著者は長年にわたり、日本最大の暴力団山口組を支えてきた元顧問弁護士。ヤクザと知り合い、付き合いが深くなる過程や組幹部の素顔を赤裸々に明かす。
 80年代に跡目争いが内紛に発展し、世間を震撼させた「山一抗争」のキーマンの葛藤や、昨年から続く分裂騒動での両陣営のトップの心理。垣間見える人間味は組織に深くかかわりながら、出自が異なる著者だから見聞きできたのだろう。
 ヤクザは決して美化できないが、本書が指摘するように必要悪として存在していた事実は否定できない。暴力団を壊滅させることが、組織を地下に潜らせ、皮肉にも治安の悪化につながるとの懸念はポジショントークとしては片づけられない。
 興味深いのは月額の顧問料。面子と見栄の世界にしては表向きの報酬とはいえ高額でなく、驚きを覚える。

週刊朝日 2016年11月11日号