――そもそもですが、サメってどういう生き物なんでしょうか。

 サメはエイと同じ、骨格が弾力のある軟骨でできている「軟骨魚類」というグループです。マグロやサンマといった一般的な魚は骨格の大半が硬い骨の「硬骨魚類」です。かつては、軟骨魚類は硬骨魚類よりも原始的な魚とされていましたが、いまは大昔に軟骨魚類と硬骨魚類が分かれ、別々に繁栄してきたと考えられるようになりました。軟骨魚類のサメはエラ穴が5~7つありますが、硬骨魚類にはひとつしかありません。その他にも歯が次々に生え変わる、浮袋がないなどの特徴があります。

 魚のほとんどは体外受精をしますが、サメは体内受精、つまり交尾をします。オスには腹にクラスパーという生殖器がついていて、オスメスが簡単に見分けられます。この生殖器は1対ある腹びれからできるので生殖器も1対、つまりおちんちんが2つあるのです。片方が180度しか動かないので、2つあると便利なんでしょうね。

 サメは繁殖方法も多様です。卵を産む卵生、母体内で卵から孵化し自分の卵黄だけで成長し、生まれてくる卵胎生、母体の胎盤からへその緒を通して栄養をもらって生まれてくる胎生など複雑です。卵生の中でも、母体内で卵が形成されたらすぐ生み出される単卵生と、卵が母体内にとどまり複数の卵が母体内に蓄えられ、子供がある程度成長した状態で卵を産む複卵性があります。さらに、単卵生と複卵性のどちらにも当てはまらない新たな卵生が発見され、いま私たちが研究を進めています。

――まだまだ知られていない生態があるんですね。

 はい、たとえば私が最近研究テーマにしているナヌカザメというサメがいます。このサメは面白い習性があって、危険が迫ると水を飲みこみ、腹を膨らませて身体を大きくし、相手を威嚇して自己防衛をします。こういうことをする魚類はフグとナヌカザメしかいません。

ナヌカザメ
ナヌカザメ
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