開発者とそっくりのリアルなロボットや20代女性そっくりのロボットをテレビや写真などで見た人も多いだろう。本書の著者はそれらのロボットの開発者であり、すなわち開発者そっくりのロボットのモデルでもある。
 著者は、自身が開発したリアルな「実在人間型ロボット」をジェミノイドと呼ぶ。「ジェミ」はジェミニ=双子座に由来し、「双子もどき」といった意味。そのロボットを使い、「人間そっくりのロボットに本物の人間がどう反応するのか」を調べ、それによって「人間とは何か」を追い求めてゆくのだ。
 さらに、人間とは何かを追求するとき、ロボット技術は芸術へ昇華する、と著者は言う。「直感や芸術的発想にもとづいた技術の開発と、それを通した人間に対する理解が同時に進行していく」ことこそが、新しい技術開発の様相であるというのだ。
 表紙カバーには、夕日をバックに遠くを見る女性ジェミノイドの写真。読後に今一度それを眺めれば、ロボットである彼女が「自分は何者か」を考えているようにも見えるのである。

週刊朝日 2012年10月26日号