「ニュースウオッチ9」がこれを報じなかったのは、前夜にも短くだが、この問題を論じたからに違いない。だが映像を見ればわかる通り、この日の会見はまさに安倍政権の実態をいみじくも象徴するものであり、それを扱わないのはなぜか、疑問が残った。

 一方、民放で唯一伝えなかった「NEWS ZERO」はその代わりに、二階俊博自民党幹事長の発言を扱った。「言葉ひとつ間違えたら、すぐ話になるんだ。君らはどういうつもりで書いているのか知らんが、われわれはお金を払って新聞を買っている。それを忘れちゃダメじゃないか」という発言で、安倍政権の苛立ちを端的に示す面白いニュースと見た。

●話題が偏りがちだったNHK、日テレ ニュースの私物化に疑問あり

 「ニュースウオッチ9」の不適切な報道ぶりは、中学生棋士の藤井聡太四段が、公式戦29連勝を達成した26日にも目についた。14歳の少年が30年ぶりに公式戦の連勝紀録を塗り替えたのは、社会現象にもなる快挙である。しかも連勝達成の第一報は、ニュースの最中に飛びこんだ。長く引っ張って伝えたい気持ちはよくわかるが、それでも40分近くも時間を割いたのには呆れ果てた。いくら何でも度が過ぎる。おかげで天気とスポーツを除くと、他に取り上げたニュースは2項目だけ。ひとつはタカタの経営破綻、もうひとつは山本幸三地方創生相や国家戦略特区諮問会議の民間議員の発言だった。これは特区指定や規制改革の意義を強調する内容で、山本氏は「今度の話は文科省が挙証責任を果たせなかったことで勝負がついている。われわれの手続きには一点の曇りもない」と胸をはり、大阪大学の八田達夫名誉教授は「新設校を1校に限ったのは政府の判断ではなく、日本獣医師会の要望だ」。最後に竹中平蔵氏が「前川氏の発言には違和感がある。行政をゆがめてきたのはむしろ文科省だ」と語り、「われわれはゆがみを正した」と自画自賛した。

 これが23日に行われた日本記者クラブでの前川喜平前文科省事務次官の会見に対する反論であることは明らかだが、短い時間しかないなかで、この発言をあえてニュースとして取り上げた意図は何か。よもやと思うが、安倍政権擁護の狙いがあるとすれば許されない。合点のいかないことだった。

次のページ