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維新の国会議員が問題発言 兵庫・斎藤知事疑惑の告発は「自民党とつくった怪文書」、元県民局長のプライバシー暴露も
維新の国会議員が問題発言 兵庫・斎藤知事疑惑の告発は「自民党とつくった怪文書」、元県民局長のプライバシー暴露も 維新の掘井健智衆院議員    パワハラや「おねだり」などの疑惑が噴き出ている兵庫県の斎藤元彦知事。県議会の文書問題調査特別委員会(百条委員会)で斎藤知事らの疑惑について調査が続いているが、そのさなかに維新の国会議員が、調査のもととなった元西播磨県民局長(7月に死去)の内部告発文書について、「自民党とつくった怪文書」だと言い、亡くなった元県民局長のパソコン内にあったプライバシー情報を漏らす発言までしていたことがわかった。 「亡くなった方(元県民局長)は、あれ(告発文書)は自民党さんらとつくった。あの怪文書」  こう発言したのは、日本維新の会の掘井健智(ほりい・けんじ)衆院議員(比例近畿)。兵庫県加古川市出身で、県議を2期務めた後、2021年の衆議院選挙で兵庫10区から維新公認候補として立候補し、小選挙区では敗れたが比例復活で初当選した。  この掘井議員の発言に、「ただ驚くばかりでした」と話すのは、県内に在住するAさんだ。  9月2日朝、Aさんは仕事のために最寄りの駅に向かった。その際、駅頭に立ってあいさつしていたのが、掘井議員だった。維新が斎藤知事のもと、県政与党として斎藤知事を支えていることを知っていたAさんは、思い切って掘井議員に声をかけてみた。 「おはようございます。兵庫県知事の問題、どう考えてはるんですか」  という声がAさんのスマートフォンに残っている。  Aさんは持っていたスマートフォンで録音しながら掘井議員とやりとりした。  掘井議員はAさんの質問に気軽に応じ、Aさんがほとんど口をはさむ間もないほど、斎藤知事の問題について独壇場で語り始めた。  Aさんに録音データを確認させてもらうと、掘井議員は、内部告発の文書を「ビラ」と呼びながら、内容については信用性がないという発言を繰り広げている。 「あのビラ(告発文書)は皆さん、ちゃんと見ているかどうかわからへんけども」 「1週間前に怒鳴っただろうとか、そんな内容で、(元県民局長は告発文書を)K新聞(地元新聞社)に出したと思うけど、やっぱりくしゃくしゃにして放(ほ)られてるわけですよ。内容がそんなやから」  元県民局長は3月に内部告発の文書を作成し、マスコミや県議に送っていた。それをメディアがすぐに報じなかったことをもって、内容がいいかげんだと言いたいようだ。斎藤知事が、告発文書の内容について「嘘八百」「誹謗中傷」などと言ったことと通じるものがある。 百条委員会で証言する斎藤知事 「やっぱり政局やった思うんですよ」  元県民局長の内部告発の一つは、阪神とオリックスの優勝パレードに関する疑惑だ。パレードの資金を集める際、県が金融機関に補助金を増額するかわりに、寄付金の形で「キックバック」させた疑いを告発された。  これについて掘井議員は、 「パレードのも問題。(補助金で)キックバックあったとかね。それも本人(斎藤知事)呼んだら、ないという」  と、斎藤知事から直接、疑惑を否定されたというように話した。  また、斎藤知事の疑惑解明のために県議会が設置した百条委員会については、 「(百条委員会を)やりたいというのは、やっぱり政局やった思うんですよ」  と発言。百条委員会の設置は県議会の自民党が提案し、維新は反対した。それを「政局」と言うのだろうか。  そして掘井議員は冒頭のように、元県民局長の内部告発自体を、それこそ「政局」のように語り始めた。 「亡くなった方(元県民局長)は、あれは自民党さんらとつくった。あの怪文書」 「怪文書っていうのは、自民党と一緒に作った。怪文書って言い方悪いけどね」  告発文書の作成に自民党が関与したというのだ。 内部告発は「公益通報じゃない」  元県民局長がつくった告発文書を斎藤知事が入手したのは3月20日。直後から県は作成者が誰か「犯人捜し」に着手し、その中で元県民局長のパソコンを押収して調査した。  これについて掘井議員は、県内部の動きを詳細に語り始めた。 「(内部告発は)公益通報じゃない、その時点では。(元県民局長に)パソコンでこれ、きみ、怪文書こんなん作っとったんかいうたら、『はい』(と返事した)。君が(告発文書の内容を)現認したんかいうたら、『いやもう聞いたやつを集めました』と、聞いたんですよ」  元県民局長の告発を「公益通報ではない」と否定するのは、斎藤知事と同じだ。そして、掘井議員はこう続けた。 「なんで(パソコン)押収したかいうたら証拠があったから押収したんやけど、出てきたもん、なんや思います?」 「えらいもんが出てきた。彼(元県民局長)の(交友関係のプライベートな)データがいっぱい出てきたわけ。それでお前、何しとんねんってなった」 地元の有権者と話す掘井議員 自民党に言われて「彼は悩んだんです」  掘井議員はさらに、元県民局長が亡くなった理由についても、自説を語り始めた。 「その(プライベートな)データが外に出た。(片山)副知事が誰かに見せたいう噂。それで彼(元県民局長)はえーとなって、今度、自民党さんとこ行って、百条(委員会)、今から証人、ようしませんと。(自民党は)『今さらおまえ何言うとるねん』なったわけです。それで彼は悩んだんです。それで……」  記事では省くが、掘井議員は元県民局長のプライベートなデータや亡くなった状況についても、詳細に発言していた。どこまで真実かはわからないが、元県民局長のプライベートなことについて、街頭で質問を受けた市民に気軽に話す掘井議員の行為は許されるものではない。元県民局長の自死の原因は、自民党が百条委員会への出席を強要したためだというような見解も、斎藤知事の問題を無視した発言だ。 斎藤知事は「もともと自民党の推薦や」  Aさんにとって、掘井議員の発言は、これまで報道などで知っていた話とかなり違う内容で、一方的と思えるものだった。  そこで、維新が県知事選で斎藤知事を推薦したことを踏まえ、Aさんが「推薦って責任ありますやんか」 と問うと、掘井議員は、 「もともと(斎藤知事は)自民党の推薦やのに、維新が維新がと言うからね、みんな(維新の県議)がビビッてしまっている」 「だから(百条委員会ではなく)刑事事件で検察が調べるなり、正義の立場で調べるのが(いい)って維新は言うとんが、それが(維新は斎藤知事を)擁護している、となっている」  などと、維新が斎藤知事を推薦した責任には一切こたえず、維新の正当性を主張した。 自民議員は「反論する気にもなれん」  問題が多い掘井議員の発言だが、告発文書を元県民局長と自民党が作成した、というのは本当だろうか。  自民党の県議に掘井議員の発言を伝えると、怒り出した。 「あまりにおかしな話で、反論する気にもなれん。なぜ元県民局長と自民党が一緒に内部告発の文書を作るのか、証拠があるのか? 自民党が絡んで内部告発の文書を作っていたら百条委員会をやる前にバレてますよ。ひどいもんだ」  野党の県議にも掘井議員の発言内容を伝えると、こう憤慨した。 「掘井議員の発言は本当かどうかわからない元県民局長のプライベートなところまで語り、元県民局長を冒涜(ぼうとく)する許されないものだ。それになぜ掘井議員は元県民局長の公用パソコンのデータ内容まで知っているのか。これ、維新の県議から聞いたとすれば情報漏えいで、大きな問題だ」 掘井議員に、直接話を聞くと… 「私なりの見解を語ったつもりだ」  発言の真意を聞くため、9月8日、加古川市内での国政報告会にやってきた掘井議員を直撃した。 「録音されたような話をしたのは事実だ。ただ、なんで録音があるのか。そんな話もあるという、私なりの見解を語ったつもりだ。情報は『こういう話もありますよ』と新聞記者から聞いた。私もそうも思えるなという意味で話した。私の真意でないような形で拡散しているとすれば、よくないと思う。斎藤知事から直接聞いたことはない。維新の県議からも聞いていない。話を聞いてきた人(Aさん)はいつも私の横を通り過ぎるときに『ちぇっ』と舌打ちして嫌がらせするような人。反維新の人で、印象操作だと思う」  失言ではないのか、とさらに問うと、こう話した。 「失言、いや違います。ただ、誤解される発言ではあった。そこは反省している」 Aさんは「嫌がらせしたことない」と否定  Aさんにこの発言を伝えると、こう話した。 「ニュースで斎藤知事のことが話題になり、維新が応援していたというので、興味があって初めて直接話をした。あまりに具体的な話なので、録音を聞きなおして、これはおかしくないかと思った。掘井議員に嫌がらせなんてしたことないです」  掘井議員に直撃した翌日の9日、掘井議員の事務所から改めて文書でも回答があり、次のような内容だった。 「本件駅立ちにおける対応は、私が報道機関の記者間で飛び交う、いわば噂レベルの情報を、その旨の留保もせず、駅立ちの際に声を掛けてこられた質問者に対して発してしまったというものです。地元有権者の質問を無碍にせず丁寧に応えたいという思いのあまり、不適切な対応をした、その点は自覚し、強く反省しております。元県民局長含め私の発言内で名前を挙げてしまった方々に対して、心よりお詫び申し上げます」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
吉村知事の決断は? 百条委でパワハラ否定、“逃げ答弁”に終始した兵庫・斎藤知事に「引導」を渡す日
吉村知事の決断は? 百条委でパワハラ否定、“逃げ答弁”に終始した兵庫・斎藤知事に「引導」を渡す日 百条委員会で証言する斎藤元彦知事    パワハラや「おねだり」などの疑惑で兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、兵庫県議会の文書問題調査特別委員会(百条委員会)が8月30日、斎藤知事の証人尋問を初めて行った。この日はパワハラ問題に絞って質疑があり、斎藤知事は反省の言葉を口にしつつもパワハラは否定した。だが、9月2日、知事与党の維新の代表でもある吉村洋文・大阪府知事は「いろいろ思うところはある」と、近く斎藤知事に対する判断をする考えを示した。  百条委員会が県職員を対象に行ったアンケートでは、伝聞も含めて斎藤知事のパワハラを知っているという職員が約4割にものぼった。だが、斎藤知事は百条委員会でパワハラを認めない証言に終始した。  県立考古博物館で開催された会合に斎藤知事が出席する際、入口の20mほど手前に車止めがあったため、そこで車を降りて歩くことになった斎藤知事が、激怒して周囲の職員を怒鳴りつけたという証言が複数ある。このことについて斎藤知事は、 「私の当時の認識としては車止めを取り忘れていたのではないかと思った」 「歩かされたことを怒ったのではなく、円滑な車の進入をきちっと確保していなかったことへの注意だった」  と自らの行為に非はないという答弁を繰り返した。  また、片山安孝副知事(当時)らと話し合いをしているとき、斎藤知事が激怒して5㌢四方ほどの大きな付箋のかたまりを片山副知事のほうへ投げつけ、「場が凍り付いた」という証言があることについては、 「片山副知事が国会議員に説明する、重要な案件の伝達内容を忘れていた。残念な思いがあったので、そのとき1枚の付箋を持ちながら聞いていたので、思わず卓上に放り投げた」  と、かなり証言と食い違う答弁。1枚の付箋を卓上に投げただけで、場が凍り付くだろうか。 百条委員会の証人席に向かう斎藤知事 「必要な指導だと思っていた」  これらの行為について、委員から「パワハラと認めないのか」と問われた斎藤知事は、 「当時としては必要な指導だと思っていたが、不快に思われた方がいたら反省したい」  と言うばかり。委員が、「パワハラを認めた上で反省するということではないのか」とさらに問うと、 「パワハラかどうか私が判断するというよりも、百条委で判断されるのだと思う」  と“逃げ”の答弁を繰り返した。 「知事が居座れば総選挙に影響する」  この日の斎藤知事の証言に注目していたのは知事与党の維新だ。21年7月の兵庫県知事選で維新は斎藤知事を推薦し、大阪維新の会代表でもある大阪府の吉村洋文知事が何度も応援に駆け付けた。  吉村知事は記者会見で、 「斎藤知事が県政を前に進められないと維新として判断したなら、辞職の要請、不信任も当然、選択肢に入ってくる」  と斎藤知事に引導を渡す可能性を述べた。  また、日本維新の会の藤田文武幹事長は31日、この百条委の証人尋問も踏まえて神戸市内で兵庫県議団と協議し、9月県議会に県議団が不信任決議案を出す「可能性はゼロではない」と述べた。  背景には8月25日の大阪府の箕面市長選で、維新公認の現職市長が新人候補に惨敗したことがある。吉村知事は何度も箕面市に応援に入る中で、市民から、 「維新を応援しているんだけど、斎藤さん、おかしいんじゃないか」  と斎藤知事の問題が選挙に影響したことを認めている。  維新の大阪選出の国会議員の一人は、苦悩の表情でこう話す。 「自民党は総裁選、立憲民主党は代表戦と盛り上がる中、維新のトピックとしては斎藤知事のスキャンダルばかりが連日報道されている。箕面市長選を見ても、維新の支持急落の原因の一つは斎藤知事であることは誰の目にも明らかだ。百条委員会で厳しく追及されても、斎藤知事はのらりくらりごまかしていたようにしか見えない。自民党は新しい総裁が決まれば、解散総選挙に打って出るでしょう。斎藤知事が居座れば大きく影響する。早く決断すべきだ」 報道陣の取材に応じる吉村知事 「もう引導を渡す時期にきている」  兵庫県議会の立憲民主党系などの議員で構成される会派、ひょうご県民連合は9月議会で斎藤知事に対する不信任決議案を提出することをすでに決めている。  8月30日の百条委員会では、維新の委員が、斎藤知事が職員の行程の遅れを厳しく叱責することを踏まえて、斎藤知事に、 「知事は事前に決めた時間に遅れることはあるか」  と質問。斎藤知事が、「そういうこともある」と答えると、 「知事が遅れて行程がずれて、怒られる職員は理不尽な指導だと思う」  と追及する場面もあった。  維新県議の一人を直撃すると、こう話した。 「百条委員会での維新の追及は私も聞きました。斎藤知事が自身の遅刻を認めさせられて、赤っ恥だった。内部告発が出た3月時点は、大半の維新議員は斎藤知事をかばうような感じでした。しかし、告発の内容がおおむね当たっていることもわかってきて、世論からの風当たりが強くなり、今では斎藤知事を支持する県議は半分もいない。実際、兵庫県政は、斎藤知事のパワハラなどの問題でまったく前に進まず、停滞している。もう引導を渡す時期にきていると個人的には思う。維新のトップ、吉村知事の決断に期待しています」  百条委員会は9月5、6日にも開かれ、県幹部や斎藤知事への証人尋問がある。その後、維新は斎藤知事への対応について判断する予定だ。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
「ピークは1年前か」維新、大阪でも人気急落で市長選完敗 「兵庫の斎藤知事、なんとかしろ」の声
「ピークは1年前か」維新、大阪でも人気急落で市長選完敗 「兵庫の斎藤知事、なんとかしろ」の声 「箕面市長選は完敗」と報道陣の取材にこたえる吉村知事   「もう完敗だと思います。箕面市長選挙、完敗」  そう険しい表情で話したのは、大阪維新の会代表でもある、大阪府の吉村洋文知事だ。  8月25日に投開票があった大阪府箕面市長選挙で、維新が擁立した2期目を目指す現職の上島一彦市長が、無所属の原田亮氏に約1万4千票の大差をつけられて大敗。維新が公認する現職の首長が、大阪府内の選挙で落選するのは初めてのことだった。 「維新人気の急落を肌で感じた」  箕面市長選告示日の8月18日朝、吉村知事は上島氏とともにいた。  マイクを握る吉村知事は上島氏の市長としての実績を強調。 「ぜひ、上島さんに2期目の市長を」 「マスコミは何かあれば維新を叩きますが、万博もあります。頑張ります」  と訴えた。  これまで吉村知事が選挙応援に入ればどこも聴衆であふれ、歓声がわきあがった。だがこの日は、猛暑とはいえ拍手はまばら。上島氏が市民に握手を求めて歩いても、反応は鈍かった。  わずか1年数カ月前、維新は23年の統一地方選で、大阪府知事選、大阪市長選をはじめ関西圏で圧勝。関西以外へも支持を広げて躍進した。  だが、維新の国会議員は、 「1年前がピークだったのかな。今年に入って維新が候補者を出している選挙は結果が出ません。箕面市長選を見ていて、維新人気が急落していることを肌で感じました」  と打ち明ける。  今年になって、大阪府では大東市長選で維新候補が落選。河内長野市長選では吉村知事の出身地にもかかわらず、候補者の擁立もできなかった。  現職を失うわけにいかない箕面市長選では、吉村知事が2度、3度と現地入り。上島氏と一緒に繁華街を練り歩く「桃太郎」戦術にも参加して支持を訴えるほど力を入れた。  だが、そこで飛んだ声は兵庫県の斎藤元彦知事に関する維新への批判だった。 上島氏(左)と並んで選挙応援のマイクを握る吉村知事 「斎藤さん、おかしいんじゃないか」  内部告発によってパワハラや「おねだり」などの疑惑が明らかになり、ネットで炎上が続く斎藤知事。21年7月の兵庫県知事選では、維新は斎藤氏を支援し当選させた。自民党も斎藤知事を支援したが、吉村知事が繰り返し応援に入ったこともあり、斎藤知事は「維新の知事」というイメージが強い。兵庫県議会で、維新は今も知事与党で、斎藤知事の疑惑を追及する文書問題調査特別委員会(百条委員会)の設置にも反対していた。  吉村知事は、 「桃太郎で入ったとき、(市民から)『維新を応援しているんだけど、斎藤さん、おかしいんじゃないか』と言われました」  と、斎藤知事の問題が箕面市長選や維新の支持急落に影響しているという見方を示した。  実際、記者が箕面市に選挙取材に入ったときも、 「維新はしっかりせえ、斎藤知事、なんとかしろ」 「斎藤知事の擁護ばかりしてるぞ」  と声をあげる人がいた。  斎藤知事は8月30日の百条委員会で証言する予定だが、これについて日本維新の会の馬場伸幸代表は26日に、 「普通の国民の方が斎藤知事の話を聞いて、なるほどそうだったのかと思う中身かどうか、我々も見させていただきたい」  と述べ、斎藤知事の証言内容次第では、党として「辞職」を進言する可能性を示唆した。 「維新で生活がよくなった実感はない」  一方、箕面市長選で初当選した原田氏の陣営からは、 「維新が地元で失策続きであることも有利に働いた」  という声があった。兵庫県知事だけが維新の敗因ではないということだ。  今年6月、上島氏は地元の共産党の市議に、 「万博行くなよ」「出入り禁止や」  と発言していたことが判明し、問題になった。  当初、上島氏は発言を「撤回しない」としていた。しかし、吉村知事が「問題がある」と指摘すると、即座に「撤回をする」と二転三転。それが市民の反感を買うことにもなった。  これまで維新を支持してきたという箕面市民は、こう話す。 「維新が大阪で勝つようになって期待していた。だが、現実として、維新のおかげで給料がアップしたとか、生活がよくなったとかの実感はない。上島氏のように上から目線の発言のようなこともあり、それが市長選の結果になった」 兵庫県の斎藤知事の疑惑が維新低落の原因か? 池田市議のスキャンダルも影響か  また、こんな問題もある。  箕面市は池田市と隣り合っているが、AERA dot.は今年2月、池田市の維新所属だった胡摩窪亮太市議が池田市ではなく箕面市に住み、居住実態がないまま23年の市議選に出馬して当選したのではないかという疑惑を報じた。  これは池田市議会でも問題となり、4月に全員協議会が開催された。  議会から説明を求められた胡摩窪議員は、 「居住実態が必要であることは認識していた。認識は甘かったと反省している」  などと説明。  また、取材に対して「警察にいきましょう」「市長を呼びます」と高圧的な態度をとったことについては、 「報道された内容で間違いない。記者への対応はよくなかったと認識している」  などと答えている。  結局、胡摩窪市議は8月6日に議員辞職願を出し、8月末で辞職することになった。  池田市のある市議は、 「箕面市は今は池田市と同じ衆院の小選挙区大阪9区で隣ですから、池田市で維新のスキャンダルがあれば、波及して当然。箕面の選挙の手伝いに行くと、胡摩窪市議が疑惑について説明がつかずに辞職に追い込まれたことが話題に何度か出た。市長選に影響があったと思う」  と話した。  7月の東京都知事選で、石丸伸二氏の選挙参謀として手腕をふるった政治評論家の藤川晋之助氏は、かつて維新の国会議員の秘書だった。このところの維新の衰退について、こう分析する。 「地方で勝てずとも、維新は発祥の地、大阪の牙城だけは守ってきただけに、箕面で現職が敗戦したダメージは大きい。支持が急落しているのは、国会議員も地方議員も議員バッジをつけ、安定した地位を手に入れて安心し、活動量が落ちているのではないか。そこに斎藤知事らのスキャンダルや万博の工事の遅れなどの問題が加わって、さらに支持を失っている」  吉村知事はこうも語っていた。 「負けに不思議の負けなし」  維新は検証チームを立ち上げ、箕面市長選の敗因分析を進めるという。解散総選挙もそう遠くないなか、党勢を立て直すことはできるのか? (AERA dot.編集部・今西憲之)
ついに維新も見放す?パワハラ疑惑の斎藤兵庫県知事 「だれのおかげで当選したんや」と怒らせた原因
ついに維新も見放す?パワハラ疑惑の斎藤兵庫県知事 「だれのおかげで当選したんや」と怒らせた原因 空飛ぶクルマに試乗する斎藤知事    職員へのパワハラなど数々の疑惑が浮上している斎藤元彦・兵庫県知事がさらなる窮地に陥っている。辞職を求める包囲網が狭まりつつあるなか、唯一の救いである“県政与党”の維新からも不評を買い始めているのだという。原因は「空飛ぶクルマ」や「ドローン」。維新はこれを大阪・関西万博の目玉事業に位置付けているのだが、斎藤知事がこうした動きに水を差す言動をしたのだという。  斎藤知事は2021年の知事選で、保守分裂した自民の一部と維新の推薦を受けて初当選、両党の支えを軸に県政を運営してきた。今年3月、元西播磨県民局長(故人)が、パワハラなど斎藤知事にまつわる7項目の疑惑を告発。元県民局長の内部告発を十分に精査せず、懲戒処分を出したことで県議会に特別委員会(百条委)が設置され、疑惑の解明にあたっている。  アンケートなどによって斎藤知事のパワハラ事例が次々と明らかになり、与党の自民党が既に離反、県連大会などで公然と辞職を求める発言がでた。  一方、維新は擁護一辺倒だった。最近になり吉村洋文・大阪府知事は斎藤知事の疑惑について「真実はどうなのか。そこをまずはっきりさせることだ」と言いつつ、「(維新の県議たちは斎藤知事を)かばうとかは絶対にダメ」と厳しめな姿勢に転じている。  そんな頼みの綱の維新を怒らせている原因は、元県民局長が百条委に提出した陳述書。そこにこんなくだりがある。 〈知事は周囲に「ドローン事業がすごいストレスだ」と公言していた。令和4年12月19日に開催したドローンシンポジウムの場において突然(斎藤)知事からドローン事業の見直しを示唆する発言があり、現に令和5年度限りで明確な理由なく事業廃止となった>  そこで問題のシンポジウムにおける斎藤知事の発言をチェックしてみると… 〈民間のスタートアップ(企業など)は最終的にはマネタイズして、持続可能な経営につなげることが大事。本来、スタートアップであれば投資とか、ファンドを活用していただきながら、やっていくのがあるべき姿。これまでの実績や取組を一度、検証して、民間と行政含めてどこまでどうやるべきかを一度、考えてみることも大事」  大阪府も兵庫県もこれまで、万博を見据えたうえで、空飛ぶクルマ、ドローン計画は行政主導で展開してきた。だが、民間を強調する斎藤知事の発言は維新の方針を否定しかねない内容だというのだ。  大阪維新の会所属の府議は憤る。 「いったい誰のおかげで当選したんや。誰がサポートして、今、兵庫県知事の座に踏みとどまっているのか。わかってへん」   空飛ぶクルマは一発逆転のネタ  来春開催の大阪・関西万博は、維新にとって一大政策となる。しかし、ガス爆発や工期の遅れ、海外パビリオンの撤退などでマイナスイメージが大きくなり開催にこぎつけられるのかさえ、微妙な状況だ。 「万博でヤバそうなニュースが流れるたびに、世論調査の支持率が減っている感じがする。それを一発逆転できる数少ないネタが、空飛ぶクルマなのです」(前出・府議)  国際博覧会協会の副会長でもある吉村洋文知事はこうPRしていた。 「空飛ぶクルマといって、大阪のベイエリアを普通の自転車のようにグルグルまわっているのを万博でやります」  陳述書の内容とは裏腹に、斎藤知事は県議会ではむしろ空飛ぶクルマに前向きな姿勢を見せている。 「空飛ぶクルマにつきましては、万博開催時の県内飛行の実現に向けまして、来年度、次世代空モビリティひょうご会議(仮称)を設置して、社会的な受容性を高めていくということをしてまいります」(2023年2月22日県議会)  万博開催時に合わせて兵庫県でも空飛ぶクルマの離発着場を尼崎市に整備したり、空飛ぶクルマ実装促進事業として補助金事業も実施している。  「二枚舌」にも映るこの対応の違いはどういう事情なのか?  元県民局長が亡くなる直前まで連絡を取っていた県幹部が明かす。 「維新との関係もあり、斎藤知事はドローン、空飛ぶクルマに積極的でした。後ろ向きになったのにはパワハラが背景にあります」  この幹部によると、県にはA氏というドローンや空飛ぶクルマに詳しい職員がいる。シンポジウムがあれば、まずA氏に声がかかるといい、マスコミのインタビューにA氏が登場することも少なくないという。 「斎藤知事は、A氏がいることで自分が目立たないからとドローンを後退させているのです。また、ドローン事業は、斎藤知事の前任の井戸敏三氏がいきなり数千万円という予算をつけたことがきっかけで全国で先頭を走ることになりました。斎藤知事は井戸氏の功績を全否定してきました。ドローン、空飛ぶクルマの成功が、井戸氏の手柄になりかねないことに我慢ならなかったはずです」   「聞いてない」と激怒  A氏がメディアのインタビューでドローン事業の推進について語った記事を斎藤知事が読んだ時だった。 「こんな記事、知事が知らなかったのはどういうことだ」 と激怒したという。  ある県議はA氏についてこう内幕を話す。 「みんな斎藤知事のパワハラをびびって反論しない。だがAは仕事に誇りを持っており、できるヤツ。斎藤知事を恐れることなく意見を言ったことで、異動させられたと聞いた」  元県民局長の陳述書にも、ドローン関連事業が停滞し、知事の意向が確認できず、会議も理由なく開催されなくなったとの指摘がある。 <A氏の判断により何とか次年度事業の立案・調整を進めることができたが、その結果、空飛ぶクルマの新規事業については、ほぼ調整が終わった1月中旬になって、知事から「聞いていない」「勝手にやるな」と叱責を受けることになった>  前出の大阪府議は、陳述書を読んでひっくり返るほど驚いたという。 「空飛ぶクルマ、ドローンが万博でどれほどバズるか、人気を博すかで、維新の命運が大きく変わる。吉村知事も、空飛ぶクルマを否定しかねない斎藤知事の姿勢に不満をもっている」   そしてこう続ける。 「あの陳述書で、斎藤知事が維新の政策を否定していることがはっきりした。斎藤知事のおかげで、維新のイメージは地に落ちつつある。大阪では、斎藤知事退陣論があちこちから出ている。ここまでくれば、吉村知事も斎藤知事を見放すタイミングなのではないか」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
元衆議院議員・井戸まさえ氏が語る兵庫県知事パワハラ疑惑 「実績ない候補者を判断する難しさ」
元衆議院議員・井戸まさえ氏が語る兵庫県知事パワハラ疑惑 「実績ない候補者を判断する難しさ」 記者の質問に答える斎藤元彦兵庫県知事。自己評価は「控える」とした=2024年7月26日    職員へのパワハラ疑惑が報じられた兵庫県の斎藤元彦知事。「この騒動は起こるべくして起こった」と考える元衆議院議員で兵庫県議会議員を2期務めた井戸まさえ氏に話を聞いた。AERA 2024年8月5日号より。 *  *  *  兵庫県の斎藤元彦知事の「パワハラ」「おねだり」疑惑が連日報じられています。県議会は調査特別委員会を設置し、職員への尋問をするとしています。一連の問題を見ていて思うのは、この騒動は起こるべくして起こったということと、兵庫県以外の場所でも起こり得ることだということです。  斎藤さんが知事に就任したのは、2021年8月。それまで兵庫県では、5期20年にわたって井戸敏三前知事による県政が続いていました。井戸前知事は兵庫県の副知事も務め、県に長く関わってきた政治家の一人でした。  兵庫県に限らず、長期政権下では、今の状態を続けることが「安泰」につながると考える人が増えていきます。井戸前知事も退任後を考え後継者を育成していたようですが、バトンタッチの期間が想定よりも延びたことで、引き継ぎは遅れます。長期政権への不満を持つ人もいたと思いますが、それでも井戸県政の流れを継ぐ人が新たな知事になると多くの人が思っていました。  ところが、予想外の候補者が現れます。それが当時総務省から大阪府に出向していた斎藤さんでした。  斎藤さんは兵庫県出身ではありますが、県知事選が始まったとき、斎藤さんのことを知っていた県民はほとんどいなかったと思います。本来であれば厳しい戦いが強いられるはずですが、関西で勢いのある日本維新の会が斎藤さんを支援し、追い風が吹きます。 実績のない候補者を 判断する難しさ  さらに維新だけでなく、県出身の西村康稔さんや丸川珠代さんが応援に駆けつけ、自民党の一部が支援する動きもありました。このとき、長く続いた井戸県政を一新してほしいという思いに加え、「自民党が応援するなら大丈夫なんじゃないか」という安心感が生まれ、「何かやってくれそう」な斎藤さんへの支持が高まっていきました。 井戸まさえさん(いど・まさえ)/1965年宮城県生まれ。元衆議院議員。2005年から兵庫県議会議員を2期務める。東京女子大学・関西学院大学非常勤講師。著書に『無戸籍の日本人』など(写真:本人提供)    ただ、政治は経験の仕事です。また、単に選挙に勝つだけではなく、二元代表制のもう一方である県議会をまとめていく力も必要になります。そうしたリーダーとしての度量があるかもわからないまま選出されたことが今回の問題につながっていると思います。  また、今の兵庫県議会では、知事のパワハラを是正するシステムができていなかったと見ています。議会には維新の議員が21人いて、自民党の36人に次ぐ多さです。その多くは当選1回目で、知事や副知事に進言できる人はいなかったのではないでしょうか。  こうした予想外の選出は他の自治体でも起きています。都知事選で注目を集めた前安芸高田市長の石丸伸二さんは、インタビューや市長時代の発言をめぐり、「パワハラ気質」が指摘されています。安芸高田市では、「河井事件」で前市長が辞職に追い込まれ、それまで東京で会社員として働いていた石丸さんが市長に就任したという経緯がありました。斎藤さんと同じく、下から積み重ねていく形での出馬ではなかったことが共通しています。  自民党のさまざまな問題が明らかになり、政治家になることを諦めていた候補者が挑戦しやすくなっています。それ自体は悪いことではありませんが、実績のない候補者を判断する難しさもあります。長く活動するほどボロが出てしまうため、意図的に選挙直前に立候補表明をし、短期間でバズる戦略を取る人も増えています。知名度があれば相対的に票が入り、選挙を利用して知名度を上げることもできる。そうして当選した、政治家としては未熟な首長により行政が混乱することは容易に想像できます。都道府県知事だけではなく、国政選挙でも起こり得ることです。  だからこそ、市民側も自分たちが住んでいる自治体のトップが誰で、何をしてきた人なのかをチェックすることが大切です。実績を評価するのはもちろん、新人候補であっても、SNSでその動向は確認できる。仮に発信が少ない人は、「発信が少なすぎる」ということ自体も判断材料になります。 (構成/編集部・福井しほ) ※AERA 2024年8月5日号より抜粋  
いつ斎藤元彦兵庫県知事は「けじめ」をつけるのか? 橋下徹氏「辞職に値する」も維新は静観 自民、職員…トップ離れ止まらず
いつ斎藤元彦兵庫県知事は「けじめ」をつけるのか? 橋下徹氏「辞職に値する」も維新は静観 自民、職員…トップ離れ止まらず 神妙な表情で記者会見に臨む斎藤元彦知事    斎藤元彦・兵庫県知事の包囲網が日に日に狭まる。知事を告発した元県民局長に続いて、元課長も自死していたとみられることが発覚し、「もう知事をかばえない」という声が各方面から聞こえる。与党も含めた県議会の各会派、県職員の知事離れが加速し、そして最側近も去ることになった。四面楚歌ならぬ八方塞がりのなか、斎藤知事はまだ“持つ”のか。  県には連日、斎藤知事の辞職を求める意見などの電話やメールが殺到している。元県民局長が亡くなった7月7日からの5日間で1000件を超えたという。その後、告発文書に出てくる疑惑のひとつの業務に携わっていた課長が自死していたことが明らかになり、県民の怒りはさらに増幅しているという。  当の斎藤知事は記者会見の場でこう繰り返す。 「多くの負託を受けており、より良い県政を目指していきたい」  斎藤知事は2021年、自民と維新の推薦で初当選した。自民は県議会の最大会派だ。その自民の県連大会(7月14日)で、県連会長の末松信介参院議員が冒頭でこう言い放った。 「県庁職員のモチベーションがこれ以上後退することは許されないし、県民へのサービス提供が滞ることがあってはならない。知事には大きな正しい判断をしていただきたい」   「辞職も含まれる」  正しい決断が辞職を指すのかどうかについて、末松氏は大会後の記者会見で「その意味も含まれる」とトーンを強めた。 「(県政を)担いたいということと、担えるということは別」とも述べ、来年夏に予定される知事選での自民党推薦について「極めて厳しい」と踏み込んだ。  立憲民主や共産はここぞとばかりに批判する。立憲の辻本清美代表代行は25日、兵庫県内で街頭に立ち、「斎藤知事は言い訳ばかりしている。自ら身を引くのが県民のため」と話した。  共産党県委員会は22日、「告発者の自死という事態を招いたことに反省のない斎藤知事にこれ以上、県政を任せられない」とする見解を発表した。  斎藤知事にとって、頼みの綱はもうひとつの与党、維新なのだが…。維新は今のところ慎重な姿勢で、表立った知事批判はしていない。告発文が指摘する7つの疑惑について調査する県議会の特別委員会(百条委)の結論を待つという構えだ。23日に行われた吉村洋文・大阪府知事の定例会見がそれを象徴していた。 「事実はどうなのか、真実はどうなのか。そこをまずはっきりさせることだと思う。そのうえで、斎藤知事は進退を判断すべきだと思う」  百条委は県職員約50人を尋問することを予定しており、7つの疑惑解明には相当程度の月日を要することになりそうだ。この間、県政を停滞させるわけにはいかない。そうした危惧を抱く県内の首長からは23日、相次いで厳しい意見が表明された。   3市長からも苦言 岡田康裕・加古川市長「(来年度予算の策定に向けて)新しいことを相談し、信頼関係のなかで作り上げていくことができなくなってしまうのではないかと心配」 越田謙治郎・川西市長「事実が明らかでないなか、(元県民局長を)懲戒処分にしたことは適切ではなかった。職員が亡くなった重みをどう捉えているのか疑問で、知事の責任は重い」 蓬萊務・小野市長「今トップとしてなすべきことは辞職しかないのではないか」  斎藤知事の部下にあたる県職員労働組合(約4000人)は10日、「取りうる最大限の責任をとっていただきたい」と、知事に事実上の辞職を求める申入書を提出した。申入書は職員に犠牲者を出したことを強調している。 「告発した職員を守ることができなかったことは痛恨の極み」 「県政が停滞し、もはや県民の信頼関係が望めない状況」  そして、その2日後。斎藤知事を支え続けてきた最側近の片山安孝副知事が辞職届を提出した。 「職員に大きな負担をお願いすることになった責任は大きい」  あらゆる方面からの批判は、パワハラなど元県民局長が指摘した7つの疑惑の中身というよりは、むしろ告発後の県の対応の不適切さに集中している。  致命的だったのは、告発文を最初に否定した3月27日の知事定例会見だ。斎藤知事はこの場で、「事実無根」「うそ八百」などという言葉を使って批判し、「公務員として失格」とまで言い切った。この告発は県議や報道機関に配られ、後に県の公益通報窓口にも出されたが、こうした公益通報としての客観的調査を待たずに、県は独自の調査で元県民局長を解任し、停職3カ月の懲戒処分にした。  告発にある7つの疑惑については、事実関係にあいまいな部分もあり、百条委によるこれからの調査に解明が委ねられる。一方で、早々に元県民局長を処分した県の事後対応は、通報者の不利益な取り扱いを禁じる公益通報者保護法に抵触する可能性が極めて高い。   あの言葉がなかったら…  片山副知事は辞職会見の場で自戒を込めてこう述べた。 「途中から大きな課題に転換し、私の想定を上回る展開になった」「うそ八百という言葉を使った時、すぐに謝ることをしていればと今になって思う」  静観の構えの維新の元代表、橋下徹氏もSNSでつぶやく。 「内部告発を公で『嘘八百』『公務員の資格なし』と罵り、内部告発は噓八百ではなかった。そして職員は自死。この事実だけで辞職に値する」 (AERA dot.編集委員・夏原一郎)
まだまだある斎藤兵庫県知事の「おねだり」「パワハラ」疑惑…元局長の残した「データ」も証拠 自民党も見限った
まだまだある斎藤兵庫県知事の「おねだり」「パワハラ」疑惑…元局長の残した「データ」も証拠 自民党も見限った 数々の疑惑が出ながらも会見で辞職を否定した斎藤知事    兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラなどの疑惑を告発していた県西播磨県民局の元局長(60)が亡くなった問題で、元局長は「死をもって抗議する」というメッセージや斎藤知事が自治体に「おねだり」をしている音声データなどを残していた。斎藤知事は続投の意向を繰り返すが、新たな疑惑の噴出は止まらない。  斎藤知事の疑惑を追及するために県議会に設置された百条委員会の理事会が7月16日に開かれた。内部告発をした元局長は、7月19日の委員会に証人として出席予定だったが、7日に死亡した。自殺とみられている。その後、遺族が百条委員会に、元局長が残した陳述書や音声データを送っていた。  16日の理事会では、遺族が送ったデータについて検討された。音声データは、県内自治体から特産ワインの販売を推進する話が出たとき、斎藤知事がワインを「おねだり」したとされるものだった。  県議会関係者によれば、 「陳述書はA4サイズで10ページほど。内部告発の項目ごとに、具体的な根拠が書かれていた。音声データも公開された。斎藤知事が『私もワインを飲んでみたい』と言っている声があり、いかにも『おねだり』している感じがした。また、元局長のメッセージには『死をもって抗議したい』という内容が書かれていた」  理事会では、これらの資料の取り扱いを19日の次回委員会で諮ることを決めた。 「県庁には毎日、抗議や批判が殺到していて、知事選で斎藤知事を推薦した維新の議員も反対できない状況。百条委員会の証拠として採用される可能性が高い」(県議会関係者)  ワインを「おねだり」された上郡町役場に聞くと、 「現時点では百条委員会のこともあるので、事実関係については控えたい」  と、まだ百条委員会の議案になっていないのに、斎藤知事に“忖度”する様子だった。 兵庫県議会の百条委員会    前出の県議会関係者によると、元局長の葬儀は10日に執り行われたようだという。 「ご家族だけでお見送りをされたと聞きました。斎藤知事が『葬儀に出席したい』という意向を周囲に話していたそうです。しかし、斎藤知事が告発にあるような問題を起こさなければ、死に追いやられることはなかった。ご家族としては、斎藤知事が表面上はお悔やみと言いながら、自身の免罪符や政治的に利用するのではないか、問題のすりかえをするのではないかという危惧もあり、葬儀を極秘で進められたそうです」 「知事室にぜひ」と持ち帰ったが所在は「知らない」  16日、百条委員会理事会が開催されているころ、斎藤知事は定例会見に臨んでいた。その場で、新たな斎藤知事の「おねだり」が明らかになった。  斎藤知事は、県内各地に滞在して地域と交流する「ワーケーション知事室」を進めているが、2022年9月に丹波市で開催されたとき、廃校を木のテーマパークとして活用した施設を訪れた斎藤知事は、施設にあった木製の椅子とサイドテーブルに目を付けたという。  この施設の担当者が説明する。 「斎藤知事は地元産の杉とヒノキで作った椅子とサイドテーブルを、『素晴らしい』『知事室にぜひ置きたい』と繰り返し褒めてくださった。それならと、椅子とサイドテーブルを無償で提供しました。すぐに県職員の方が車で積み込み持って帰られた。非売品で値段のつけようもないですし、特に書類などもありません」  それを16日の会見で追及したのが、地元紙の丹波新聞だった。 「椅子やテーブルを『おねだり』されたという証言を複数、聞いております。持ち帰った事実はありますか」  記者の質問に斎藤知事は慌てた様子で、 「ちょっと、そこは詳細を覚えていない。ただ県政のPRになる、県産品の利活用のPRという観点で申し上げたので、『おねだり』ではない。ただ今は知事室では使っていません」  と「おねだり」を否定した。 斎藤知事が「おねだり」で持ち帰ったと指摘された椅子とサイドテーブル(写真は同じ形状のもの。FOREST DOORー旧神楽小学校のサイトより)    続けて記者が、椅子やテーブルの所在を問うと、知事は「認識していない」とのことだった。このため会見中に県職員が調べたところ、サイドテーブルは知事応接室で使用しているが、椅子は倉庫に埋もれていることがわかった。  丹波新聞の記者はさらに、 「この椅子とテーブルは販売されておらず、施設用に作られたものだった。大勢いる前で知事から『いいね』『使いたいね』と言われると、施設側は断るのが難しい。贈答の強要ではないか。パワハラにもつながりかねない。他の施設でも類似事例があるのではないか」  と追及。  斎藤知事は、 「ご指摘を真摯に受けとめ、今後はルール作りをしたいし、私自身の対応の仕方を改めていきたい」  と“火消し”に走るのがやっとだった。  椅子とテーブルを知事に提供した施設の担当者は、 「椅子が倉庫に眠ったままと聞き、残念です」  と力なく話した。 百条委でも「県職員は本当のことを言えないのでは」  同じ日の記者会見で、元局長の「死をもって抗議する」というメッセージについて問われた斎藤知事は、 「詳細は承知していませんが、百条委員会への対応のプレッシャーもあったと考えています。精神的なケアの準備も進めていたので残念」  などと答えた。  これについて、斎藤知事の疑惑を追及してきた丸尾牧県議(無所属)が問題視する。 「元局長が亡くなったが、メンタルケアの準備をしていた、悪いのは知事自身ではなく百条委員会だという記者会見でしょう。百条委員会で県職員が証人に呼ばれますが、斎藤知事に忖度して本当のことを言えない可能性が高い」 斎藤知事に辞職を促した自民党兵庫県連会長の末松信介参院議員(中央) 県のPRうちわに自らの写真を使うよう指示  17日の県議会の特別委員会では、県のデジタル商品券をPRするうちわやポスターに斎藤知事の写真が使われた経緯が問題になった。  委員からの質問に答えた担当者は、もともとうちわに知事の写真は入れないデザインだったが、 「顔写真を入れるようにと斎藤知事から指示があった」  と答弁したのだ。  2014年には当時の法相だった自民党の松島みどり衆院議員が、自身のイラストいりうちわを選挙区内で無料配布したことが、公職選挙法に抵触するのではないかと問題になったことがある。斎藤知事は税金を使って、自らのPRに利用した疑いも出てきた。 自民党県連が事実上の辞職勧告  斎藤県政を支えてきた県議会最大会派の自民党は、すでに斎藤知事を見限っている。  自民党県連会長の末松信介・元文部科学相は7月14日の県連大会で、 「知事には大きな、正しい決断をしていただきたい」  と事実上の辞職勧告をした。  このことについて、会見で問われた斎藤知事は、 「選挙で県民の負託を受けている」「県政を立て直すのが責任の果たし方」  などと何度も繰り返し、辞職を否定し続けた。  だが、兵庫県選出の自民党国会議員はこう話す。 「もう次の知事候補の人選に入っている。兵庫県の元部長だったキャリア官僚が有力候補だ。それが前提にあるから、末松会長も最後通牒のような話をしている」  これで斎藤知事は、どうやって県政を立て直すのだろうか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
斎藤兵庫県知事のパワハラ告発の元局長死亡 「つるし上げる」と維新議員から糾弾されていた
斎藤兵庫県知事のパワハラ告発の元局長死亡 「つるし上げる」と維新議員から糾弾されていた 会見で厳しい表情を見せる斎藤知事(7月10日)    兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラなどを今年3月に告発した県西播磨県民局の元局長(60)が7月7日夜に死亡した。自殺とみられている。元局長は告発後、斎藤知事から「嘘八百」などと非難され、県人事課から懲戒処分を受けていた。県議会では調査特別委員会(百条委員会)を設置して告発内容の調査が始まったが、維新の議員の一部からは、元局長に対して厳しい声もあがっていた。  元局長は告発文書を報道機関や県議などにわたしていた。告発の内容は、斎藤知事のパワハラに加え、知事選での公職選挙法違反、県内企業からの贈答品の受け取り、阪神・オリックスの優勝パレードでの不正行為など多岐にわたっていた。  これに対して斎藤知事は、 「嘘八百含めて文書を作って流す行為は公務員として失格」 「被害届や告訴を含めて法的手続きを進めている」  などと元局長を非難。県は元局長を停職3カ月の処分にした。処分理由には公用パソコンを私的使用したことも含まれていた。  しかし、AERA dot.がこれまで報じてきたように、斎藤知事のパワハラを裏付ける証言が多く出てきている。他の疑惑についても真実性を認める証言がある。  県議会は、告発内容の真偽をただすため、6月13日に百条委員会の設置を決めた。6月27日の第2回会合では、7月19日の委員会に元局長に証人として出席を求めることを決めていた。  6月末に元局長に直接取材した際、 「百条委員会で語ることが兵庫県の未来のためになると信じている」  と前向きに語っていた。  その後、何があったのだろうか。 元局長が百条委に「申し入れ」  元局長は7月初めに、弁護士を通じて百条委員会に対して「申入書」を出していた。 〈(百条委員会の)委員の一人から人事課調査にかかる資料はすべて開示されるべきだとの発言があった〉  などと記され、内部告発と無関係の部分は百条委員会で公開しないように求める申し入れだった。 兵庫県議会に設置された百条委員会の委員長には自民の奥谷謙一議員(右)、副委員長には維新の岸口実県議(左)が選任された    実は、6月14日の百条委員会の初会合で、維新の県議から、 「人事課による調査に対していろいろな疑念の意見が寄せられている。この審議過程を明らかにすることが必要だと思うので、人事課の調査、そこから得られた資料は全て開示をしていただきたい」  として、元局長の公用パソコンのデータすべての開示を要求する発言があった。  議会関係者がこう話す。 「元局長の懲戒処分を決めるとき、公用パソコンの中身を人事課が調査しましたが、私的なものも含まれていたようです。私的なことに公用パソコンを使用することはよくないですが、そこには内部告発とはまったく関係ないことも含まれる。それについては百条委員会で公開しないでほしいという申し入れでした。元局長の耳には、維新がすべての開示を求めているという情報も入っていたと思います」  また、複数の県議や県職員によれば、同じころ、維新の県議から、 「元局長をつるし上げてやる」  といった発言を聞いたという証言もあった。  斎藤知事は2021年の知事選で維新の推薦を受けた。大阪府の吉村洋文知事が何度も応援に入ったことも功を奏して当選。維新は県政与党として斎藤知事を支え、知事の疑惑を調べることになる百条委員会の設置については、自民の大半の県議が賛成にまわった一方、維新は反対した。 告発した元局長に「身勝手な論理だ」  7月8日午前、百条委員会は臨時で理事会を開催し、元局長の申し入れについて検討をした。この時点では、まだ元局長が亡くなったことは知らされていなかった。  その席上、理事を務める維新の県議から、次のような発言があったという。 「告発文書には、斎藤知事の自宅や好き嫌いなどの記述がある。プライベートなことを取り上げているのだから、(元局長が)自らの調査結果はプライベートな問題だから公開しないでとは、あまりに都合のいい身勝手な論理ではないか」 「パソコンの所有者は兵庫県、データも兵庫県のものだ」 元局長の死を受けての会見で頭を下げる斎藤知事(7月8日)    元局長に対するあまりに厳しい意見に、自民の県議からは、 「告発相手のプライバシーに触れているから、元局長のプライバシーが守られる必要はないというのは暴論ではないか」  という発言もあった。  また、データをすべて公開することで「情報公開条例違反」や「民事上の損害賠償請求」などにも問われかねないとする意見もあった。  その後、論議が重ねられたが、維新の2人の県議が「すべて公開」の主張を変えなかったため採決となり、4対2で元局長の申し入れを受け入れることになったという。 「もう少し待ってくれれば…」  元局長と連絡をとっていた元県幹部がこう悔やむ。 「公用パソコンを私的に使ってはいけないのは当然ですが、緊急なことや個人的なメモを残すなどは、誰しもあるはずです。彼は県民局長という立場で部下も多数おり、様々な情報に触れ、対応する立場にあった。内部告発に関する情報提供者の割り出しや報復人事などを気にしたのではないか。私も幹部だったからわかるが、部下の不祥事や、表に出ると県政が大混乱するようなトラブルなどがあり、事情があって秘密裡に対応したこともあった。そういう内容は公用パソコンに残している場合もある。彼も同様の経験があったようで、『表に出ると頑張っている県職員の人事にもかかわり、迷惑をかける』と言っていた。だから自費で弁護士を雇ってまで、パソコンのデータを出さないように求めたのだと思う」  そして、7月初めに元局長と連絡をとった時の様子をこう語った。 「彼は『百条委員会がかなり強硬だが、すべてのデータを出すのはこらえてほしいと旧知の県議らにこっそりお願いした』と言っていた。県民局長だったのですから、情報網も広い。8日に百条委員会の臨時会が開かれることも把握しており、データを出せという結論になることを悲観していた。もう少し待ってくれれば非公開とわかったのに」 辞職することを表明し、会見に臨んだ片山副知事(7月12日) 維新からも「知事はおかしい」  百条委員会で元局長のデータ開示を強く求めた維新の県議に聞くと、 「元局長がお亡くなりになられたことは、驚くばかりでご冥福をお祈りいたします。理事会の発言については非公開ですので、内容は差し控えます」  と答えた。  斎藤知事は7月10日の記者会見で、元局長が亡くなったことについて問われ、 「百条委員会への対応など心理的な負担、プレッシャーがあったものと推察されます。どのような心理的な負担があったか、現時点ではわからない」 「県政を立て直していくこと。そして、日々の業務をしっかり前に進めていくことが、責任の果たし方だと考えています」  などと答えるにとどまった。  県職員労働組合は10日、斎藤知事の県政運営は「もはや県民の信頼回復が望めない状況」だとして、 「知事としてとりうる最大限の責任をとっていただきたい」  と知事に辞職を要求した。  県政与党として支えてきた維新の中からも、 「やっぱり斎藤知事はおかしい。もう斎藤知事ではもたない。維新も決断すべき時期ではないか」  と取材に対して話す県議が出始めた。 副知事は「5回、知事に進退迫った」  さらに12日、斎藤知事の側近である片山安孝副知事が「県政の停滞、混乱を招いた」として辞職を表明した。  会見した片山副知事は、 「知事も私と一緒に退職するお考えはありませんかと申し上げました。過去に4回と、昨日(5回目)、進退をお考えになりませんかと進言しました。知事は『県民の負託を受けた身なので任期を全うしたい』との返事でした」  と語った。  斎藤知事は同日夕の記者会見で、 「片山副知事の申し出はたいへん重い。一つの判断として尊重します。県職員との信頼関係を再構築し、立て直すのが私の責任の取り方」  などと辞職を否定した。  県職員、県政与党、副知事からも見放された斎藤知事。辞職のカウントダウンは始まっているようだ。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
泉・明石市長と斎藤・兵庫県知事が明石城の整備を巡って”バトル”「携帯に出ない」
泉・明石市長と斎藤・兵庫県知事が明石城の整備を巡って”バトル”「携帯に出ない」 兵庫県明石市の泉房穂市長(撮影・今西憲之)  兵庫県明石市の泉房穂市長と、兵庫県の斎藤元彦知事が”バトル”を展開している。    AERAdotで【独占・吉村知事を酷評した泉明石市長が激白「菅総理にこび売って何もしてない」】(2021年4月29日)と報じたように、大阪府の吉村洋文知事にも敢然と苦言を呈する泉市長。次は吉村知事の元側近の斎藤・兵庫県知事と”冷戦”が続いている。  明石市のシンボルとして知られる、明石城は江戸時代に初代明石藩主・小笠原忠政が徳川幕府2代目将軍、徳川秀忠に命じられ、築城した。国の重要文化財に指定されている。貴重な東西の幅380mの石垣や三層櫓で知られ「日本100名城」にも選ばれた。明石城と隣接する明石公園の一部が国の史跡に指定されている。その整備を泉市長は問題視している。  2018年3月から兵庫県は明石城築城400年事業の一環として、県立明石公園などの周辺整備をしている。「石垣の原則5メートル以内の木」「明石駅ホーム上や園内の芝生広場など、公園から見て眺望を妨げる木」が伐採の対象となり、これまで約1700本の樹木が伐採された。  泉市長はAERAdot.の取材に対し、こう憤慨する。 「明石公園の樹木をあれほどたくさん切るなんて…。切りすぎや。県立なので管轄は兵庫県で、明石市長の権限はないが、あまりにひどい木の切り方なので声をあげた」  実際に明石公園へ行ってみると、根本からバッサリと切り落とされた、切り株が広がっていた。一部の切り株には、黒い薬剤のようなものが塗られて、不気味な印象だ。訪れていた市民もこう話す。 「根本から根こそぎブッタ切るような感じで、黒い薬剤もあって景観がだいなしや」  昨年秋以降、樹木の伐採についての苦情が泉市長に直接、寄せられることが増えたという。泉市長はさっそく行動に移った。  明石公園の整備の管轄は兵庫県なのでトップの斎藤知事に直訴しようと考え、携帯電話をかけた。  しかし、電話はつながらず…。泉市長は1月27日に斎藤知事に直談判するため、兵庫県庁に足を運んだが、面談はかなわなかった。 吉村大阪府知事ら維新の支援を受けて当選した斎藤元彦知事(左)  泉市長によれば、斎藤知事の前任者である井戸敏三前知事の時は頻繁に連絡をとり、拒まれたことはなかったという。  なぜ、斎藤知事は泉市長を避けるのだろうか。泉市長はAERAdot.の取材に心当たりをこう語る。 「斎藤知事が就任して間もない、昨年9月17日です。兵庫県下の市長や町長と意見交換をする市町懇話会が設定された。当日は市長や町長は万全を期してやってきます。私もそうでした。それが当日朝9時43分に担当課長に突然、メールが届き、キャンセルしますという。理由は台風でした。窓の外を確認すると、雨も降っていないし、台風の影響は感じられない。私は斎藤知事の携帯電話に連絡しました。斎藤知事に『課長へのメールだけでキャンセルはないでしょう。この日のために市長、町長は準備をしてやってくる。やむを得ない事情があるなら、知事名で書面を出すべき』と苦言を呈したのです。すると1時間ほどして、書面が斎藤知事の名前で届きました。それ以降、斎藤知事の携帯電話にかけても通じなくなった」  泉市長は電話、面会を拒否される理由はそれ以外、思い当たるところはないと振り返る。そして、懸案事項の明石城、明石公園の整備についてはこう不満を漏らす。 「切らなくていい木まで切っている。おまけに、切った木は業者が産業廃棄物として処分しているのです。木を殺している。前知事時代からの計画だが、強引な伐採は斎藤知事になってからです。兵庫県知事になる前、斎藤知事は総務省から大阪府の財政課長として出向していた。大阪城公園はすでに民営化されているので、木を切り、民間が参入しやすい地ならしをしているのではないか。そういう計画があるなら、事前に明石市にも示してほしい。兵庫県のホームページではあたかも私が木の伐採を了承しているかのような書きぶりです。私が判子を押した許可は、文化財保護法にかかるもので、明石城をきちんとしますという形式的な内容で、木の伐採とは関係ない。責任転嫁をしている」 築城400周年記念でライトアップされた明石城  泉市長はツイッターでも斎藤知事に対話を呼びかけ、意見をぶつけている。泉市長からの携帯電話やツイッターについて2月17日、記者らに問われた斎藤知事は困惑した表情で答えたという。 「ちょっとあの、(電話は)把握していない。ツイッターを拝見していないので、お答えできない」  明石城、明石公園の問題について兵庫県土整備部まちづくり局公園緑地課を取材すると、木の伐採は前任の井戸氏時代からの計画だと説明した。 「文化財保護法で文化庁に許可をもわらないと伐採できません。明石市とも話し合っております。泉市長はトップなのですべての書類に目を通せないのかもしれませんが、行政として手順を踏んでやっています。ただ、木の伐採で市民団体などからも要望が寄せられております。兵庫県の情報発信が足りない点があったように思います。また当初、保存の予定だったサクラやモミジの木も伐採されてしまったこと、木が産廃扱いとなっているなど県にも至らない点があったのは事実。泉市長がお話されている木の根元の黒い液体は、墨汁です。造園でよく使用され、薬剤ではありません。泉市長と斎藤知事の対立についてはなんとも言えないです」(同課)  泉市長は明石公園の問題について「今後も斎藤知事に1対1の会談を申し入れたい」と話している。 (AERAdot.編集部 今西憲之)
菅首相が維新の吉村知事との連携パフォーマンスをごり押し 兵庫県知事選挙で自民党が分裂
菅首相が維新の吉村知事との連携パフォーマンスをごり押し 兵庫県知事選挙で自民党が分裂 菅首相と吉村大阪府知事(C)朝日新聞社 「菅義偉首相は地方でも維新の肩入れなんですかね。自民党の総裁なのに…」  こう憮然とした表情で話すのは、自民党の兵庫県議。兵庫県知事選挙が7月1日に告示、18日に投開票となる。元大阪府財政課長の斎藤元彦氏(43)、元兵庫県副知事の金沢和夫氏(65)、元兵庫県議の金田峰生氏(55)、塾経営の服部修氏(47)、元兵庫県加西市長の中川暢三氏(65)の5人が立候補した。  5期務めた井戸敏三知事の後継をめぐる争いとなる。自民党兵庫県連は当初、井戸氏のもとで副知事として手腕を振るった金沢氏への支援を決定した。しかし、一部の県議が日本維新の会が応援する斎藤氏を推すと表明し、ややこしくなった。  斎藤氏は総務省から大阪府財政課長として出向中で、大阪府の吉村洋文知事、松井一郎前知事(現大阪市長)の右腕だ。出馬表明するとすぐ日本維新の会が支援を決めた。  斎藤氏か、金沢氏か――。  意見が割れた自民党だったが、最後に地元選出の自民党の国会議員が斎藤氏を推したことが決定打となった。  しかし、自民党県議の半数以上が金沢氏の応援に入るという分裂選挙となった。維新と自民党のお墨付きを得た斎藤氏か、地元県連のサポートをバックにした金沢氏か。事実上の一騎打ちだ。 「知事選という大きな選挙で、維新が支援を表明した候補を常識的に自民党が推すわけがない。金沢氏の支持を地元県連が決めたのに、斎藤氏にひっくり返すには当然、二階俊博幹事長、菅首相の了承がないと無理です。菅首相は斎藤氏に乗ることで、解散総選挙後を見据え、維新カードを握ろうとする意味合いがある」(自民党幹部)  10月が任期満了の衆議院は、いつ選挙があってもおかしくない。新型コロナウイルスの感染状況、まもなく開催される東京五輪・パラリンピックの行方いかんによっては、自民党も劣勢に立たされかねない。菅首相の自民党総裁任期は9月末となっている。 「菅首相の頭には東京五輪・パラリンピックの中止はない。観客を入れるか入れないか、そこだけ。とりわけ、五輪観戦に行ってコロナ感染者が増えるというのが最悪のシナリオ。それを避けるには無観客もやむなしという方向性だ。最終判断は当然、新型コロナウイルスとワクチン接種の進み具合で変わってくる。だが、コロナ感染が拡大しているのに、ワクチン不足が続き、国が自治体へリクエスト通りに供給できないとなれば、自民党に逆風は必至。ワクチン供給が滞っている今、選挙をやれば、自民党は100議席近く減らすという調査もあるそうだ」(官邸関係者)  これまで日本維新の会は菅首相、安倍晋三前首相とは近い距離を保っていたが、対自民党という関係では一線を画していた。しかし、今回の兵庫県知事選では自民党と組んだ維新。だが、斎藤氏の陣営は自民と維新の間でかなりの「温度差」があるという。  選挙前も斎藤氏の周りはいつも、自民党の地方議員が取り囲む。維新の地方議員らは遠ざけられている感がある。世論調査の数字では、斎藤氏がやや優勢で、金沢氏がそれを追うという展開だ。斎藤氏を支持する自民党の地方議員はこう話す。 「維新も一緒にやってくれるのはいい。だが、うちが選挙資金の多くを出しているので、主導するのが当然や。正直、勝手に応援しといてや、という感じかな。斎藤氏のシンボルカラーも維新のグリーンでなく、自民党のブルーや。斎藤氏が知事になっても、大阪都構想のような政策はさせない」  一方で日本維新の会の国会議員はこう話す。 「維新の本拠地・大阪のすぐ隣、兵庫県ですから、自民党の地方議員とうまくやれと言っても難しい。先方はベテラン議員も多く、維新の若造になんかという思いでしょう。しかし、国会では兵庫県知事選の歓迎ムードや。菅首相の英断で、斎藤氏に自民党も乗った。今は都議選の真っ最中ですが、維新は1議席の確保もなかなか厳しい。大阪都構想否決のダメージも少なくない。そんな中で解散総選挙の結果次第では、自民党と維新との連携もありうることを松井市長、吉村知事も想定していると思います」  菅首相は2日夕、都議選で「獲得議席0」の危機に立たされている維新のために大阪の吉村知事、松井市長をわざわざ官邸に呼ぶパフォーマンスを画策し、恩を売ろうと企てているという。兵庫県知事選挙は衆院選を見据えた菅・自民党と維新の連携の試金石になるかもしれない (AERAdot.編集部 今西憲之)
【独占】吉村知事を酷評した泉明石市長が激白「菅総理にこび売って何もしてない」
【独占】吉村知事を酷評した泉明石市長が激白「菅総理にこび売って何もしてない」 吉村大阪府知事と菅総理(C)朝日新聞社 泉房穂・明石市長(C)朝日新聞社  大阪府は新型コロナウイルスの新規感染者が1260人に上ると4月28日に発表した。1日の感染者数としては過去最多。28日時点の重症者は379人となった。重症者向けの確保病床とすぐに使える「実運用病床」はいずれも337床となり、 重症患者の数が床数を上回る危険な状態が続く。兵庫県も新たに600人の感染が確認された。過去2番目に多い数字だ。 「吉村大阪府知事や井戸兵庫県知事に、無能、有害など言い過ぎた。撤回します。しかし、市長という立場でそう言いたくなる気持ちもわかってほしい。吉村知事、井戸知事は全然、やるべきことやってへん」  こう話すのは、兵庫県明石市の泉房穂(いずみ ふさほ)市長だ。大阪府の吉村洋文知事、兵庫県の井戸敏三知事のコロナ対応に食ってかかったことで発言が大炎上。その真意について、泉氏がAERAdot.編集部の取材に応じた。  泉氏の発言は、地元の兵庫県、大阪府のコロナ対策に向けられたものだった。2回目の緊急事態宣言を当初の予定より早く撤回するように2月、国に要請した大阪府や兵庫県。その結果、今、第新型コロナウイルス感染拡大の第4波で東京など首都圏より危機的な状況に陥っている原因の一つと泉氏は見ている。  しかし、吉村氏は未だに「大阪が緊急事態宣言を解除した2月末時点の陽性者の数は1日50人程度。専門家の意見も聞いて解除した判断自体が間違っていたとは思っていない」と判断を正当化している。  3回目の緊急事態宣言下にある大阪府と兵庫県だが、感染者は最多を更新し、後手にまわる対応が続いている。 「吉村知事への話ばかりがネットでとりあげられているそうですが、井戸知事も含めて言いたいのは3つです。国の政治家や知事が果たすべき責任は何か。国の責任はワクチン接種。それがあまりに遅いこと。都道府県の知事は病床確保が一番です。新型コロナウイルス感染拡大から1年も経ってなぜ病床が確保できず、今、大変な状況に陥っているのか。市町村は生活支援を必死にやっている。国や知事この1年間、何をやっているのか?この3つを私は言いたかったのです」  泉氏は衆院議員の現職中、刺殺された石井紘基氏の秘書から、衆院議員となり、2011年に明石市長に初当選した。だが、19年に区画整理事業をめぐって、職員に暴言を吐いた騒動で辞職。その時の職員への「火をつけてでも立ち退かせろ」というパワハラ発言で全国的に知られるようになった。しかし、すぐに市長に返り咲き、現在は3期目である。  東経135度、日本標準時子午線で知られる明石市は神戸市に隣接する、人口約29万人を擁する中核市だ。  なぜ泉氏は政治的に見ると「格上」とみられる吉村氏や井戸氏や菅総理をも新型コロナウイルス対策で激しく批判するのか。 「兵庫県、大阪府にコロナが広がって、この1年間で病床がどれだけ増えたのか? 知事にとってそれが一番重要な仕事だったはず。やれば病床は増やせたはずなのに、なんでせんかったん? やっていれば、今になってコロナの新規感染者、重症者の急増であわてる必要がなかった」  そして泉氏はこう憤慨した。 「市長では病院の設置、廃止などできません。病院を設置することも、潰すこともやれる権限があるのは知事。病床を増やす方法、なんぼでもある。コロナに協力すればベッド数を増やすとか非常時に協力しない病院は、地域医療に貢献していないと指摘すればいい。それに府や県は、府立、県立病院を持っている。そこの職員を人事異動させれば、すぐに人材は確保できる。そのためには思い切った予算を組むこと。私が知事ならしっかりと予算を組み、病床を増やしていました。できていないのは吉村知事と井戸知事の失政です」  とりわけ、泉氏が疑問視しているのが、吉村氏のコロナ禍における「私権制限もありうる」という発言だ。  吉村氏は泉氏の疑問に27日、こう反論した。 「私権制限は議論すべきです。これまでそれがタブー視されていた。諸外国では感染おさえるために制限すべきと、社会の安全性、命守るために必要という考えがあります。反対という明石市長のご意見もあるが論議すべき」  新型コロナウイルス感染拡大において、私権制限しても強い措置で抑え込む必要性を語っている。ちなみに泉氏と吉村氏は、どちらも弁護士だ。 泉氏は吉村氏の政治の師、橋下徹氏と司法修習生時代をともにしている。 「吉村氏、井戸氏ともに、病床を増やすという責任を果たしていないという点は共通している。だが、吉村氏はその責任を果たしていないのに、国民に私権制限まで押し付けようと踏み込んでいる。吉村氏は私権制限という暇あったら、知事の権限行使して、病床確保して先に責任果たすべきや。私権制限で国民に責任を押し付けているように感じます。司法試験に合格した同じ弁護士という立場で、吉村氏の発言は恥ずかしい思いやね」   そしてコロナ禍での大阪都構想・住民投票についてもこう疑問を呈した。 「吉村知事と松井大阪市長はコロナ禍の真っただ中、第3波の入口あたりになる昨年11月には大阪都構想の住民投票をやっています。2回目の緊急事態宣言を早く解除と国に言って、解除させた。そういう行動が今の大阪の状況を作り出していると感じます」  吉村氏、井戸氏への批判が報じられると、明石市役所には批判が殺到した。 「明石の田舎の市長が吉村知事に何を言うねん、お前こそコロナ対策、やっているのか、などの声ですね。けど、明石市は民間病院と交渉してベッド確保をやっています。権限ないですけど、やることやってます」  泉氏が吉村氏を激しく批判するのには伏線があった。2011年3月、東日本大震災で爆発し、今も原子炉を水で冷却し続ける福島第一原発。トリチウムなど放射性物質を含む処理水について菅義偉総理は海洋放出する方針を打ち出した。それを受けてか吉村氏は4月13日などの会見でこう発言した。 「政府から要請があれば、大阪湾の放出を検討する」  原発の処理水放出を大阪湾で請け負うというのだ。泉氏の実家は、明石市の漁師だ。神戸市で井戸氏が会長を務める「全国豊かな海づくり大会兵庫県実行委員会」が4月20日に行われた。その席上で泉氏は「隣から処理水を大阪湾に流すと言っている。大阪湾はつながっている。知事はそれをわかっているのか」と井戸氏に険しい表情で詰め寄った。  泉氏はさらにこう説明する。 「私のオヤジ、おじいちゃん、漁師でした。私は明石の海に生まれて育ってきた。大阪湾は、PCBやダイオキシンなどで汚されてきた歴史がある。そこに、原発処理水を流すと吉村氏はいう。海はつながっている。大阪のすぐ横ですよ、明石は。大阪湾は大阪のもんだけちゃいますねん。こちらに何ら相談なく、あんな発言はない。吉村氏は菅総理、官邸にこび売ってるだけや。国民の方を向いて政治をやってないわ。井戸氏も吉村氏に言うべきことは言ってもらわないと困る」   今年7月、退任表明している井戸氏の後継を決める兵庫県知事選挙が行われる。吉村氏が代表を務める大阪維新は、大阪府の財政課長だった斎藤元彦氏を支援する方向だ。一方、泉氏も知事選挙出馬が取りざたされている。今回のバトルの背景に兵庫県知事選があるのだろうか。 「明石市は私が市長になってこの10年で大きく変わり、住みやすい街と評価されるようになった。市民からこれだけご支援を頂いているので知事選挙の出馬はありません。知事選挙と吉村氏への厳しい指摘との関連はありません。市長ではできないことを知事にやってもらわねばならないので、きつく言っているだけです」  大阪と兵庫の感染者数の最多記録がこれ以上、更新されないことを祈るばかりだ。(今西憲之)

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