いわゆる「帝王学」は父親から教育される側面があるので、ひとまず女性天皇は認めるという意見もあるでしょう。父方に天皇の血筋を引くならば女性でも天皇になれるという案です。仮に現在の皇室に当てはめれば、愛子さまが将来天皇になる可能性があります。

 しかし、女性天皇から産まれた子どもは女系になります。女系を認めないとなれば、愛子さまが天皇となっても、その子どもは皇位継承者になりません。しかし、それでは結局、悠仁さまのお子さんしか将来的に天皇になれないことになります。皇位継承の安定化にはつながらないわけです。

 私個人の意見としては、女性天皇も女系天皇も容認する時期にきていると思っています。男女問わず、先に生まれた子どもが引き継ぐほうが、事態は複雑になりません。

2019年1月一般参賀(c)朝日新聞社
2019年1月一般参賀(c)朝日新聞社

――英国王室のパターンですね。エリザベス女王は二人姉妹の長女です。

河西:英国はもともと女帝(女王)が認められていましたが、21世紀には入るまで後継ぎの決め方は男子優先でした。王女が後を継ぐのは王子がいないとき。それが現在は、性別を問わず長子を優先すると王位継承ルールが改正されています。やはり、継承は「生まれた順番」というのが時代の流れだと思います。

秋篠宮家(c)朝日新聞社(宮内庁提供)
秋篠宮家(c)朝日新聞社(宮内庁提供)

――とはいえ、保守層の反発は必至でしょう。伝統を守るという視点から、ルールを途中で変えることへの疑問もあります。

河西:皇位継承を男性男子に限ると定めたのは明治時代の旧皇室典範です。江戸時代以前には、歴史上、女性天皇が何人か存在し、飛鳥時代の推古天皇が、初の女性天皇とされています。また、一般に中大兄皇子として知られる天智天皇は、父親も母親も天皇でした。つまり、男系でもあり、女性でもある「双系」です。

 このように、歴史を紐解くと、必ずしも男系男子に限定されていたわけではないのがわかります。

 もう一つ、近代の天皇制と現在の天皇制は、憲法によってその性格が変わった点も議論のポイントになるのではないでしょうか。日本国憲法第一章、第一条には「天皇は、日本国の象徴」と定められています。つまり、現在の日本という国のかたちを示す存在なのです。今の社会のあるべき姿を示すのならば、現代において女性天皇や女系天皇も容認されてしかるべきだと思います。

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一般の国民とは立ち振る舞いが違う