「パッチギ!」などの大ヒット映画を手掛けた映画プロデューサーの李鳳宇と、マイノリティの視点を世に発信し続けてきた映画史・比較文学研究家の四方田犬彦による対談集。
 各種の「嫌韓本」が書店に並び、各地でヘイトスピーチが盛んに行われる中、著者たちは拡散し続ける差別への懸念を率直に語っていく。話題は在日2世として李鳳宇が感じる個人的な悩みから、賛否両論があって話題となった朝鮮学校の高校無償化問題、「在特会」、ネトウヨまで多岐にわたる。二人は今日横行している差別行為の根底にさまざまな偏見が潜んでいると指摘する。朝鮮学校に通う生徒の7~8割が韓国籍だという話や北朝鮮に住む人々の普通の生活、京都の料亭で食べられるハモの8割が韓国産だといった情報は、偏見を解くためのヒントになるかもしれない。
 ただ差別は悪いと主張するのではない。本書では、差別をなくし、隣国と良い関係を保つことで日本が得られる肯定的な効果が示される。民族とは何か、国家とは何かと深く考えさせられる一冊だ。

週刊朝日 2015年6月5日号