もうひとつわかってきたのが、餌の食べ方。これは私たち、北海道大学のチームがメガマウスザメの解剖を通して明らかにしました。

 サメ類は一般には魚などを食べますが、中にはプランクトンを食べているサメもいます。プランクトンを食べるサメは3種が知られていますが、メガマウスザメもその仲間です。ジンベエザメはそのおちょぼ口でプランクトンを海水ごと吸い込みます。ウバザメは大きな口をあけて泳ぎ、プランクトンが入った海水を口の中に流し込み、プランクトンだけ濾しとって、海水を大きなエラ穴から外に流してしまいます。ところがメガマウスザメの場合はちょっと違うのです。口が大きいためジンベエザメのように海水をうまく吸い込めないし、ウバザメのように大口をあけて泳いで海水を流し込むと、水の出口のエラ穴が小さいため、口から海水が溢れ出してしまうんです。

ジンベエザメ
ジンベエザメ
ウバザメ
ウバザメ

――とすると、第三の方法で餌を食べているということでしょうか。

 はい、その通りです。詳しくメガマウスを調べてみると、メガマウスザメののどの所がゴム状になっていて、伸びたり縮んだりすることがわかったんです。口をぐっと開け、海水を口の中に入れると、その圧力でのどの周りが風船のように膨らむのです。口の中にどの位の水が入るのか計算してみると、ドラム缶3本分以上の水が入るほど大きくなるのが分かりました。そこで、メガマウスザメはプランクトンがいる場所で口をぐいっと開けて泳ぎ、プランクトンと海水をのどが風船のように膨らむまで口の中に押し込み、それから口を閉じてエラ孔から水をビューっと押し出しているのではないか、という仮説を立てました。「すくい取り型」と名付けましたが、こういう餌の獲り方をするサメは初めて、新発見です。

 ただ残念ながら、現段階ではこれは「仮説」です。実際に食べているところを見てみたいので、メガマウスザメの情報を教えてくださいと皆さんにお願いをしていますが、まだチャンスに恵まれません。日本では紀伊半島から房総半島の間で集中的にメガマウスザメが獲れるんです。静岡県や神奈川県はメガマウス銀座といっていいくらいなんですが、漁師の方はお金にならないので、獲れても逃したりしているようですね。

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