、ボランティアだったとすると別の問題が生じかねない。  折田氏は兵庫県の外部有識者会議「兵庫県地域創生戦略会議」の委員や、「次世代空モビリティひょうご会議」の有識者、「兵庫県eスポーツ推進検討会」の構成員にもなっている。公選法では自治体と「特別な利益を伴う契約の当事者」が、その自治体の長の選挙で寄付をすることを禁じている。折田氏がこの「契約の当事者」であれば、ボランティアが寄付行為とみなされ、公選法違反の疑いが出てくるのだ。  また、19年にリリースされた兵庫県の「ひょうごe-県民アプリ」の開発では、再委託業者として折田氏の会社がアイコンやデザインを手掛けていた。兵庫県の担当者に折田氏の会社への委託料を聞いたが、 「金額についてはお答えできません」  とのことだった。ちなみにこのアプリは12月末で閉鎖が決定している。 「刑事告発も視野に入れている」  前出の郷原弁護士は、 「折田さんが選挙期間中、ボランティアで手伝ったというなら、無償提供として選挙運動資金収支報告書に記載が必要ではないか」  と指摘する。  政治資金問題に詳しく、政治家の告発を続けてきた神戸学院大学の上脇博之教授はこう話す。 「公職選挙法では選挙中のSNS戦略を折田さんが業としてやっていたのはnoteを見れば誰もがわかる。刑事告発も視野に入れている。斎藤知事が公職選挙法違反と認定されれば、公民権停止、失職となりかねません」  斎藤劇場はどのような結末を迎えるのか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
低姿勢で始まった兵庫・斎藤元彦知事の新県政 「職員間の分断」を懸念する声も
低姿勢で始まった兵庫・斎藤元彦知事の新県政 「職員間の分断」を懸念する声も 再選後の就任式で、県職員らの前で花束を受け取る斎藤知事    兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事が11月19日、県庁で再スタートを切った。  パワハラなどの理由で失職に追い込まれた斎藤知事だったが、県職員らを前に、 「県政に関するご心配、ご不安を与えたことをお詫び申し上げたい。仕事はひとりではできません。すべての県庁職員、関係者の支えがあってできている。皆さんへの感謝の気持ち、謙虚な心で、一からやり直していきたい」  と低姿勢であいさつを述べた。  県議会の百条委員会が県職員を対象に実施したアンケートでは、多くの職員が斎藤知事の「パワハラ」や「おねだり」などの疑惑を見聞きしたと答えていた。県議会だけでなく、職員の多くからも「ノー」を突きつけられていただけに、斎藤知事のこれからの県政運営は平たんな道ではないだろう。 斎藤氏の選挙演説の場で小競り合い  今回の知事選は、候補者の争いというより斎藤知事の「不信任」への賛否を問うような選挙になった。そのため、県内に「分断」が生み出された。  選挙戦終盤、斎藤知事の演説の場には、斎藤氏の疑惑を掲げるプラカードを持った「反斎藤」の人たちが多数やってきて、斎藤支持者と小競り合いに発展することがあった。 「パワハラ知事は出るな!」  と訴える人たちに、斎藤氏の支持者から、 「帰れ!」  と罵声が浴びせられたり、プラカードを破った人が警察に拘束されたりと、演説会場が荒れることもしばしばだった。  斎藤知事が「グランドフィナーレ」といい、1千人以上が集まった最後の演説の際は、トラブルを防ぐため兵庫県警の制服警官が大量動員され、プラカードを持った人の周辺をガードし、騒然とした中で行われた。  投開票日の翌18日、兵庫県議会の百条委員会のメンバーだった竹内英明県議が辞職を表明した。同僚議員はこう話す。 「斎藤知事の支援者らによると思われるが、SNSで竹内氏やその家族までを標的にして、脅迫まがいのことが投稿された。家族が精神的に参ってしまい、竹内氏は家族を守るために辞職した」  竹内氏は百条委員会で鋭く的確な質問で知られていた。記者は、何度も取材してきたが、知事選が進むにつれてSNSでの批判のためか元気がなくなり、電話に応答しないこともあった。  辞職後、記者に、 「ご心配をありがとうございます」  というメッセージが届いた。 斎藤知事の再選後の初登庁には支持者らが駆け付けた  SNSでは、竹内氏だけでなく、斎藤知事の疑惑を追及した百条委員会の奥谷謙一委員長や、他の委員らも攻撃を受けている。  SNSで誹謗中傷やフェイク情報が流されたことについて斎藤知事は当選後の会見で、 「誹謗中傷は控えるべき」  と語ったが、時すでに遅しとなっている。 「出世すると斎藤派とみられかねない」  県職員に斎藤知事の再選について聞くと、こんな声があった。 「斎藤知事の『パワハラ』は百条委員会でもほぼ証明されていたと思う。私は実際に、県知事に報告をする場で、斎藤知事がパソコンのマウスをカチカチさせながら、横柄な態度で『それで?』『ふーん』という場面を経験しました。担当の上司が言い返せず黙っていると、『こうしろって言ってないか!?』ときつく叱責された。職員アンケートでは、パワハラだけみても、多くの指摘があった。パワハラがなかった話のわけがない。でも、これから斎藤知事にすり寄っていく斎藤派、距離を置く職員と、県庁も分断されていくのかな。自分では意図しなくとも斎藤知事に重宝され、出世すると斎藤派とみられかねないので嫌な感じだ」 「斎藤新党を作ればかなり集まるはず」  斎藤知事は20日には県議会の各会派にあいさつ回りをし、 「議会とのコミュニケーションを図りながら、よい県政にしていきたい」  と、やはり低姿勢に徹したという。  とはいえ、県議会は9月に全会一致で斎藤知事に不信任を突きつけた。現在、斎藤氏には「与党」がいない状態だ。  これについて、斎藤知事の陣営では斎藤知事の与党となる「斎藤新党」構想が浮上している。斎藤知事の支援者がこう話す。 「自民党でも斎藤知事を影で応援した県議もいた。維新でも同様です。また市議レベルでは、自民党の神戸市議団が斎藤知事の支持を表明してくれた。斎藤新党を結成すれば、かなりの県議や市議が集まるはず。自民党や公明党、立憲民主党はこぞって斎藤知事を追い詰めたので、新党で対抗するのは当然ではないか」 関西広域連合委員会で顔を合わせ、握手を交わす斎藤知事(左)と吉村知事 早々に連携を表明した維新・吉村知事  日本維新の会の共同代表で、現在、代表選を戦っているさなかの吉村洋文大阪府知事は、斎藤氏の疑惑が噴き出ていた9月には、 「間違っていることは間違っていると素直に認めて、辞職すべきだ」  と、斎藤知事に辞職を求めていた。  斎藤知事が失職後の知事選に、維新は参院議員の清水貴之氏(維新を離党して無所属)を斎藤氏の「刺客」として立てたが完敗。  斎藤知事が再選を決めると、吉村知事は態度を変え、 「脱帽です。当選おめでとうございます」  というお祝いメールを送ったことを明かし、 「県民の皆さんが選んだ知事だから、連携していきたい」  と表明した。  そして21日には関西広域連合の会合で、吉村知事は斎藤知事の当選後、初めて顔を合わせ、握手を交わした。  維新の国会議員は、こう話す。 「不信任決議案に賛成した維新が、すぐに党として斎藤知事につくのは難しい。百条委員会の結果次第ではないか。ただ斎藤知事が先に新党に動いた場合は、吉村知事も連携可能とみているようだ」  7月の東京都知事選で元安芸高田市長の石丸伸二氏の「選挙参謀」を務め、石丸氏を2位に躍進させた藤川晋之助氏はこう話す。 「斎藤知事のSNS選挙のもとは石丸氏の都知事選です。石丸氏も斎藤知事の選挙戦、当選、政治姿勢には非常に興味を持ち、一致点も多いので、斎藤―石丸新党は十分にありえる。維新は衆院選、兵庫県知事選でも低迷したまま。吉村知事が2人の新党に加わることも考えられます。既成政党に打ち勝つにはそれくらい大きな仕掛けが必要だ」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
「石丸方式」で兵庫県知事に返り咲いた斎藤元彦氏 支援者たちのSNS使った“推し活”の威力
「石丸方式」で兵庫県知事に返り咲いた斎藤元彦氏 支援者たちのSNS使った“推し活”の威力 兵庫県知事に再選された斎藤元彦氏    パワハラや「おねだり」などの疑惑が告発され、県議会が全会一致で不信任を決議して失職した斎藤元彦前知事が、11月17日の兵庫県知事選で再選を果たした。斎藤氏が当選した原動力は間違いなく、SNSを駆使した選挙戦術にあった。  選挙最終日の16日、斎藤氏は最後の演説を「グランドフィナーレ」と呼び、神戸で最もにぎわう三宮駅前を選んでマイクを握った。  記者は1時間半ほど前に現地に到着したが、すでにSNSのXやインスタグラムで演説を知った人たちが集まり始めていた。そこからみるみる人が増え、車道にも人があふれ出て、駅前に到着するバスがなかなか動けないほどになった。商店街のアーケード2階部分をつなぐ陸橋の上にも人が殺到し、重みで陸橋の中央部が少しゆがみ始めた。 「橋がたわんでいるので、通行禁止です!」  と商店街やビルのスタッフがメガホンで絶叫するが、人の多さで声が届かず、なかなか通行を止められないほど。  斎藤氏が到着した午後6時ころには、集まった人は1千人を超すほどになった。交差点の周囲すべてが人で埋め尽くされ、警察官が通行する人のために、「う回路」を案内せざるをえない状況だった。  かつて同じ場所で、安倍晋三元首相が2019年の参院選で自民党と公明党候補の応援のために演説したときも、同じくらいの人が集まっていた。だがこのときは自民、公明の組織力を使った「大量動員」があった。  斎藤氏には組織的な支援はない。ネットには「サクラ」を疑う情報も流れていたが、斎藤陣営は、 「サクラでこれだけの人を集められるわけがない」  と愚痴っていた。  斎藤氏が選挙カーの演台に上ると、「斎藤さーん」「がんばれー」と声が響く。そして、多くの人が一斉にスマートフォンを取り出し、カメラを斎藤氏に向けて動画撮影を始めた。  斎藤氏の選挙取材で何度もあった男性は、こう話してくれた。 「自分が撮った動画を他の斎藤さんのファンにも提供して、それぞれが切り抜き、ショート動画などでアップする。今ではネット上で親しくなった20人くらいにSNSで渡している。20人の中には北海道の人もいて、有権者は自分しかいないはずです。でもそうやってSNSで展開すれば、全国の人が斎藤さん支持を有権者にアピールすることができます」  マイクを持った斎藤氏は、感に堪えない表情で演説を始めた。 「私が選挙戦を始めたときは1人でした。これだけ多くの方に集まってもらい、信じられない感じです」 斎藤氏の最後の演説を聞く人で三宮駅前は埋め尽くされた 石丸伸二氏の選挙参謀に相談  県議会から不信任決議を突きつけられ、斎藤氏は9月30日に失職した。斎藤氏が選挙プランナーの藤川晋之助氏に電話をかけたのは10月初めのことだ。藤川氏は、7月の都知事選で2位に躍進した前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏の選挙を手掛けた人物だ。  藤川氏は斎藤氏からの電話の内容をよく覚えていると話す。斎藤氏は、こう相談してきたという。 「明日から朝、駅前で立ちます。けどスタッフは2、3人で、何からやればいいのか。ひとりぼっちです」  斎藤氏は、10月から兵庫県内の駅前で「朝立ち」を始めた。スタッフもつけず、一人で駅前に立ってあいさつし、当初は立ち止まる人もほとんどいなかった。JR加古川駅前で朝立ちする斎藤氏の取材に行った際は、大声で「元県民局長は亡くなってる!」と抗議をする人もいた。斎藤氏は、こう話していた。 「(県民から)冷たいというか、刺すような視線がたくさんあった。すごい勢いで内部告発の対応にクレームをつけてくる人がいて、心が折れそうになる」 SNSの情報拡散で変わった風向き  風向きを変えたのはXやインスタグラムといったSNSでの情報拡散だった。都知事選で知名度がなかった石丸氏が大きく躍進したのと同じ戦術だ。  県知事選がスタートすると、斎藤氏の演説会や陣営に、ブルーのTシャツを着たボランティアが増え、首からQRコードのカードをかけ、スマートフォンで読み取るとSNSにすぐに投稿できるのだ。斎藤氏は集まった人たちと記念撮影に応じ、その情報が拡散される。SNSで拡散するよう呼び掛けていたボランティアの1人に聞くと、 「デジタルボランティアです。どこにいても斎藤さんの応援ができます」  と話した。このデジタルボランティアが約400人まで広がり、街頭演説や斎藤氏を応援する動画などをSNSで拡散していった。  記者は文書問題が発覚した3月末に斎藤氏のXをフォローしたが、このときのフォロワーは2万人程度だったと記憶する。だが、当選を決めた11月17日には10倍の20万人を超えるほどに急上昇していた。  ネットには、斎藤氏の疑惑は、斎藤氏を陥れるためのウソで、斎藤氏は県議会やマスコミにはめられた被害者だと根拠不明に断じる情報が多くある。しかし、それらの情報が拡散されるなかで、「悪役」だった斎藤氏のイメージは、「正義の人」に変わっていった。 斎藤氏の演説会に集まった人たち。スマホやカメラで撮影する人が多い 「SNSで政治が変えられる」と“推し活”  最後の演説をした16日の三宮駅前で、斎藤氏の到着を待っていたとき、2人組の女性から声をかけられた。 「都知事選でも会いましたよね。記事、見てます」  7月の都知事選で、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏の選挙のときに取材した人で、埼玉県から来ているという。 「石丸さんの選挙で、ネット、SNSはすごいと感じたんです。SNSで政治が変えられると。石丸さんの選挙が終わって何か物足りないところがあった。衆院選ではネットで玉木さんの国民民主党がいいと、推し活動をしました。そうしたら国民民主党が議席を伸ばしたので、やってよかったと思いました。今度は斎藤さんが盛り上がっていたので、それを推すため、追っかけてきました」  藤川氏によると、SNSを使って選挙を動かす「石丸方式」は、都知事選後も続いているのだという。石丸氏のあと、自民党総裁選では高市早苗氏がSNS戦略をたて、党員票ではトップになった。次に衆院選では玉木雄一郎代表の国民民主党がSNSに力を注ぎ、議席を4倍増にした。 「すべての始まりは石丸君だ。最初に石丸方式が大成功して、参加してくれたボランティアの熱量がますます高くなって『次はだれに』という問い合わせや相談が何度もあった。それが高市氏、国民民主党に流れ、そして斎藤氏だった」(藤川氏)  選挙終盤、斎藤氏にSNSについて聞くと、こう答えた。 「これまでさんざん、悪口もデマも書かれてきた。けど朝立ちにSNSを見て駆け付けてくれる人もいて、威力もわかってきた。前の選挙は政党の支援があり、資金も人もあったが、今回は何の組織もない。数少ないスタッフもSNSを使えばと言っているので流れに任せよう、それに乗って使っていきたい」  17日の当選後の会見では、斎藤氏はSNSのパワーに触れてこう語っていた。 「SNSを通じた選挙戦を、本当にご支援いただきながら広げさせていただいた。もともと、SNSはコメントが厳しかったりで、そんなに好きじゃなかった。やっぱり今回はSNSを通じて、いろんな広がりですね、見ていただいてる方がこんなにたくさんおられる。応援してくれる方がSNSを通じて広がる、プラスの面をすごく感じた」 敗れた稲村和美氏は「何と向かい合っていたのかと違和感があった」と語った 「ネットの影響力、想像していなかった」  一方で、県知事選序盤では優勢と伝えられていたが、斎藤氏に敗れた前尼崎市長の稲村和美氏は、選挙戦の終盤になって、演説でネットに触れることが増えた。 「今回、こんなにネットが影響力をもつと私は想像してませんでした。ネットの中で情報を取られる方がすごくたくさんいらっしゃることを改めて実感しました」  ネットでは稲村氏に関するデマや中傷めいた投稿も多くあった。稲村陣営では、その打ち消しに追われたという。  斎藤氏を“推し活”している2人組の女性に、ネットには間違った情報も流れていることについて聞くと、こう話した。 「斎藤さんのパワハラがゼロとは思わないが、謝っている。マスコミで叩かれるほど悪いのかと思う。SNSでフェイクも出ているが、石丸さんを推して、ある程度、見分けることができるようになった。相手(稲村さん)をバッシングして、ビュー稼ぎの人もいるが、あんなことをすれば斎藤さんが背後にいるというデマが拡散しかねないのでダメです」 斎藤氏と石丸氏で新党構想も  勝利に沸く斎藤氏の陣営で、 「流れに乗って斎藤新党結成という動きもある」  という話を聞いた。  前回の知事選で支援した自民党、維新ともに、県議会で斎藤氏の不信任決議に賛成した。斎藤氏がこれから県政運営をしていくなかで、県議会に基盤がないこともあってだという。  衆院選、知事選と負けが続く、維新の吉村洋文知事もこ斎藤氏の「斎藤新党」に注目しているとの情報がある。  新党といえば、すでにその動きを見せているのが石丸氏だ。藤川氏が言う。 「石丸君が最近、うちの事務所にやってきて、新党構想のことを話した。今回の斎藤氏の当選は石丸方式によるものだ。石丸君に『君がやったことがすべてのはじまりだ』というと、これまであまり興味なさそうだった斎藤氏の躍進に、『そうなんですか。それは楽しみだ。しっかりと研究する』と言っていた。石丸君も斎藤氏も、自民党などとは一線を画してやるという方向性は同じでしょう。2人を結び付け、石丸斎藤新党こそ日本の政治に新たな流れを作れると思っている」  SNSを使った快進撃は、「新党」という、また新たな展開につながっていくのだろうか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
兵庫知事選で斎藤前知事の演説に人が殺到 SNS駆使した選挙戦術でまさかの出直し再選はあるのか
兵庫知事選で斎藤前知事の演説に人が殺到 SNS駆使した選挙戦術でまさかの出直し再選はあるのか 自らの失職による知事選で再選を目指す斎藤元彦氏    兵庫県知事選(11月17日投開票)の選挙戦で、前知事の斎藤元彦氏の集会が盛況だ。そもそも斎藤氏のパワハラや「おねだり」など数々の疑惑が内部告発で噴出し、県議会が全会一致で斎藤氏に不信任決議を突きつけた末の知事選なのだが、なぜか斎藤氏の“追っかけ”のような女性ファンも現れるほどの人気になっている。  告示日の10月31日、斎藤氏は神戸市の繁華街で出陣式を行った。午前9時半頃に斎藤氏が現れると、大きな拍手。若い女性が多く詰めかけているのが目立つ。斎藤氏は選挙前から駅頭などで街頭演説をしていたが、そこに何度も足を運ぶ、斎藤氏の“追っかけ”のような女性もいた。 「今回の文書問題で、県民の皆さまにご心配をおかけして申し訳ございませんでした。前回の知事選挙は多くの政党の支援をいただきました。今回は1人からのスタート。JRの駅で最初に街頭活動した時、自分自身も怖かった。だが、『メディアの報道に負けるな』という声をいただきました。県議会からの不信任決議、いろんな政党、政治家が『斎藤に(知事を)させるわけにはいかない』と、そんな声もあった。斎藤か斎藤以外か。私は絶対に負けるわけにはいかない」  などと斎藤氏が訴えると、大きな拍手が沸き上がった。  出陣式の人出について陣営では、 「1千人とはいかないが、800人くらいは来ているのでは」  と言ったが、スペースの大きさから、せいぜい300人ほどだったろう。それでも悪評が噴き出ていた斎藤氏の出陣に、よくこれだけ人が集まったものだと感じた。 立候補しながら斎藤氏を応援するN党・立花氏  演説後、斎藤氏は自ら掲示板に選挙用のポスターを貼って、選挙カーに乗り込み、次の場所へ移動。するとそのすぐ後に、同じ場所にやってきたのが、「NHKから国民を守る党」党首で、やはり知事選に立候補している立花孝志氏だった。  立花氏は大歓声の中でマイクを持つと、自らへの投票を呼び掛けるのではなく、 「斎藤さん、圧勝しないといけない。斎藤さんは正しいから、謝りませんでした」  などと、斎藤氏への投票を呼び掛けた。 大人数の立候補に備えて急きょ増設された選挙掲示場だが、無駄になった    NHK党は7月の東京都知事選で24人を擁立し、選挙ポスターの枠を、党に寄付した人に事実上販売。このため裸の女性の写真など、選挙に無関係なポスターが大量に張られ、物議を醸した。  兵庫県知事選でも立花氏が記者会見で、 「知事選に10人、候補者を出したい」  と話したことで、県選管は掲示板を増設することになった。  結局、立候補したのは立花氏だけ。しかも、自らの当選ではなく、「斎藤氏をサポートしたい」と選挙運動を繰り広げる。妙な選挙戦だが、その影響力はばかにならない。  立花氏のYouTube登録者数は60万人超。500万回視聴を超える動画もあり、その発信力はすさまじいものがある。斎藤氏と同じ場所で出陣の第一声を挙げることで、斎藤氏の演説に多くの人が集まった可能性がある。  斎藤氏の選挙戦2日目を取材すると、初日と異なり、あまり聴衆がいなかった。出陣式の熱狂は何だったのか。ネットには斎藤氏が演説会の動員にアルバイトを使っているのではないかと疑問視するSNSへの書き込みがあったが、初日は動員をしたのか、それとも立花氏目当てだったのか。 動員が難しい淡路島でも大勢の聴衆  斎藤氏の人気を確かめるため、選挙戦最初の日曜日である11月3日、淡路島での斎藤氏の演説を聞いた。淡路島は人口12万ほどで、離島でもあり、アルバイトなどを動員するのは難しいと思われたためだ。  洲本市のショッピングモール前での斎藤氏の演説には、日曜日でイベントが開催されていたこともあってか、たちまち人が集まってきた。200人ほどはいそうな感じだ。中には洲本市の市議会議長の姿もあった。  次に斎藤氏は「道の駅」近くに場所を移してマイクを持った。聴衆は100人を超えるくらいだが、都市部とは違って車がないと行けない場所で、よくもこれほど集まったと思えた。  普段、演説で感情をあらわにしない斎藤氏だが、このときは力強い言葉で訴えた。 「鋼のメンタルと言われるが、そんなことではない。知事を失職後、街頭活動をはじめた。どういう反応があるのか、日本中が斎藤は悪者、とんでもないという報道が過熱する中で、立ちました。怖かった、石を投げられ、殴られるのかと怖かった。県議会、メディアなど斎藤元彦をひきずりおろそうとするいろんな力に負けないで頑張ります」 斎藤氏(右)の演説を聞く人たち    来ていた人たちに聞くと、多くの人がSNSで演説の情報を得て来たという。  同じ日の夕方、斎藤氏は神戸市北部に移動し、神戸市営地下鉄・名谷駅前に立っていた。斎藤氏がマイクを握ると、商業施設の2階通路まで人で埋まり、大きな歓声がバスターミナルにこだましていた。  ここでは出陣式でも見た人物が数人、確認できた。斎藤氏の訴えに呼応して、絶妙のタイミングで、 「そうだ」  と声をあげるシーンもあった。  動員なのか、熱烈なファンなのか。話を聞こうと思ったが、人込みの中で見失ってしまった。  斎藤氏はSNSを駆使した選挙戦を展開している。LINEアカウントを開設して、写真提供や投稿を呼び掛けている。斎藤氏陣営のボランティアは首からQRコードがついた紙を下げて、LINEへの登録を呼び掛けていた。斎藤氏の演説にも、 「ハッシュタグ、斎藤知事頑張れ、斎藤知事負けるなというトレンドが続いている」  というフレーズがあった。 斎藤氏は「動員はまったくない」  都知事選では、元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏がSNS戦略で支援を広げたが、その戦略とそっくり。聴衆の熱気や雰囲気も似ている。  斎藤氏を直撃して聞くと、こう話した。 「たくさんのご支援はとても嬉しい。(聴衆の)アルバイト動員とか、まったくない。(N党の)立花氏とは面識がなく、こちらから声のかけようもない。SNSはスタッフがやってくれている。石丸氏を意識? いや、わからないが、支援の輪がSNSで広がっているのは、ありがたいことです」  知事選に立候補しているのは、斎藤氏、立花氏のほか、前参院議員の清水貴之氏、前尼崎市長の稲村和美氏、医師で共産党推薦の大沢芳清氏、レコード会社経営の福本繁幸氏、会社経営の木島洋嗣氏。過去最多の7人の争いとなっている。 斎藤氏の演説に集まる人には女性の姿が目立つ 自民党の中からも斎藤氏支援の動き  この知事選で自民党と公明党は自主投票の方針を決めているが、自民党議員らは稲村氏や清水氏、そして斎藤氏を支援する動きを見せている。  稲村氏は、自民党の一部が支援するほか、立憲民主党や国民民主党、連合が支援している。稲村氏の出陣式には自民党の松本剛明元総務大臣や国民民主党の向山好一衆院議員、県内首長や県議らが応援に駆け付けていた。  清水氏は「日本維新の会」を離党しての出馬だが、実際には維新の議員が支援するほか、神戸市の自民党市議団が清水氏を支援する方針を明らかにしている。  そして斎藤氏についても、自民党の明石市議らが支援を表明している。  選挙戦前のメディアの情勢調査などでは、稲村氏、清水氏、そして斎藤氏が、他の候補をリードしているとみられていた。  淡路島で斎藤氏の演説を聞いていた地元市議に聞くと、こう話した。 「聞くところでは、稲村氏がリードしていて、斎藤氏だけはアカンという話だったが、実際に見てみると印象が違う。SNSなどの斎藤氏の人気はヤラセかと思っていたが、淡路島の田舎で動員なんてかけようがない。これはほんまもんかもしれない」  稲村氏の陣営でも、こんな話を聞いた。 「斎藤氏の街頭での人気ぶりは伝わっている。正直、うちが本命という意識はあったが、これはちょっと違う。県民の意識が『斎藤氏は悪人』から、変化しつつある。悪名は無名に勝るや」  自らの疑惑によって失職した斎藤氏だが、ネットを駆使した選挙戦で“石丸旋風”の再来を起こし、まさかの再選を果たすことがあるのだろうか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
斎藤元彦氏の対抗に「不倫辞職議員」宮崎謙介氏の出馬はあるのか 大混戦模様の兵庫県知事選
斎藤元彦氏の対抗に「不倫辞職議員」宮崎謙介氏の出馬はあるのか 大混戦模様の兵庫県知事選 不倫を認めて謝罪し、国会議員を辞職した宮崎謙介氏    斎藤元彦前知事が県議会から不信任を突き付けられ、失職したことに伴う兵庫県知事選は大混戦模様。事前の立候補予定者説明会には、意外な人の名前があった。  10月18日に開かれた兵庫知事選(10月31日告示、11月17日投開票)の説明会には、既に出馬表明した予定候補者7人に加えて、立候補を検討する6人の陣営関係者、計13陣営が出席した。今後も立候補者は増える可能性があり、かつてない大混戦模様だ。  出直しで再挑戦する斎藤氏の陣営からは、説明会に「斎藤」と名乗る人物がやってきた。取り囲んだ記者には「斎藤氏の親族」と話したという。  ほかに出馬表明しているのは、共産党が推薦する医師の大沢芳清氏、尼崎市前市長の稲村和美氏、維新を離党した参院議員の清水貴之氏、加西市元市長の中川暢三氏、元経済産業省官僚の中村稔氏、レコード会社社長の福本繁幸氏の6人だ。  このほか説明会に出席した陣営には意外な名前があった。元衆院議員の宮崎謙介氏だ。  京都3区が地盤で衆院議員を2期務め、妻は元衆院議員でコメンテーターの金子恵美氏。宮崎氏は2016年に週刊文春で「不倫疑惑」が報じられ、事実を認めたうえで議員辞職し、現在はテレビのコメンテーターなどとして活躍している。 「説明会に出席した宮崎氏の代理人という人は、マスコミに囲まれて宮崎謙介氏の代わりにきたと認め、『説明会を聞くためにきた』と言っていた。代理人は宮崎氏の職業欄に、『テレビコメンテーター』と書いていたので、気づいたマスコミが慌てた様子でした」(兵庫県関係者)  宮崎氏は9月に、自身のXに、 〈兵庫県知事の問題では公益通報制度が守られていたかどうかが大きなポイント。覚悟をもって告発した小さな勇気を、大きな権力で捻り潰したのだとしたら私は許せない〉 〈泉さん(房穂・元明石市長)と斎藤さん(兵庫県知事)の差は、圧倒的な民意の支持があるかないか。泉さんは時にパワフル過ぎたけどそれを上回る強烈な可愛げさえ感じる。斎藤知事は首長を辞めた後に道はなかなか開かれにくいだろう。潔さもなければ、他社(注:ママ)への想像力の欠如が絶望的〉  などと斎藤氏の対応に疑問を呈するポストをしていた。 宮崎謙介氏と妻の金子恵美氏 宮崎氏の名前に維新は警戒感  2021年の前回知事選で斎藤氏を推薦した維新は、斎藤氏の疑惑を受けて、批判を受ける立場になった。衆院選の候補者からも「今回の選挙が厳しい情勢なのは、斎藤氏の問題が影響している」と怒りの声が上がっている。  今回の知事選で維新は、元アナウンサーで維新の参院議員、清水氏を擁立すべく動いていた。清水氏は離党して無所属での出馬を表明したが、それでも維新は清水氏の支援にまわるとみられている。  維新の県議は、こう警戒感をあらわにする。 「突然の知事選で短期決戦。清水氏は民放局のアナウンサーで顔が売れていることが大きな理由で出馬が決まった。しかし、今もバリバリ、奥さんとともにテレビに出ている宮崎氏が出るならえらいこと。奥さんの金子氏が応援にくれば、うちは吹っ飛んでしまう」 手慣れた様子でサインに応じる斎藤氏  一方、出直し選挙となる斎藤氏は、衆院選の公示直前まで、兵庫県内の駅前に毎朝7時半から1時間ほど立って、 「おはようございます」「いってらっしゃい」  と挨拶を繰り返していた。  サインを求める人がいると、「お名前は?」と尋ねながら、 〈元兵庫県知事 斎藤元彦〉  と手慣れた様子でペンを走らせていた。  中には、「これで3回目です」と、“追っかけ”のような女性もいて、斎藤知事に手紙を手渡す場面もあった。  斎藤氏はほとんど更新していなかったSNSを選挙戦に向けて“復活”させ、7月の都知事選で2位に躍進した広島県安芸高田市の前市長、石丸伸二氏がかつて登場していたYouTube番組に出演するなど、ネットを活用した運動を進め、「石丸方式」とも呼ばれる選挙スタイルを展開している。  それも影響してか、ネットでは、 〈さいとう前知事がんばれ〉 〈さいとう元彦頑張れ〉  などというキーワードがトレンド入りし、ネットで注目を浴びている。  また、石丸氏の「軍師」だった選挙プランナーの藤川晋之介氏は、 「斎藤氏が失職してまもなく、知人の大学教授の紹介で斎藤氏から電話があった。知事選を助けてほしいという内容だった」  とも明かした。  斎藤氏の選挙を手助けするかどうかについて、藤川氏は、 「私は維新の国会議員秘書もやっていたため、参院議員の清水氏はよく知っている仲だ。まだ斎藤氏の要請に返事をしていない。ただ、私も大阪人で同じ関西なので、石丸氏のときのようにお手伝いをとの思いはある」  と含みを持たせている。 有権者と笑顔で握手をする斎藤氏    街頭に立っていた斎藤氏に「石丸方式」について聞いたところ、 「SNSで発信しますが、(石丸さんのような)戦略的というか、そんな感じではない。流れでやっていくだけ」  といい、ネット選挙の専門家をつけたのかとさらに聞くと、 「いや、ありませんよ」  と話した。 知事選とともに進む疑惑追及の百条委員会  この斎藤氏には、知事選の告示前に“関門”がある。  兵庫県議会の文書問題調査特別委員会(百条委員会)は、斎藤氏らが内部告発された問題の調査を続けている。10月24、25日に開催される委員会では、阪神とオリックスの優勝パレードの寄付金集めの疑惑について追及が予定されている。ただし、知事選に影響を与えないよう考慮して、斎藤氏本人の証人としての出席要請は見送られた。  内部告発では、優勝パレードに必要な金額を寄付で集めようとしたが集まらなかったため、信用金庫への県補助金を増額し、寄付としてキックバックさせたと指摘されていた。AERA dot.編集部の取材では、片山安孝前副知事が、パレード直前に兵庫県内の金融機関に出向いて寄付を要請し、その一方で兵庫県から金融機関へ補助金を約束するという「寄付と補助金はセットだった」という金融機関幹部の証言を得ている。(記事参照) 「内部告発された疑惑の中でも、優勝パレードに伴う寄付金は検察や警察が動く可能性があり、最大の焦点。知事選が終われば、斎藤氏が当選か落選かは別にして、本人を百条委員会に呼んで徹底追及することになる」(自民党の兵庫県議)  AERA dot.編集部が新たに入手した兵庫県の資料に、片山氏の公用車の運行記録がある。  それによると、パレード前日の23年11月21日には、片山氏が公用車を使用し、 〈加古川市加古川町溝之口 往復〉  という記載があり、兵庫県庁から加古川市の但陽信用金庫本店とみられる場所に行っていたことがわかる。  但陽信用金庫もその日に片山氏が、 「直接、本店に来られ優勝パレードの寄付を依頼された」  という趣旨をAERA dot.編集部の取材に認めている。  また、内部告発を知った斎藤氏に告発者探しを依頼された片山氏が、元西播磨県民局長に対して、 「何言うとんねん、お前、(内部告発を)作った覚えないと言い張るんか」 「最後まで知らんて言い張る? 嫌疑かけとんや」  などと恫喝のような事情聴取をしていたことが百条委員会で問題になった。  片山氏が問題の恫喝の日、3月25日の朝8時50分に公用車を使い、 〈上郡町光都 往復〉  という西播磨県民局の所在地に言った記録も資料にはある。  斎藤氏や片山氏らの動きを証明する材料は、百条委員会にも集まってきている。 「知事選が終われば(百条委員会で)手を緩めず徹底的にやるしかない。万が一、斎藤氏が知事に再度、当選しても同じや」(自民党県議)  斎藤氏には、知事選とともに、百条委員会の審判が待ち受けている。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
衆院選で逆風の維新 吉村知事がテレビ出演で泉房穂氏に撃沈したのが支持低迷の要因?
衆院選で逆風の維新 吉村知事がテレビ出演で泉房穂氏に撃沈したのが支持低迷の要因? 衆院選の応援演説をする日本維新の会共同代表の吉村大阪府知事   「自民党の裏金作る政治、どうやって日本をよくするのか。(議員という)身分を守りたいのでしょう。維新は比例重複を認めず、やっていく」  衆院選初日の10月15日、大阪市内でマイクを握った日本維新の会の共同代表でもある大阪府の吉村洋文知事が訴えた。 その数日前、 「これまでの選挙では比例の『保険』なんてどうでもええと思っていた。今回だけは欲しいと願っていたら、小選挙区の単独と決まった……」  と困惑していたのは、大阪府内で複数回当選を重ねてきた日本維新の会の前衆院議員A氏だ。  日本維新の会は8日、今回の衆院選で、大阪府内の全19選挙区のうち、擁立が決まったばかりの大阪9区の新人を除く18選挙区の候補者について、比例近畿ブロックへの重複立候補を認めないと発表し、名簿を公表した。  A氏の事務所で話を聞いたが、パソコン画面には吉村知事の会見動画が映し出されていた。  動画の中の吉村知事は、 「大阪のメンバーは背水の陣で、厳しい状況で自民党、公明党とぶつかっていく。それぞれ(候補者は)腹くくっていると思う」  と険しい表情で語っていた。 「維新も自民党も変わらない」  2021年の衆院選、22年の参院選、23年の大阪府知事選、大阪市長選を含む統一地方選と、大阪や近畿の選挙で連戦連勝を重ね、近畿圏以外へも党勢を拡大してきた維新。しかし、今年になって風向きが変わってきた。地元大阪で今年4月には大東市長選、8月には箕面市長選と連敗し、市議補選、府議補選でも勝てなくなっている。  その理由をA氏はこう説明する。 「総論として、橋下徹氏が大阪府知事時代の2010年に大阪維新を結成して大阪では14年、国政に進出してからは10年ちょっとになる。いろいろ改革をして、有権者にも一定程度、認められている。しかし、府民・市民にはよくなったという生活実感があまりなく、『維新も自民党もどっちも変わらない』という話を聞かされることがある」 万博会場を視察する吉村知事(中央) 低迷の要因は「万博」「兵庫県知事」「テレビ」  A氏は低迷した具体的な要因として、25年4月に開催される大阪・関西万博、兵庫県の斎藤元彦前知事の「悪名」、そしてテレビの3つをあげた。  万博は、費用が膨れ上がる問題だけでなく、工事が遅れ、ガス爆発事故が発生し、海外のパビリオンが撤退し、前売りチケット販売は低迷するなど、マイナスのニュースが流れることが多い。  最近も、日本国際博覧会協会(万博協会)の方針に、批判が殺到した。近畿6府県は万博に子どもを無料招待する事業の実施を決めている。学校の先生は児童・生徒を引率するために事前に会場の下見が不可欠だが、下見をした後に引率が難しいなどと判断して来場を取りやめたときには、万博協会がその入場券代を学校側に請求する方針だということが報じられ、あまりに理不尽な対応だと批判の声があがったのだ。大阪府交野市の山本景市長は7日に会見を開いて、子どもの無料招待事業の中止を求めた。  これに対して協会の副理事長でもある吉村知事は10月9日の会見で、 「下見の結果、(万博に)行かないと判断することもありえる。入場料の請求は間違っている」  と火消しに走らざるを得なかった。  2つ目は、維新が知事選で推薦した斎藤前知事がパワハラや「おねだり」など数々の疑惑を内部告発され、兵庫県議会から不信任決議を可決され失職した問題だ。  吉村知事は箕面市長選で維新の現職市長が惨敗した後、選挙戦の応援に入った際に、 「『維新を応援しているんだけど、斎藤さん、おかしいんじゃないか』と言われました」  と、斎藤前知事の問題が箕面市長選や維新の支持急落に影響しているという見方を示していた。  3つ目の「テレビ」は、吉村知事のテレビ出演が激減したことだ。  新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった20年から、関西の民放テレビ局では連日のように、吉村知事を登場させていた。当初はニュース関連で話を聞いていたが、いつしかワイドショーやバラエティーにも出演。 「吉村知事がテレビに出ると、視聴率が一気にアップする。知事なので、ギャラはいらない。コロナのせいで番組制作が苦しくなっていたテレビ局にとって、本当にありがたかった。吉村知事にとっても、大阪府や維新のPRになるという思いもあって、積極的に出演してくれたはず」  と大阪の民放局幹部は話す。 箕面市長選の応援演説をする吉村知事(右) 吉村知事にかわって泉房穂氏がテレビ出演  だが、コロナ禍が縮小して行動制限がなくなるのと歩調を合わせるように、吉村知事をテレビで見る回数はすっかり減った。  とって変わるようにテレビで見ることが増えたのが、兵庫県明石市の前市長、泉房穂氏だ。泉氏は自民党にも維新にも容赦ないコメントで知られ、衆院解散後も明石と大阪、東京を駆け回ってメディア出演を続けている。  泉氏は取材に対してこう話す。 「私がワイドショーなどに呼んでもらっているのは、出ると数字が跳ねるからだと聞かされています」  先の民放局幹部も、こう言った。 「いま、いちばん視聴率、数字がとれるのは泉さん。衆院の解散・総選挙もあって、維新の吉村知事は出しにくい。それに数字も泉さんの方が明らかにアップして、吉村知事は伸びにくくなった」  冒頭の維新のA氏は、こう話す。 「自民党や公明党のような強固な組織の支援がない維新にとって、テレビの威力はすごいものがありました。これまで選挙で勝てたのも、人気のある吉村知事がテレビに出まくっていたのが追い風になっていた。しかし、万博関連での批判や、維新議員の不祥事での謝罪、とりわけ兵庫県の斎藤前知事の疑惑と、対応に追われることばかり。テレビ出演で吉村知事が泉氏にこれまでの立ち位置をとられてしまったことも維新低迷の理由でしょう」 維新の参院議員が無所属で知事選出馬へ  斎藤氏の失職に伴う兵庫県知事選は11月17日に投開票が予定されている。維新は、独自候補として維新の参院議員、清水貴之氏を知事選に擁立するはずだった。だが、清水氏は立候補表明の記者会見でこう言ったのだ。 「維新の会でずっと活動してきたが、本当に兵庫県が全国的に悪い印象を与えてしまった。無所属で立候補する」 吉村知事に代わるようにテレビ出演が増えている泉房穂氏    清水氏は維新からの推薦も支援も受けない方針だという。要は、斎藤氏の「悪名」とともに、推薦した維新も評判を落としたため、 「維新から出馬しても勝てない可能性が大」(維新の兵庫県議)  と判断したのだ。 「大阪で維新は自民党以上の逆風」  すっかり色あせつつある、維新の看板。維新の国会議員の秘書経験もある選挙プランナ―の藤川晋之介氏は次のように語る。 「大阪の小選挙区で比例重複なしというのは、思い切った戦略だ。衆院選は全国的には自民党に逆風とみられる。しかし、維新は発祥の地の大阪で、自民党以上に逆風とも聞く。事実、清水氏は維新でなく無所属で出馬する。総選挙でも風向きが悪いと、関東や東海などで急に維新からの立候補を取りやめた予定者がいた。維新が前回の衆院選で獲得した41議席を維持するのはかなり難しいだろう」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
【全選挙区当落予測つき】「二階王国」崩壊か 世耕弘成氏がくら替え当選したら自民党への復党もあり?
【全選挙区当落予測つき】「二階王国」崩壊か 世耕弘成氏がくら替え当選したら自民党への復党もあり? 参院政倫審で質問に答える世耕弘成氏  石破茂首相は9日に“裏金議員”12人を非公認にすると発表し、自民党内は大きな混乱に見舞われている。15日の公示を間近に控え、事実上の選挙戦がスタートした。東海・近畿の注目選挙区について、政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に聞いた。 *  *  * 10月11日時点で編集部が把握した、第50回衆議院議員選挙に立候補が予想される候補と、識者2人による当落予測。主要5政党以外から出馬し、当選可能性ありと判断された候補は「その他」の欄に記載した。太字・下線表記の候補は前職。【◎:有利、〇:やや有利、△:当落線上、▲:追い上げれば当選の可能性も】 【東海ブロック】  1日に名古屋市長の河村たかし氏が立候補を表明し、激震が走った愛知1区。河村氏は今回、作家の百田尚樹氏とともに代表を務める政治団体「日本保守党」から出馬する。  角谷氏は、「河村氏はもともと国会議員で、市長時代もたびたび『総理を狙う男』と公言してきた。いよいよ動き出したか」と河村氏は勢いそのままに国政に乗り込む未来を予想する。  河村氏といえば、表敬訪問を受けた五輪選手の金メダルを噛んだり、“愛知県知事リコール署名偽造事件”への関与が疑われたりと、たびたび物議をかもしてきた“お騒がせ市長”だ。それでも、野上氏によると、地元関係者からは「河村は侮れない」という声が聞こえてくるという。 「なんといっても話題性が抜群なんですよ。選挙では、その候補の名前がどれだけ浸透しているかが物を言う面がある。投票所の出口で有権者に取材すると、『良い悪いは分からないけれど馴染みのある名前を書いた』と話す人は少なからずいるものです」(角谷氏) 10月11日時点で編集部が把握した、第50回衆議院議員選挙に立候補が予想される候補と、識者2人による当落予測。主要5政党以外から出馬し、当選可能性ありと判断された候補は「その他」の欄に記載した。太字・下線表記の候補は前職。【◎:有利、〇:やや有利、△:当落線上、▲:追い上げれば当選の可能性も】 維新と公明の接戦となる区はどこ? 【近畿ブロック】  前回の衆院選では、日本維新の会は「大阪都構想」の住民投票実現に向けて協力しあった公明党候補のいる6選挙区(大阪3区・5区・6区・16区と、兵庫2区・8区)には候補者を立てなかった。しかし、今回は「維新vs.公明」の初対決が実現。その行方に熱視線が送られる中、野上氏は、かつて「常勝関西」とまで称された公明の大敗を予想する。 「公明は一時、全敗説までささやかれていた。昨年は池田大作氏が亡くなり、今年は代表の山口那津男氏が退任。ただでさえ学会員の高齢化が叫ばれる中、リーダー二人がいなくなったことは士気に影響します。学会員は選挙のたび、非会員の友人知人に公明党への投票を呼びかけますが、今回は自民党への逆風もあって“F(フレンド)票”は伸び悩むでしょう。とはいえ、公明党発祥の地である大阪には根強い支持者がいるし、維新はかつての勢いを失い、地方選挙で負けが続いている。公明も意地を見せて、全敗はなんとか阻止するのではないか」  角谷氏も「大阪はほぼ維新一色。自民はぺんぺん草も生えないような惨敗」と予想するが、一部の選挙区では公明候補にもチャンスがあるという。 「大阪3区、5区、6区では維新と公明の接戦が予想されます。また、斎藤元彦・元兵庫県知事のパワハラ疑惑の追及で、維新は対応が後手に回って評価を下げたため、兵庫の維新候補は大阪の候補ほど楽はできないはず。対する公明は底力を見せられるか」(角谷氏)   一方、“裏金議員”のいる選挙区として注目されるのが、兵庫9区。自民党派閥のパーティー収入不記載事件をめぐり1年間の党員資格停止処分を受けた、前経済産業相の西村康稔氏の地元だ。  安部派5人衆の実力者は、4月4日の処分直後から地元でのお詫び行脚をスタートした。6日に兵庫県立明石公園で配ったビラには「猛反省し、裸一貫で再出発する覚悟」などとつづられていた。 「徹底したどぶ板選挙が功を奏し、地元では『西村さんは鼻持ちならない印象だったけど、ちゃんと反省するんだね』などと受け入れられているようです。汚名返上で8期連続当選の可能性は十分にあります」  野上氏は当初こう話していたが、10月9日、西村氏が裏金問題への関与により自民党の公認を得られず、無所属で出馬すると報じられると、当落評価を〇から▲に変更した。 「地元からすれば、すっかり威信が地に落ちて先が見えている人に、わざわざ票を入れないでしょう。一部の熱心な自民党支持者は応援してくれても、ある程度の票が維新に流れるかもしれない」  さらに角谷氏は、「前明石市長の泉房穂氏が、立憲候補である橋本慧悟氏の応援に回れば、橋本氏が勝つ可能性は十分ある」と分析する。 世耕氏に「脱法的行為です」と憤る県連  和歌山2区は、保守分裂選挙の様相を呈している。“自民党のドン”こと二階俊博氏が絶対的な力を誇る“二階王国”では今回、二階氏の後継者として三男・伸康氏が自民党の公認を得て出馬する。その対抗馬として名乗りを上げたのが、自民党派閥の裏金事件をめぐる離党勧告処分を受け、党を去った前参院幹事長の世耕弘成氏だ。  無所属でのくら替え出馬という世耕氏の暴挙に、自民党和歌山県連の中村裕一幹事長は「当選したら復党するなどということは、党規をないがしろにする脱法的行為です」と厳しく批判する「談話」を発表。自民関係者の大反発を招いているが、野上氏によると、勝機があるのは世耕氏のほうだという。 「二階氏の体調不良が相次いで報じられ、地元での影響力は落ちてきている。二階離れが進む中、選挙区調整によって区割りも変わり、世耕氏は『今なら勝てる』と読んだのでしょう」  角谷氏も「二階氏は県連における実権を握ってはいるものの、息子の伸康氏のために選挙戦で動き回れるような状態ではない」と、世耕氏優勢の評価だ。  さらに世耕氏が伸康氏を下して当選したあかつきには、世耕氏は再び自民党に迎え入れられる可能性すらあるという。 「議席を少しでも上積みするため、世耕氏を自民党議員として公認する道を選ぶかもしれない。なんといっても、“最後は何でもあり”の自民党ですから」(角谷氏)   (AERA dot.編集部・上田耕司、大谷百合絵) 〉〉【注目選挙区当落予測!】萩生田光一氏、丸川珠代氏…自民の裏金議員は苦戦の東京 混戦の15区・Z世代の新星とは?
斎藤元彦氏はSNS展開の「石丸方式」で出直し知事選に 候補者乱立で“漁夫の利”当選の可能性も
斎藤元彦氏はSNS展開の「石丸方式」で出直し知事選に 候補者乱立で“漁夫の利”当選の可能性も 出直し知事選への出馬を表明した記者会見での斎藤元彦氏=9月26日    斎藤元彦前知事の失職に伴う兵庫県知事選には、すでに数人が名乗りを上げており、今後も増える可能性がある。そうしたなか、斎藤氏が早くも動き出したようだ。朝の駅前での“あいさつ”からSNS展開まで、選挙を見越した動きに余念がない。候補者が乱立すれば斎藤氏が利するとの見方もあるが、戦々恐々と状況を見守る県職員もいる。  10月3日朝、激しい雨が降る中、兵庫県のJR芦屋駅前のデッキで、「おはようございます」と頭を下げていたのは、前県知事の斎藤氏だ。内部告発問題をきっかけに県議会で不信任決議が可決され、出直し選への立候補を表明したうえで失職。31日告示、11月17日投開票の知事選に出馬を表明している。  朝の出勤や通学途中の市民の中には、斎藤氏にツーショット写真や握手を求める人や、「頑張って」と声をかけていく人もいる。演説が終わり、テレビカメラに囲まれた後、「ありがとうございました」と感謝を述べると30人ほどの聴衆から拍手が起きた。 「この人がパワハラしたのかな?」 「この人がパワハラしたのかな。そう思えない」という聴衆もいた。県議会では終始、強張った表情だった斎藤氏だが、このときばかりはご満悦とばかりに去っていった。  斎藤氏の脇には地元市議もいて、選挙に向けた態勢を組んでいるのは明らかだった。  知事選には、日本維新の会の清水貴之参院議員、共産党が推薦する医師の大沢芳清氏、元経済産業省の官僚・中村稔氏、前尼崎市長の稲村和美氏ら複数人が立候補を表明したり、意向を示したりしており、今後も増える可能性がある。現職の小池百合子知事が3選を果たした今年7月の都知事選では、過去最多の56人が立候補し、ポスターの掲示板が足らなくなり、貼れなかった候補者まで出た。  自民党の兵庫県議がこう話す。 「かなりの候補者が乱立するんじゃないか。東京は小池知事がダントツの強さを誇り、混戦を制したが、兵庫はそこまで強い候補がいない。今、名乗りを上げているなかでもっとも知名度があるのは斎藤氏。他の候補で票の奪い合いになると、斎藤氏が浮上する展開は十分に考えられる」 失職を前に最後の公務を終え、兵庫県庁を後にする斎藤元彦氏=2024年9月27日    斎藤氏に知事選のことを聞くと、 「今はごあいさつをしているだけです」  と「事前運動」を警戒してか詳細は語らず。ただ、この日も街頭演説を仕切るのは元維新の西宮市議だ。そして、夜には<前兵庫県知事が緊急生出演...「パワハラ」「告発文書」「PC文書」の真相は?>というネット番組にも出演した。  都知事選で小池知事に次ぐ、2位に食い込んだ石丸伸二氏が、安芸高田市長時代から出演していた同じチャンネルだ。  斎藤氏は内部告発の文書について、「誹謗中傷性があるもの」とこれまでと同じ主張を繰り返した。そして元県民局長が「自殺」したとされていることと内部告発との「因果関係」を聞かれると、 「報道では私が死因になっているとありますが、直接、ハラスメントをしたことはない。なぜ亡くなられたのかわからない」  と元県民局長にさらなる「パワハラ」と思われるような発言もあった。 若者意識のSNS戦略?  石丸氏の「軍師」として選挙を取り仕切った選挙プランナーの藤川晋之介氏は、 「ネット番組に出てSNSでたくさん投稿、拡散してもらう『石丸方式』という作戦が大きく当たった。斎藤氏も見習っているのかなという印象だ」  と話した。SNSでは、<斎藤氏が石丸氏と同様に、政治系チャンネルのライターを募集>などとアルバイトの募集をしているという書き込みも目立つ。  AERA dot.でもアルバイト募集のリクルートサイトを確認したが、SNSで拡散されると、なぜか消えていた。  大阪府の吉村洋文知事も、SNSへの投稿を選挙戦に取り入れる手法を「石丸方式だ」と絶賛した。2021年の兵庫県知事選のような、自民と維新の推薦といったバックアップはなく、無所属として戦うことを表明している斎藤氏にとって、SNSは大きな「武器」になりそうだ。“失職会見”でも「Z世代のために」と若者を意識した発言を繰り返していた。  だが、3月に出された内部告発の文書、公益通報の問題は今も県議会の文書問題特別調査委員会(百条委員会)で審議中だ。10月末にも審議が予定されているが「知事選への影響を考慮」として斎藤氏の証人尋問は行わない方針だという。 「候補者がいっぱい出て、“漁夫の利”で斎藤氏が当選するかも、と県庁でも話題で、ビクビクしながら仕事をしている」  そう話すのは30代の県職員Aさんだ。これまで何度もAERA dot.の取材に応じてくれていたが、自身も斎藤氏からのパワハラを受けた当事者だという。Aさんが斎藤氏の「被害」を受けたのは2度。最初は斎藤氏が就任して1年ほどのころだった。 「県庁内で、同僚のBさんとエレベーター前で立ち話をしていたときです。そこへどこからか、斎藤氏が秘書課の“おつき”を連れて現れました。「うわぁ、知事や」と思ったら、舌打ちして『俺は知事やぞ、どけよ』『仕事してるのか?』などと小声で言いながらエレベーターに乗っていきました。身がすくむ思いでした」  と話す。ちなみに休憩時間で何ら仕事には問題はなかったという。  2度目は、Aさんの上司が斎藤氏に政策などの報告をする際に同席したときのこと。斎藤氏はご機嫌ななめな感じで、パソコンのマウスをカチカチさせながら、興味なさそうに報告を聞いていたという。 「二度と県庁に来てほしくない」 「すると、『〇〇のことはどうなってる』と上司に所管外のことを聞き始めました。答えに詰まる上司は、かつてその担当をしていた私の方を振り向き、助けを求めました。しかし、かなり前のことで的確な答えがすぐに浮かばず、『〇〇はこのような方向性のようで』と、なんとか切り抜けようとしました。すると斎藤氏は『なんでわからんのや。そういう質問もあると想定しとくんや』『県民の税金で県庁は成り立っているんや。理解しているんか。それでも県職員できるんか。失格や』とマウスを異常な速さでカチカチさせながら恫喝したんです。全身、震えました」(Aさん)  内部告発の文書への反論会見で、告発した元県民局長を「公務員失格」と罵倒した斎藤氏。同じような発言を現場でも繰り返していようだ。  今もって、斎藤氏からのパワハラなどの訴えはやまない兵庫県。Aさんが力を込めて言う。 「あんな人は二度と県庁に来てほしくない。多くの職員がそう思っています。斎藤氏は知事失格です」  (AERA dot.編集部・今西憲之)  
兵庫・斎藤知事は“反省の色なし”で失職・出直し選挙に 対抗馬に「裏金議員」の名前も浮上
兵庫・斎藤知事は“反省の色なし”で失職・出直し選挙に 対抗馬に「裏金議員」の名前も浮上 失職後の出直し知事選への出馬の意向を表明した斎藤知事    県議会から不信任を突きつけられていた兵庫県の斎藤元彦知事が9月26日、「県議会の解散はせずに失職する。出直し選挙に臨みたい」と表明した。30日付で知事職を失い、50日以内に行われる知事選に出馬するという。県議会全会一致での不信任決議を受けたというのに、改めて県民の信を問う正当性はあるのだろうか。  26日に記者会見した斎藤知事は、出直し選挙を決断した理由について、 「昨日の朝、高校生が私のところにきて手紙をくれた。『批判はあるが頑張ってほしい、やめないで』とエールをもらった」  と目をうるませながら話した。  美談のように語ったが、斎藤知事は県議会が全会一致で可決した「知事としてもう信任しない」という決議よりも、高校生の1通の手紙が重いというのだろうか。  会見で、改めて疑惑追及のきっかけとなった元県民局長の内部告発について問われると、 「誹謗中傷性の高いもの」  とこれまでの主張を繰り返した。  また、県議会から不信任決議を受けたことについては、 「知事は(県民の)大きな負託を選挙で受けている。机を叩いたりしたことは反省しなきゃいけないが、職を辞するのは重大なこと。議会の判断だが、そこまでいかなきゃいけないのかという思いはある」  と本音をのぞかせた。  内部告発をきっかけに県議会に文書問題調査特別委員会(百条委員会)が設置され、そこで「パワハラ」や「おねだり」などが次々と証言され、内部告発者への「違法」ともいえる厳しい対応が明らかになり、ついに県議会が不信任を突きつけたことについて、不満たらたらの様子なのだ。  斎藤知事は「議会解散は考えていなかった」とも会見で語ったが、自民党の県議は「知事は県議会解散を模索していたはずだ」という。 「『そこまでいかなきゃいけないのか』という発言は、俺を不信任に追いやった県議会を解散したかったという本音が出たと思う。プライドの高い斎藤知事は『知事の俺様に不信任とはどういうことや』『自民党、維新は裏切りだ』と激怒していたそうだ。自民党の関係者が斎藤知事に弁護士まで紹介していたので、斎藤知事には『信用していた自民に裏切られた』と映って、県議会を解散してやるわということだったのでしょう。しかし、県議会解散となれば選挙費用が16億円かかると試算が早々に報じられてしまった。それは知事選で推薦してもらった維新の『身を切る改革』とは明らかに逆行して、やばいとなって、出直しの知事選のみとなったはずです」 県庁で行われた斎藤知事の会見にはメディアが殺到した 「テレビ出演は知事選のPRでは?」  会見前日まで、斎藤知事は関西のNHKや民放のテレビ番組に次々と出演。そこでも、アナウンサーに遮られながらも、内部告発文書を「誹謗中傷」だと否定し、とうとうと自説を語ってきた。 「出直し選挙のためにテレビに出たのではない。オファーがあったから」と斎藤知事は会見で話したが、自民党県議は、あきれたようにこう話す。 「当初は、記者会見でも内部告発の質問に答えなかった。それがテレビでは一方的に言いたい放題。おまけに内部告発後に亡くなった元県民局長には謝罪もない。不信任決議案の可決が確実になってからは、知事選に持ち込もうと計算していたはず。テレビ出演は、知事選へのPRであり、同情を引いてという作戦ではないか。知事選が関係ないなんて知事の言葉は信用できません」  自民党とともに県政与党だった維新県議は、 「テレビに出まくる斎藤知事だが、出直し選挙にプラスになっているようには感じない」  と話す。  県議会の一部では、維新について、 「斎藤知事は維新と密約をしているのではないか。出直し選挙で維新は応援しないが、候補者も出さないのでは」 という話が漏れ伝わるが、維新県議は全否定する。 「もう維新が斎藤知事を応援することはない。県議会で維新が不信任案に賛成したことに斎藤知事が激怒したらしく、連絡もつきません。維新で斎藤知事が電話を取るのは大阪の吉村(洋文)知事くらいしかいません。密約を結びようがないんです。すでに維新は斎藤知事にぶつける候補を模索している。ただ、斎藤知事の問題で兵庫県でも国政でも維新の評価が暴落していて、知事選に手を挙げてくれる人がいるのかな」  記者会見で斎藤知事は直前に吉村知事から電話があったことを認めたが、説得には応じなかったようだ。 知事選候補として名前が浮上している西村康稔前経産相 自民党内に西村前経産相を推す声  すでに県内政界では知事選を踏まえた動きが活発化している。  自民党幹部によれば、党内には前経済産業相の西村康稔衆院議員を次期知事選にという待望論があるという。西村氏は裏金問題で自民党から1年間の党員資格停止処分中だ。  西村氏が地盤とする兵庫9区には、前明石市長の泉房穂氏がバックアップする橋本慧悟県議が次期衆院選で立憲民主党から出馬することを表明している。  自民党幹部がこう話す。 「泉氏が橋本氏陣営にどっぷり入れば西村氏は小選挙区で勝てない。衆院の解散総選挙が早いと西村氏は党員資格停止中で無所属での出馬となるので、比例復活がない。それなら知事選に出て、自民党と公明党がバックアップすれば勝てるとみている。それに前回の知事選で西村氏は斎藤知事の自民党の推薦を強力にプッシュした責任もある」  党員資格がない裏金議員の西村氏を自民党が支援するというのは、あまりに有権者をばかにした話ではある。自民党は前回の知事選で斎藤知事を推薦し、5000万円近くの選挙資金を提供したが、その反省もみられない。  自民党幹部は、27日の自民党総裁選を踏まえて、こう話す。 「斎藤知事には、辞職して次の知事選には出ないでほしいという党の意向を遠巻きに伝えてきた。新総裁の意向次第だが、早期の解散総選挙となると知事選と衆院選が重なることもある。斎藤知事の悪評は全国にとどろき、顔が知れ渡っている。斎藤知事を自民党が推薦してきたことは、衆院選にも確実に影響する。新総裁もそこは検討事項になるでしょう」  また知事選では、元経産官僚で兵庫県産業労働部長も務めた中村稔氏の名前も出ている。  AERA dot.の直撃に中村氏は、 「知事選には政党の推薦がなくとも出馬する決意。私の経験を生かして斎藤知事の問題で止まったままの県政を前に進めたい」  と出馬を明らかにした。 泉房穂氏 泉氏は「いい人を探したい」  一方、21年の前回兵庫県知事選でも名前が出た前明石市長の泉氏は、これまでテレビ出演やSNSなどで斎藤知事の疑惑について発信してきたことを踏まえて、こう話す。 「私は知事選に出ませんが、世論を煽って不信任の流れを作ってきた責任はある。兵庫県にとっていい人を探したい」  泉氏は何らかの形で知事選にかかわる意向だという。  斎藤知事の26日の記者会見には、会場に入りきれないほどのメディア関係者が駆けつけた。 「斎藤劇場ですわ」と県幹部は苦笑する。  出直し選挙も「斎藤劇場」になるのだろうか? (AERA dot.編集部・今西憲之)

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