早子先生、結婚するって本当ですか? (コミックエッセイの森)
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 くしくもかぶってしまった「婚活」というジャンルと長いタイトル。ここでは、「できしな」と「早子先生」に略させてもらおう。

 恋や出会いは春にふさわしいテーマだが、ともに「婚活」という切り口を選んだのは時代性か。「できしな」は、39歳の美人開業医が厳しい現実を知り、毒舌料理人からスパルタ指導を受ける。「早子先生」は、結婚を意識せずに過ごしてきた34歳の小学校教師が、悩みながら婚活を始めるというストーリー。一見同じような気もするが、「できしな」は指南書が原作のシビアな具体論、「早子先生」は人生全体を絡めた抽象論と、両作のコンセプトは大きく異なる。

 今のところ視聴率や評判は、「できしな」に軍配が上がっているが、その理由は「婚活」というテーマの捉え方。視聴者は、現実の厳しさをズバッと指摘し、具体的なノウハウを明快に示す「できしな」に、「目新しさを感じる画期的なドラマ」という見方をしている。一方、「早子先生」は、生き方や幸せというざっくりとした視点から描いた「いい話」。これは「婚活」という言葉が一般化する前から何度となく見られた描き方であり、現実の厳しさを知っている昨今の視聴者には響きにくいのではないか。

 言わば、「できしな」は婚活中の人や婚活に関心のある人が見る作品であり、「早子先生」はそれほどでもない人が見るドラマ。何かと比較される両作だが、リアルとファンタジーという大きな差があり、ターゲットも異なるのだ。

 そこで気になるのは、制作側の先入観。作り手の「婚活はこうなのではないか?」、あるいは「婚活はこうあってほしい」という思い入れが、明暗を分けている気がしてならない。情報に不自由しない時代だけに、婚活はもはや視聴者のほうが詳しいジャンル。「日々制作に追われるスタッフやキャストのほうが情報は少ない」と覚悟して臨むべきだろう。

 最後に1つ、どうしてもふれておきたいのは、「恋愛指南書が原作のシビアな具体論」の作品が、「できしな」以前にも作られていたこと。昨年春に放送された「LOVE理論」(テレビ東京)の原作は、「できしな」と同じ水野敬也氏が手がけたものであり、「恋愛指南書のノウハウをもとに連ドラを作る」パイオニアはこちらだ。

 つまり、時代性に合う作品が創作されてから、わずか1年後に他局で進化を遂げ、評価を受けている、ということ。もちろん時代を追うことが正しいわけではないが、「ひと昔前の恋愛ドラマと同じ描き方をしていないか?」、制作側は自問自答すべき時期に来ている。

●きむら・たかし 私はテレビ解説のコラム執筆だけでなく、恋愛や婚活のコンサルも行っているが、当事者の熱や悩みは、こちらの想像をはるかに上回る。ニーズもドラマ性も文句なしのテーマだけに、さらなる進化に期待したい。