全国各地のご当地キャラクターを総称した「ゆるキャラ」や「マイブーム」といった流行語を生みだす一方で、「仏像」や「童貞」など数々のブームを仕掛けてきた漫画家、みうらじゅん。55歳。
 NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』や映画『謝罪の王様』などの脚本家であり、俳優、映画監督、ミュージシャンとしても活躍する宮藤官九郎。43歳。
 この異才あふれる中年の二人が「週刊プレイボーイ」誌上でくり返してきた対談をまとめた一冊。そこで話題となるのは、タイトルにもあるような、正解にたどりつけるのか疑わしい、そもそも正解があるのかさえ判然としないものばかり。
 たとえば。
 許される嘘とはどんなものか?偉い大人ってどんな大人だろう?童貞を喪失すると何が変わってしまうんだろう? どうして人は遅刻をしてしまうんだろう? 趣味が大事なのはどうしてだろう?
 男と女、人生、仕事と遊び。三部に分けられた個々の疑問について二人は、それぞれの体験を披瀝しながら真面目に、いつも下ネタをからめて語りあう。大人になればわかると、かつて大人たちに言いくるめられた素朴な問いに、それぞれ娘をもつ父親になった二人があらためて向きあい、検証し、仮説を導く。
 とはいえ、それらが正しいのかどうか、二人にも自信はない。論点のズレもある。この本は、体育会系の覇気もなく、不良にも優等生にもなれず〈いい歳こいて青春ノイローゼを引きずって〉チンコ至上主義から脱せないでいる中年男の、正解のでない対談集なのだ。
 若いころの疑問は、それが下世話であれ高尚であれ、一生をかけて考え、自分なりに解答を探していくものなのだろう。どんなに歳を重ねても、だらだらと真剣に自分の問いに向きあい、時に気のあう友人とその内容を語りあう。そこに流れる時間がいかに楽しいか、この本を通読すればよくわかる。

週刊朝日 2013年10月25日号