トヨタがソフトバンクと「戦略的提携」を発表した。大株主となっているau=KDDIを差し置いてのことだから驚いた。これからの自動車はAIなしでは考えられない、ということなのか。

 日常のあらゆるところにAIが入り込みつつある。しかしAIは生活を便利で快適にするだけか。落とし穴はないのか。山本龍彦編著『AIと憲法』は日本国憲法という視点からAIが抱える問題について検討する論文集である。執筆者は若手の法学者たちで、人権や教育、経済、刑事法などさまざまな角度からAIと憲法について見ていく。

 各章の冒頭にAIの導入によって起きるさまざまなシナリオがある。これが小説のプロット集のようで面白く、法律の門外漢でも問題点を具体的にイメージしやすい。

 AIは過去のデータをもとに未来を予測する。たとえば企業の人事採用であれば、どれだけ会社に貢献するか。銀行の与信審査なら、貸したお金を返せるかどうか。

 しかしデータは、その人をさまざまな属性に分解して、同じ属性のグループの傾向を分析したものでしかない。その人そのものを見て判断したものではないし、傾向はあくまで傾向であり、絶対ではない。いちばん問題なのは、具体的にどのように分解して分析しているのか、必ずしも明らかでないことだ。AIはブラックボックスなのだ。

「AIは被告の更生可能性が低いと判断したので無期懲役に処す」とか、「あなたには犯罪をおこす可能性があるとAIが判定したので予防拘束します」なんてことが起きないとは限らない。AIに丸投げするのは怖い。

週刊朝日  2018年11月2日号