「風俗と福祉の連携を」と本書は訴える。突拍子もないアイデアにもみえるが、女性の貧困や母子家庭支援に関わる人たちの中には、なるほどと思う人もいるのではないか。困窮しながらも、公的支援よりも、性産業で働くことを選ぶ人は少なくない。彼らと言葉が繋がらない。
 著者は、男性重度身体障害者への射精介助サービスを手がける非営利組織を立ち上げるなど、「性の健康と権利」をめぐる活動家。スティグマに目を曇らすことなく、性や障害をクリアに語る。私たちは導かれ、性産業の今日只今を見学する。
 障害のある生活保護受給者の男性がデリヘルを経営して、儲けはいくら。妊婦・母乳専門風俗店の待機所兼託児所での人気紙おむつのブランドは? 「デブ、ブス、ババア」を集めた風俗店の女性たちは、店からどんな困窮支援を受けているか。
 果ては現場で、若年困窮者への支援者や弁護士による、セックスワーカーに対するソーシャルワークが行われる。「セックスワーク」に対する善悪の判断を抜け出すことで見える、一つの可能性がそこにある。

週刊朝日 2016年3月25日号