3月に渋谷区で同性カップルに「パートナーシップ証明書」の発行を認める条例が可決されるなど、LGBTへの理解が急激に進んでいる昨今。でもLGBTって何?
 という人は松中権『まずは、ゲイの友だちをつくりなさい』を読まれたし。副題は「LGBT初級講座」。LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(生まれながらの性にとらわれない生き方を選ぶ人)の頭文字を並べた言葉で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を指す総称。「でも、そういう人は周りにいないし」という人に著者はサラッと釘を刺すのである。〈それはLGBTが少ないからではなく、LGBTであることを公にしていない人が多いからで、LGBTの多くは、常に「バレないよう」細心の注意を払って生活しているのです〉。
 ここからはじまる著者(1976年生まれ。電通勤務。NPO法人も主宰)の「バレないよう」人生はもう涙と笑いなしに読めない。男の子が好きと自覚しつつも「異常性愛」という言葉を辞書で見つけて打ちひしがれた小学生時代。ゲイ雑誌に興奮しながらも〈いつか治るんじゃないか症候群〉に取りつかれた中学時代。いい感じになりかけた先輩がいたのに〈まあ、それは……〉で逃げた大学時代。
 しかし、彼は発見するのだ。LGBTには〈「バレないよう」生きていくうえで得た、考え方や視点、身についた能力〉があるんじゃないかと。近くの人をゲイだと見抜く「見抜くチカラ=ゲイレーダー」、話をそらす技から生まれた「座持ち力」、異性の恋愛感情を「すり抜けるチカラ」……。カミングアウトの思わぬ効用は「なるほどね」である。
 本文中に頻出する「(笑)」はちょっとウザイが、〈LGBTは今が旬〉。〈そろそろ、「知らなかったから」では済まされない時代に入ろうとしています〉という言葉を重く、かつ軽やかに受け止めたい。

週刊朝日 2015年6月19日号