書評『「リベラル保守」宣言』中島岳志著 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

「リベラル保守」宣言 中島岳志著

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内山菜生子#話題の新刊

 変化を厭わない。他者への寛容さを保つ。自由を尊重する。それが本来の「保守」思想であり、著者が唱える「リベラル保守」という。古今東西の保守思想家の言を交え、対立軸に置かれがちな「リベラル」と「保守」に橋を架けていく。
 保守とは人間の不完全さを受け容れる精神だ。人の作るものに欠陥を認め、歴史の風雪に耐えた「伝統」を重んじる。それゆえ、理性に頼って完璧な社会を設計しようとする左翼思想に反対する。東日本大震災や貧困問題などを通じて思索を深め、脱原発も主張する。
 サヨク的若者だった著者が保守思想に傾倒する過程が印象深い。中学生だった1989年、革命でルーマニア大統領が処刑される。前夜まで「熱狂」した自分を人殺しと責め、人が感情に支配される危うさを体感する。
 「リベラル保守」提唱は道半ばであり、議論の活性化が目的という本書。抜本的改革を叫ぶ政治家を批判したため、出版中止になりかけるトラブルも。穏やかで明快な文章に引きこまれ、執筆予定という理論書が待ち遠しくなる。

週刊朝日 2013年9月13日号


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