いったい、彼らは何者なのか? 甲斐啓二郎さんが写し出した強烈な人間の姿

アサヒカメラ

2020/07/08 17:00

「Shrove Tuesday」(イングランド)。この日、牧草地帯の小さな田舎町、アッシュボーンは男たちの姿で埋め尽くされる。このシリーズを撮り始めるきっかけとなった1枚
「Shrove Tuesday」(イングランド)。この日、牧草地帯の小さな田舎町、アッシュボーンは男たちの姿で埋め尽くされる。このシリーズを撮り始めるきっかけとなった1枚

 写真家・甲斐啓二郎さんの作品展「骨の髄 Down to the Bone」が7月9日から大阪・梅田の大阪ニコンサロンで開催される(その後、東京・銀座ニコンサロンでも開催)。

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「骨の髄」とは不気味なタイトルだ。作品を目にすると、殺気立った不穏な空気に困惑してしまう。

 画面をすき間なく埋め尽くす屈強な男たち。ヘルメットをかぶり、槍のような棒を手にした集団。殴り倒された男。火を手にした男のくちびるが緩み、目が泳いでいる。懇願のまなざし。

 暴動や蜂起のようでもあるが、たぶん違う。いったい、彼らは何者なのか? 何をしているのか?

 実は、撮影者である甲斐さん自身もそう思ったという。

「自分で撮ったのに、上がってきたベタ焼きを見た瞬間、『なんじゃこりゃ?』という感じで。体をぶつけあって、『デモみたいだな』と。それで、このわけのわからなさをそのまま作品にしようと思ったんです」

ルールは「教会に入らない」「人を殺さない」

 テーマは「格闘する祭り」。国内外の5つの祭りを撮影し、展示順にそれぞれに題名をつけている。「Shrove Tuesday」(イングランド)「骨の髄」(秋田県)「Charanga」(ボリビア)「手負いの熊」(長野県)「Opens and Stands Up」(ジョージア)。

 撮影のきっかけは8年ほど前。もともとスポーツカメラマンだった甲斐さんは、あるスポーツの「ゼロ地点、起源を探ろうと」、イギリス中部の田舎町、アッシュボーンを訪ねた。

 春の訪れを告げる「Shrove Tuesday(告解の火曜日)」は、キリスト教徒にとって復活祭前の最後の食事の機会を祝う日である。この日を境に40日間、キリスト復活までの受難を共に耐えるという意味で断食を行う。

「実際にそこまでする人は多くはないんですが、滋養の豊富な動物性食品(肉や乳製品、卵)を食べなくなる。その前に集まって、こういう祭りをするわけです」

 祭りは一種のゲームで、アッシュボーンの住民たちは、街なかを流れる小川を境に「アッパーズ(上手チーム)」「ダウナーズ(下手チーム)」に別れて試合を行う。「試合」であるからにはルールがある。「教会に入らない」「人を殺さない」。

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